世界中で開発が進む量子コンピュータ。その実用化には、課題に応じた適切なアルゴリズムと使いこなすためのインターフェースとなるソフトウェアが不可欠です。
このたび紹介するのは、量子コンピュータ向けアルゴリズム・ソフトウェア開発に強みを持つ株式会社QunaSys(以下、QunaSys)。量子コンピュータの実用化を目指し、研究開発・事業開発に取り組んでいる企業です。
同社は今回、シリーズBラウンドで総額12.4億円の資金調達を実施。同時に、HPCシステムズ株式会社らとの資本業務提携に向けて合意しました。
量子化学計算で革新的な素材を創出する
量子コンピュータの活用法のひとつに、スーパーコンピュータを駆使しても解明できない自然界の化学現象を解明するというものがあります。そのためには、量子コンピュータ向け量子化学計算領域の技術開発が必要です。
QunaSysは、この量子化学計算に強みを持つ企業。化学現象を量子コンピュータで解き明かし、素材・化学・製薬などさまざまな産業で活用できる革新的な材料を創出することを目指しています。
大きな取り組みとしては、量子コンピュータの応用検討コンソーシアム「QPARC」創設、企業の抱える課題を量子コンピュータで解決するための共同研究、量子コンピューティング初学者のための自習教材を提供する「Quantum Native Dojo」などが挙げられるでしょう。
量子計算クラウドサービス「Qamuy」
なかでも注目したいのは、量子コンピュータ向け量子計算クラウドサービス「Qamuy」。
これは、量子化学計算を簡単に実行できるサービスです。「Qamuy」が、化学計算に用いるインプットを翻訳するため、量子アルゴリズムの専門知識がなくても活用できます。
具体的には、電池材料や光応答材料などについて量子コンピュータ上での量子化学計算が可能。実際に量子化学計算を行うことで、必要な計算リソースを見積り、将来的に量子コンピュータをどう活用できるかを検証できるといいます。
また、豊富な量子化学計算ライブラリを利用できることや企業独自のコンポーネント組込み、カスタムワークフロー構築ができることなどもポイントでしょう。
欧州拠点の開設などを計画
そんな同社はこのたび、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ株式会社、ANRI、HPCシステムズ株式会社、Global Brain、国立研究開発法人科学技術振興機構 出資型新事業創出支援プログラム、新生企業投資、日本ゼオン株式会社、合同会社富士通ベンチャーズファンド、三菱UFJキャピタルを引受先とする第三者割当増資により総額12.4億円を調達。
同時に、HPCシステムズ、日本ゼオン、富士通の各社と資本業務提携に向けて合意しました。
同社は、2021年夏より製薬系コンソーシアムPistoia AllianceやQuantum Flagshipなど海外の有力団体との連携を図ってきましたが、今回の調達を機に海外での事業展開をさらに加速させる方針。化学計算用ソフトウェアの開発・欧州拠点の開設などを進め、「Qamuy」の世界的なデファクト化を目指すとのことです。
(文・Higuchi)
- Original:https://techable.jp/archives/176013
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:樋口