コロナ禍の影響でオンラインコミュニケーションが一般化し、インサイドセールスに力を入れる企業が増えています。その一方、急激な環境の変化が理由で、「どうすれば成約に結びつくのか」方法論を確立できていないケースも多いのではないでしょうか?
株式会社RevComm(レブコム)が提供するAI搭載型のIP電話「MiiTel(ミーテル)」は、そんな営業電話やコールセンターの課題を解決するために開発されました。
AIを活用して、どのように営業の課題を解決できるのか?また、昨今進化が著しいAIの技術は、どうやって人間のコミュニケーションを変えていくのか?RevCommで営業・CS・アライアンス統括を務める角田潤彌(すみたじゅんや)さんに話を聞きました。
通話の結果と話法をリンクする
――御社が開発している「MiiTel」とは、どんなサービスでしょうか?
角田:「MiiTel」は、ボイスコミュニケーションに焦点を当て、「営業のなぜ」をAIで可視化するサービスです。電話による営業やお客様対応の本質的な課題は「お客様と担当者が、何をどのように話しているのかわからない」ことだと考えています。
その結果「なぜ受注や失注となったのか」や「なぜ担当者のパフォーマンスやお客様満足度にばらつきがあるのか」がよくわからず、ブラックボックス化された属人的な対応に陥ってしまうんです。
――「MiiTel」でその課題をどう解決するのでしょうか?
角田:「MiiTel」はAI搭載型のIP電話を提供しています。通話内容はすべて録音・解析され、「どの担当者がお客様といつどんな話をして、結果はどうなったのか」を見える化できます。
角田:たとえば「Talk:Listen比率」という、話す時間と聞く時間の割合を解析しています。適切な割合は業界やプロダクトによって異なりますが、お客様がくわしい商品情報を知らないと想定できる場合、理解を促すために7割くらいは担当者が話すのがいいでしょう。
反対に、どなたでも知っているプロダクトであれば、話す比率を3割くらいに抑えてお客様の置かれている状況や課題感を伺う割合を増やしたほうがいいことがわかっています。
――そのほかに、通話内容からどんなことがわかるのでしょうか?
角田:通話中に沈黙した回数や、お客様が話しているときに会話をかぶせた回数、会話のやりとりの「ラリー回数」などもカウントしています。
あまり知られていないのですが、重要なのが「話速」です。担当者とお客様がそれぞれ1秒あたり何文字話しているか、こんなデータも見える化しています。
――なるべくゆっくり話したほうがいいということですか?
角田:それは話す相手によります。話す速度と脳の処理速度は相関すると言われていて、早口で話す相手にゆっくり話してしまうと、イライラされて理解されにくい場合があります。
相手が話す速度のプラスマイナス10%程度で話すことを意識できるよう、「MiiTel」で定量的に測定しています。
角田:営業成績のいい担当者が「MiiTel」を使うと、成功した商談の話法を詳細に解析できます。成功を再現するためには、「なぜそうなったか」の要素を分解することが必要で、「MiiTel」を活用すれば、結果と話法をリンクして示せます。
また、通話の解析結果は、本人だけでなくすべてのメンバーが見られるガラス張りの仕組みになっています。各担当者は、データで示された「良い電話」の形を実現するために、どうすれば自分の話し方を良くできるのか意識しながらセルフコーチングができます。
――成功につながる手本をデータで示すことができるんですね。
角田:こういう環境があると、たとえリモートワークであったとしても、生産性の高い業務を実現できます。「MiiTel」はそんなところも考えて作り込んだサービスです。
「人と会わなくて済む社会」はめざさない
――サービス開始から現在までの実績について教えてください。
角田:2018年のローンチから数えて、3万人以上のユーザーに利用していただき、通話実績は1億回を超えました。
この実績は「MiiTel」の精度をさらに高めるストックデータでもあって、VOC(Voice of Customer)をベースにしたサービスの改善と、AIによる通話実績の徹底的な分析を日々おこなっています。
――コロナ禍の影響で、ビジネスにおけるオンラインコミュニケーションが一気に広まりました。この潮流は「MiiTel」の成長にも関わっているのでしょうか?
角田:強烈に成長を後押ししました。リモートワークが増えたことで、業務の進め方やマネジメントを「どうすればいいのかわからない」との相談をよく頂くようになりました。
そこで舵取りを間違えれば人が辞めていくし、かといって無理にオフィスに出勤させることも難しい。そんな困りごとが現場にはあります。
――急激に環境が変わったことで、課題が生じているんですね。
角田:私たち自身、創業当時からフルリモートで働き、「MiiTel」を徹底的に業務で活用している会社です。これまで積み上げてきたインサイドセールスの知見を知りたいというニーズも、サービス拡大を続けている一因にあると思います。
――ところで、「電話に苦手意識を持つ若年層が一定数いる」という統計があります。この傾向は「MiiTel」を活用する上で課題となるでしょうか?
角田:私も最初は「若年層は電話が苦手」と思い込んでいましたが、実態は違いました。Z世代に代表される若年層は、徹底した偏差値教育を背景にデータの中で育った人たちです。
ベテランに「営業は足だ!」と指導されても、まず聞かないでしょう。「MiiTel」のように正解への道筋を客観的にデータで示せるほうが馴染みやすいという話もよく伺います。
――言われてみるとその通りかもしれません。
角田:極端な言い方をすれば「ゲーム感覚」と言えるかもしれません。弊社の若手社員と仕事をしていると、むしろその感覚で取り組むと強さを発揮できる世代では、と思います。
「電話の相手とロールプレイングをしている」と捉えれば取り組みやすいですよね。一つ一つの電話がお客様を幸せにするためのゲームと捉えられますし、攻略法を見つけて真似ることで高い成果が出せるわけですから。
――そうした傾向が強まった場合、フェイストゥフェイスの場面は無くなる方向へ進むでしょうか?
角田:すべてのやりとりがオンラインに、という流れにはならないと考えています。実際、コロナ禍を経験して、人と会いたい気持ちが増している方は多いのではないでしょうか?だからこそ、限られた対面の機会で高い成果が生まれているのだと思います。
RevCommは「RevolutionxCommunicationでコミュニケーションに革命をもたらす」というのが社名の由来ですが、めざしているのは「人とまったく会わなくて済む社会」ではありません。
無理にオンラインだけに閉じないように常に意識して、どうすればリアルとうまく融合できるかを今後も考えていくつもりです。
AIの感情認識は「音声+表情」でより高精度に
角田:コールセンターにかかってくるクレームを例に挙げると、話速が早い傾向があります。さらに声のトーンが高く、人の話にかぶせる回数も多いです。この要素が三つ重なった場合は、高い可能性で怒っていると判断できます。
反対に、笑っているとトーンは落ち着いていて、口調や語尾も変わります。弊社のAIは1億回の通話実績を強みとして、声や使う言葉に現れる感情を高い精度で判断できるように進化しています。
――言葉以外から読み取れる感情もあると思いますが、その点はこれからのテーマですか?
角田:おっしゃる通り、たとえば口角が上がっているか、歯がどれぐらい見えているか、表情からもいろいろな感情を読み取れます。
これから考えているのが、映像データから読み取った表情と、音声解析の組み合わせです。そうした情報を解析して、さらに感情認識の精度を上げていこうと考えています。
さらなる生産性の向上と幸せなコミュニケーションの創出に向けて、尽力していきたいと思います。
(文・和田翔)
- Original:https://techable.jp/archives/180322
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:amano