順天堂大学大学院医学研究科 眼科学 猪俣武範 准教授らの研究グループは、スマートフォンアプリ「アレルサーチ」を活用したクラウド型大規模臨床研究(オンラインでの大規模研究)を実施。結果、花粉症患者の特徴・花粉症症状の強さと関連する特徴を解明しました。
みんなで作る花粉症研究アプリ「アレルサーチ」
同研究で活用した「アレルサーチ」は、順天堂大学大学院医学研究科眼科学講座が2018年2月に開発したアプリです。画像診断による目の赤みやアンケートから花粉症レベル・タイプをチェックする機能、気象庁・環境省から発表される花粉飛散情報を閲覧できる機能などを実装。
また、花粉症に関するさまざまな情報をユーザーから集め、それを公開することから“みんなで作る花粉症研究アプリ”とうたわれています。
たとえば、花粉やPM2.5といった環境要因や食事・喫煙・運動などの生活習慣、家族歴・年齢といった疫学的要因のような、複合的に関連して発症につながるとされる情報を収集。花粉症の複合的要因を医学的に分析し、パーソナライズされた花粉症対策を提案します。
ほかにも、どの地域にどの程度の花粉症レベルの人がいるかを可視化する「みんなの花粉症マップ」、みんなの花粉症症状や労働生産性レポートを確認できる「みんなの花粉症ダイアリー」なども提供中です。
研究対象は1万人以上
同研究では、この「アレルサーチ」を2018年2月1日~2020年5月1日にダウンロードし、同意した1万1284名を対象としました。
花粉症の重症度は、各4点満点の“鼻症状スコア5項目”と“非鼻症状スコア4項目”を用いて36点満点で評価。アプリからは、年齢や性別といった基本情報をはじめ既往歴・生活習慣・花粉症の有無などの情報を収集しました。
そして、花粉症のある人の特徴および花粉症症状の強さと関連する特徴を検証しています。
睡眠時間や排便回数、トマトアレルギーも関係?
検証の結果、花粉症患者には、若年齢・女性・アトピー性皮膚炎・ドライアイ・花粉症シーズン中のコンタクトレンズの装用中断・短時間睡眠・排便回数が多いという特徴があったようです。
花粉症症状の強さと関連する特徴としては、若年・女性・呼吸器疾患・ドライアイ・トマトアレルギー・花粉症シーズン中のコンタクトレンズ装用中断・喫煙習慣・ペット飼育などが、花粉症の重症度と正の関連を示すことが明らかとなりました。
ただし、これらの結果は“個人の特徴”と“症状”の相関関係をみたもので、因果関係は示されていないとのこと。たとえば、上記の「コンタクトレンズ装用中断」には症状の強さとの関連を認めましたが、症状が強くなったためコンタクトレンズをはずした可能性もあるといいます。
今後同研究グループは、さらに研究を進めることで、花粉症の症状管理、重症化抑制や予防・治療が可能なアプリの開発を目指すとのこと。そして、将来のスマホアプリによる予測・予防・個別化・参加型医療を推進していきたいとしています。
(文・Higuchi)
- Original:https://techable.jp/archives/175721
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:樋口