スマートフォン市場に、まだサプライズがあるんだね、少しは。米国市場のトップと2位なら、おそらく誰もが知っている。しかしCounterpoint Researchの最新の数字で、Motorola(モトローラ)が辛うじて2位を固持していると知ったら、思わずえっ?と言いたくなるだろう。
同ブランドにとっても、ここ10年、20年は順調ではなかった。世紀の変わり目には勢いある名前だったが、ポストiPhoneの世界は同社にとって厳しかった。巨額の損失後、Motorolaは2つに分かれ、モビリティ部門を2011年にGoogleに売った。Googleのハードウェアの成績はご存知のとおりで、3年後にはまた持ち主が変わった。
Lenovo(レノボ)は昔のブランドにとって、はるかに居心地の良い家だった。その成功の主な理由は、前述の上位ブランドが支配しているハイエンドの市場を避ける意思決定にあった。中でもブラジルとインドが、同社の主要市場になった。同時に米国も、重要な市場として残った。米国市場はミドルレンジのモデルや機やエントリーモデルが手薄だったため、そこが同社にとっておいしいマーケットになった。
Counterpointの数字によると、Motorolaの2021年の売上成長率は前年比で131%と驚異的だ。その結果同社は米国で400ドル(約4万9000円)未満のスマートフォンでは第2位、全機種では3位になった。特に売れたのが同社の300ドル(約3万6000円)未満のスマートフォンで、それにより同社は市場全体の10%をつかまえている。
2008年の勢いが戻ってきたわけではないが、携帯電話の市場をスマートフォンが支配して以降では、同社にとって最良の結果だ。プリペイドのプロバイダーであるMetro、Cricket、Boostなどは大物で、今では市場の約28%を支配している。しかしながら最も重要なのは、このリストにない名前だ。このところ業界にとっておかしな年が続いたが、その中で明らかにLenovoは好位置に付けていた。
米国のエンティティリストに載ってからは、Huawei(ファーウェイ)はもう敵ではない。またR&Dの大半をこれまたGoogleに売ったHTCは、眠ったように静かになり、VR方面へ舵を切った(その評価は未定)。しかし、最大の不在はLGだ。
2021年4月にこの韓国のハードウェア企業はスマートフォン市場から完全にいなくなった。そのとき同社は、次のような声明を残している。「これからのLGはモバイルの専門技術を生かし続け、6Gといったモビリティ関連の技術を開発し、スマートフォン以外の事業分野でその競争力をさらに強化していきます。20年間におよぶLGがモバイル事業で開発したコア技術は、現在および将来の製品に保持適用されていきます」。
LGのこのような動きによって、市場には完全にMotorolaの形をした穴が開いたようだ。スマートフォンメーカーとしての成功には、名門ブランドであることも寄与している。つまり、多くの人たちの意識から消え去りつつも、その栄光の日々からの「のれん」の力は強く、購入の意思決定を誘うのだ。ふところにあまり余裕がない人が、たとえばウォルマートで300ドルのスマートフォンを買うときには、自分がよく知っている名前に気持ちが傾くだろう。Razrの栄光の日々が20年も前であっても。業界人でもない一般消費者は、そんなことどうでもいい。現在の同社は、一貫して堅牢な低価格スマートフォンのメーカーという評価だから。
それを「カムバック」と呼んでもよい。それに反論する気はない。
画像クレジット:Motorola
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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)