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“ながら聞き”比較!ソニー「LinkBuds」は“穴あき”と“穴なし“ どちらを選ぶべきか

<イヤホンレビュー>

音楽リスニング界隈で最近トレンド急上昇中のキーワードが“ながら聞き”。テレワーク需要で自宅でも活用できると広まった今、完全ワイヤレスイヤホン選びでも“ながら聞き”ありきで選ぶのもアリなんじゃないかと思ってます。

そんな“ながら聞き”重視として登場した完全ワイヤレスイヤホンの代表格が、ソニーが今年2月に発売した、穴あきで周囲の音が聞こえるという「LinkBuds」(WF-L900)。単純明快で大ヒットしたモデルなんですが…同じソニーから6月3日に「LinkBuds S」(WF-LS900N)という機種も登場。なんとこの機種は穴あきではなかったんですよ。LinkBuds=穴あきというユーザーの予想を裏切りつつ、強力な外音取り込みで周囲の音を聞ける機能が付いています。大手量販店の実勢価格は、ともに約2万3000円前後とほぼ同価格。

「LinkBuds」「LinkBuds S」どちらもソニー製品なんですが、“ながら聞き”の未来はどっちかと気になりますよね。改めて両製品を“ながら聞き”イヤホンで使い込んでみました。

 

■形状からくる装着性の違い

“ながら聞き”イヤホンと一般的なイヤホンの大きな違いは、コンセプトが着けっぱなし重視という点。そこでまず考えたいのが形状と装着感の違いです。

まず「LinkBuds」は外見から特殊で、本来耳穴を塞ぐ箇所がリング状になっていて、リング部分が音を鳴らしつつ、真ん中からスルーで周囲の音が入ってきます。SONYロゴ入りの本体(?)部が横に付いている構造も特殊ですが、耳への収まりは人間工学的に正しくできていてフィットしやすい。

▲装着時に耳の位置に穴があく「LinkBuds」

▲穴あき構造もさることながら硬い表面むき出しの背面も注目

ただ「LinkBuds」のリング部って一般的なカナル型イヤホンと異なり硬い素材でむき出し。耳の形に合わないと(人間の耳の形は個人差が非常に大きいんです)、異物感が常にあって装着していて痛くなります。実は僕もやや耳に合わない方に該当しますが、これは個人差の世界です。

一方、「LinkBuds S」は外見通り、ただのカナル型完全ワイヤレスイヤホンの仲間です。片耳約4.8gと軽くて小型という点が装着性におけるポイント。完全ワイヤレスイヤホンとしても快適な部類です。

▲「LinkBuds S」は穴あきでなく、一般的な完全ワイヤレスイヤホン

▲イヤホンとしては一般的な形状

カナル型なので遮音性もありますが、「アンビエントサウンド(外音取り込み)モード」でむしろ積極的に周囲の音を取り込むというのがコンセプト。同時に高性能ノイキャンにも対応しているので、自分で切り替えて使うというコンセプトですね。

 

■室内で使うなら「LinkBuds」が手軽で快適

自宅で「LinkBuds」「LinkBuds S」を着けて長時間過ごしてみました。

▲キッチンで音楽を聞きながら洗い物という時も周囲に気を配りたいもの

キッチンで洗い物をしつつ音楽を聞いてみると…意外にも周囲の音の聞こえ具合は「LinkBuds」「LinkBuds S」も同じくらい。一般的なイヤホンに似た「LinkBuds S」ですが、“アンビエントサウンド”だと周囲の音の取り込み量が大きいんですよね。

▲音楽を止めて装着したままテレビを見る。常時装着とはこういうこと

洗い物を終えたあと、装着したまま音楽を止めてテレビを見てみると…自然さは「LinkBuds」がとても優秀。外の音がダイレクトに(若干遮られている感はありますが)聞こえるので自然です。「LinkBuds S」は、デジタルで取り込んでいるのが分かる音変換があって、エンタメを楽しむレベルではないですね。

続いてPCの前でビデオ会議したりして過ごしてみました。

どちらも周囲の音は聞こえるし来客のインターホンにも気づけます。ただ、違うのはリラックス具合。一休みしようと思った時に「LinkBuds」の方が周囲の音が自然で、気を抜いた時にラクだなと思ってしまいました。

▲「LinkBuds」はビデオ会議が終わった後の開放感も十分

「LinkBuds S」はむしろ、家族の生活音が聞こえるのをノイズキャンセルで低減したいという集中モード向け。これって“ながら聞き”とは相反するコンセプトですが、切り替えはボタンタップのみですからね。

 

■屋外で使うなら「LinkBuds S」がいろいろ便利

外出時に「LinkBuds」「LinkBuds S」を持ち出してみました。

まずは「LinkBuds」。…いやー、車内アナウンスは人の声は非常に良く聞こえるけど、今度は周囲の騒音がうるさくて仕方ない。音楽リスニングにも支障あります。穴あきだから一般的なイヤホン程度の遮音性もないわけで、付けてないのと同じです。

▲「LinkBuds」では電車の騒音も全部聞こえてしまうのが厳しい

そして心配事が、穴あきによる“音漏れ”。周囲から聞こえない音量でいうとiPhoneなら下から6~7番目くらいまでいけるんですが…それよりも“音漏れするかも”と常に意識する時点で心理的によろしくない。そう考えると音量3くらいで聞くことになるんじゃないかと。音楽はBGM的な体験で済んでも、YouTubeの動画やドラマ・アニメなど動画再生には不向きです。

一方、「LinkBuds S」はカナル型なので“音漏れ”の心配はありません(超大音量でない限り)。そして「LinkBuds S」の“アンビエントサウンド”って周囲の音の取り込み量が大きいので、音楽を流したままでも周囲の音をスルーで聞けます。

▲遮音性があり状況に応じてノイキャンも使える「LinkBuds S」は汎用性あり

電車内で装着したままテストしてみましたが、装着感はすこぶる快適。音楽を止めたままスマホで仕事関連のメッセージをしていたら「あれLinkBuds Sどこだ!? …耳に装着したままだった」的なことをリアルに体験しました。左イヤホンをタップでノイキャンになり集中モードへの切り替えもラク。ただ、切り替えを忘れると常時“ながら聞き”ではなくなるところはコンセプト的にどうなんでしょうかね。

 

■音質重視で選ぶなら圧倒的に「LinkBuds S」

そしてどちらも完全ワイヤレスイヤホンの仲間なので、音質も簡単にチェック。

まず「LinkBuds」はというと…正直高音質と呼ぶレベルではありません。BTS『Dynamite』を流してみても、ナチュラルに音楽に包み込まれるような聴こえ方と低音のリズムの刻みはあるけど、クリアではないし、周囲の音が常に聞こえる悪影響が結構大きい。“ながら聞き”的には正しいのですが…。

▲高音質路線から距離をおいた感のある「LinkBuds」

一方、「LinkBuds S」は普通に音楽リスニングイヤホンとしても優秀。小型なのに低音もグイグイと響くし、歌声の音もクリアで情報量豊富。特にAndroidスマホでLDACコーデックのハイレゾワイヤレスで聴いた際のサウンドは、高音質イヤホンとして通用します。

▲音の良い完全ワイヤレスイヤホンとして通用する「LinkBuds S」

*  *  *

ソニー「LinkBuds」「LinkBuds S」による“ながら聞き”比較。穴あきで常時“ながら聞き”か、ノイキャンと切り替え可能かというのが一番の違い。シチェーション別に考えると、自宅で一日中付けっぱなしにするなら「LinkBuds」がピッタリ。一方、外に持ち出すなら「LinkBuds S」がいろいろと便利でした。常時“ながら聞き”であるべきかはライフスタイルやシチェーション次第ですが、今後完全ワイヤレスイヤホンを選ぶ際に“ながら聞き”重視は正直アリだなと思いました。

>> ソニー「ヘッドホン」

 

<取材・文/折原一也

折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長。YouTube「オリチャンネル」

 

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