スマートフォンはとにかく熱に弱いデバイスです。
高すぎる温度は性能低下やシステム・オン・チップ(SoC)の熱暴走を引き起こすのはもちろん、バッテリー寿命を縮める原因となります。
今回はスマートフォンを冷却しながら充電できるという触れ込みの、KINGSTARのMagSafe対応充電器をレビューしたいと思います。
スマートフォンは熱に弱い
スマートフォンは熱に弱い電子機器です。高い温度で使用すると下のような悪影響を受けます。
- 熱暴走:SoCなどの半導体が誤動作を起こす
- 半導体の故障:半導体は高い熱で動作させるほど寿命が短くなる
- バッテリーの劣化:リチウムイオン電池は高い温度ほど劣化が早まる
- 電子回路の故障:電子回路に欠かせない電解コンデンサは高い温度ほど劣化が早まる
このため、スマートフォンはできるだけ温度が高くならないように気をつけたほうが長く使えます。特に充電をしたり、3Dゲームなどの負荷が高いゲームをプレイしたりすると温度が急速に上がります。
充電をしながらゲームをプレイするのは、スマートフォンの寿命にとって最悪の組み合わせといえるでしょう。
「ペルチェ素子」を使って充電時の温度を下げる
ただ、負荷が高いゲームほどバッテリーを早く消費するため、長時間のプレイには充電が必要です。
そこで最近では、「ペルチェ素子」という冷却効果のある半導体素子を使うことで、温度上昇を抑えられる充電器が販売されています。
ペルチェ素子とは
ペルチェ素子とは、電流を流すと片面が冷たく、もう片面が熱くなる素子です。
「素子」というと最新の技術のように感じるかもしれませんが、その歴史は1834年にフランスの物理学者であるジャン・シャルル・ペルチェが発見した熱電効果にさかのぼります。
現在ではより効率を高くするため半導体が使われていますが、比較的昔から存在するものなのです。
ペルチェ素子はパソコンなどのCPUの冷却や小型の冷蔵庫、除湿機などに使われています。
ペルチェ素子搭載のKINGSTARのMagSafe対応充電器
そんなペルチェ素子を搭載した充電器の1つがKINGSTARの充電器です。
これにはワイヤレス充電器が内蔵されており、スマートフォンに接触させることでバッテリーを充電します。
スマートフォンに接する面がペルチェ素子の冷却面となるので、スマートフォンを充電しながら冷やすことができます。そのためファンのみで冷却するよりも効率的です。
また、このKINGSTARの充電器はAppleのMagSafeに対応しており、固定具なしでiPhoneに取り付け可能です。
両面テープつきの円形磁石も付属しているため、MagSafe非対応のスマートフォンであっても同じように利用可能です。
充電中はファンが回ります。これは、ペルチェ素子は冷たくなる面と熱くなる面に温度差を発生させる素子のため、熱い側を冷やさないと冷たい側の温度が上がるためです。
動作中にはLEDが光り、発光をオフにすることはできません。
ペルチェ素子はどれくらいの効果がある?
ペルチェ素子の効果がどれくらいあるのか、実際に計測してみました。
計測にはベンチマークアプリの3D Markを用い、Wild Life Extremeのスコアで比較しています。
スマートフォンはiPhone13 Proを使いました。
温度が安定した状態で比較をおこなうため、それぞれのケースでベンチマークを5回実行し、5回目のスコアを使っています。
充電中に動作させても性能が落ちない
まず、バッテリーが40%程度しか残っていない状態で比較をおこないました。
下の画像の左側がKINGSTARの充電器で充電しながら実行した場合、右側が充電せずに実行した場合のスコアです。
通常、充電しながらベンチマークアプリを実行すると、充電で発生する熱によってスコアが落ちます。
しかしながらスコアはほぼ同等となっており、ペルチェ素子で冷やしながら充電することにより性能を保てたようです。
満充電状態ならスコアがアップ
次に充電による熱の影響をできるだけ抑えるため、iPhone13 Proのバッテリー残量を100%にしてベンチマークアプリを実行してみました。
左側がKINGSTARの充電器をつけたまま実行した場合、右側が充電せずに実行した場合のスコアです。
ペルチェ素子の冷却効果によりフレームレートが上がり、スコアも上がりました。
スコア取得後のiPhone13 Proの表面温度は30度と、何もつけずに実行した場合の40度に対して大きく低下しました(赤外線温度計でリンゴマーク付近を計測)。
15ワットの給電能力はない?
充電性能についてKINGSTARは、15ワットでの急速充電が可能としています。
これはApple純正のMagSafe充電器と同じ供給電力です。
そこでスマートプラグを使って充電中の消費電力を計測したところ、17.5ワットと表示されました。
しかしながら、KINGSTARの充電器はiPhoneへの電力供給に加え、ペルチェ素子とファンへの給電もおこなっており、この結果を持って15ワットで充電できているとはいえません。
試しに15ワットでの充電に対応していないiPhone XRを充電したところ、同じような消費電力であったため、おそらく15ワットでの充電には対応していないでしょう。
商品説明をよく読むと、
充電効率を高め、iPhoneへは7.5W出力充電が可能です。また、Galaxyへ10W出力による充電を実現しました
と書かれています。
画像に記載の「15ワット」は、ペルチェ素子とファンを含めた消費電力、ということでしょうか。
充電しないとペルチェ素子に給電されない
KINGSTARの充電器を試していて残念に思ったのは、充電しないとペルチェ素子とファンに給電されないという点です。
電源につないだだけだとLEDの点灯しかおこなわれず、スマートフォンにワイヤレス充電をおこなっているときのみペルチェ素子とファンが動作します。
このため、充電は不要だけれど冷やしたいというときには使えません。
冷却だけ必要なのであれば、サンワダイレクトの400-CLN029など、充電機能がないペルチェ素子冷却スタンドを選んだほうがよいでしょう。
スマートフォンで充電しながらゲームをプレイするなら
スマートフォンの寿命にとって熱は大敵であり、充電しながら負荷の高いゲームをプレイするのは推奨されません。
一方でスマートフォンのバッテリーはゲームをプレイすると急速に消費されるため、充電しながらプレイせざるを得ないこともあるでしょう。
ペルチェ素子による冷却機能を備えた充電器を使えば、単にファンなどで風を当てるより効果的に充電中の温度上昇を抑えてくれます。
また、満充電状態なら性能を上げる効果も期待できるでしょう。
ゲームをプレイしなくても充電はバッテリーの温度を上げるため、ペルチェ素子つきの充電器によりバッテリー寿命を延ばせるかもしれません。
同じスマートフォンを長く使いたいなら、ペルチェ素子つきの充電器を検討してみてはいかがでしょうか。
Source: Amazon, サンワダイレクト, 日本女子大学
(ハウザー)
- Original:https://iphone-mania.jp/news-471621/
- Source:iPhone Mania
- Author:iPhone Mania