カクテルシェーカーにバースプーン、ストレーナーなど、カクテルツールのスタンダードはすでに確立され、変化のない時代が長く続いていました。その業界に一石を投じたのが「BIRDY.(バーディー)」のカクテルシェーカー。2013年のリリースと同時に世界中で話題を集め、現在、国内外のトップバーテンダーに愛用されています。
開発したのは、愛知県豊田市で1951年に創業した横山興業。自動車部品のプレス加工をメインに、建材事業、太陽光発電事業を行う会社です。一見、カクテルの世界とはまったく畑違いのようですが、精密部品の最終仕上げに用いられる“ラップ研磨”という研磨技術を有していたことが、カクテルシェーカー開発のきっかけになりました。
ラップ研磨に求められる精度は0.05ミクロン(10億分の1メートル)。職人の手作業による、その緻密な研磨の技術を活かして何か自社製品が造れないかと模索する中、日本酒のタンブラーを思いつきます。
タンブラーの内側を磨けば味が変化し、より美味しくなると試作したものの、思った以上に酒の味は変わらず、ステンレスの質感も日本酒のイメージにそぐわなかったそう。では、洋酒はどうか? と方向転換したところ、驚くほど素晴らしい味わいに変化。そこからブラッシュアップさせ、これまでにないカクテルシェーカーが誕生したのです。
■世界中のバー業界に大きな反響を与えた、画期的な技術とは
「BIRDY.」カクテルシェーカーの素材は“18-8 ステンレス鋼”。そのボディの内側を高度な技術を持つ熟練の職人が、1ミクロン以下の高さと規則的な波形・周期を持つ凹凸に研磨します。
特に今までの常識を覆したのが、研磨の最終工程に工業用ダイアモンドペーストによるマイクロポリッシュを導入したこと。通常のステンレス製品を磨くのには用いない贅沢な工程で、高い精度が要求される自動車部品作りのDNAを持つ会社だからこそ採用された技術。
職人の手で絶妙に凹凸を残すように磨き上げられたシェーカーが、液体にきめ細やかな泡を作り出し、口当たりをまろやかに、そして驚くほど味わいの変化をもたらします。
今までのカクテルシェーカーは内側の表面の凸凹が1ミクロン以上、例えるならば、剣山のようにささくれ立った凸凹状態です。「BIRDY. カクテルシェーカー」はなだらかな山のようにおだやかな凸凹。分子レベルで素材にかかるストレスをなくしているため、素材の味を損なうことなくシェイクできるのです。
さらに、研磨の方向を液体の流れと同じ縦方向にすることで、より大きな運動エネルギーが生まれ、調和のとれたカクテルに仕上がります。研磨の縦ラインに氷がのって流速が上がるので、スムーズに冷えるという大きなメリットも。
丸みを帯びたラグビーボールのようなデザインにも理由があります。ストレートなボディのシェーカーより、球体のボディは液体や氷の動きがスムーズになるため、素材へのストレスはさらになくなり、氷の溶け出しも少なくなります。
2014年より世界トップバーテンダーであるエリック・ロリンツ氏と共同開発を行っており、使い勝手や性能のよさはプロもおすみつき! 現在まで22の国と地域に輸出され、高品質な日本製カクテルツールとして世界中で愛用されています。
BIRDY. by Erik Lorincz CS350 カクテルシェーカー(1万3640円)
奥行き:78mm
高さ:172mm
重さ:約245g
容量:約350ml(ボディ満水時)
素材:18-8 ステンレス鋼
BIRDY. by Erik Lorincz CS500 カクテルシェーカー(1万4740円)
奥行き:84mm
高さ:192mm
重さ:約300g
容量:約500ml(ボディ満水時)
素材:18-8 ステンレス鋼
■カクテルの味にどのような変化が現れるかを検証
今回、ブランド拠点として愛知県の豊田市にオープンした「BIRDY. FACTORY」で、味は本当に変わるのか。どれほどの違いがあるのか試飲しました。
まずはグラスホッパーというカクテル。ペパーミントリキュールとホワイトカカオリキュール、生クリームを1:1:1でシェイク。
出来上がったカクテルは、泡立てたかのようにふわふわに攪拌されたクリームが舌に広がり、後から爽やかなミントの香りや甘みがただよってきます。淡雪のようにシルキーで、極上の舌触りにうっとり。
次は酸味の立った水出しコーヒーと黒糖シロップで作るエスプレッソマティーニ。口当たりはとてもなめらかで飲みやすいが、余韻はアルコールの風味も確かに楽しめるしっかりした飲みごたえ。
本来、シロップはお酒よりも比重が重く、混ざりにくいものだが、よくよく溶け込んでいて甘露な美酒に仕上がっていました。
バーテンダーに聞いてみると、氷の動きが今までのシェーカーとはまったく異なるそうで、攪拌力の高さが突出しているとのこと。確かに「BIRDY. カクテルシェーカー」で作ったカクテルは、いずれもリキュールの味わいやフレーバーの香りが強く出ていて、よく冷えているのに氷の溶け出しが少ない感じがします。
そしてなにより驚きなのは、なめらかで心地よいのど越し。液体に空気をうまく溶け込ませているからでしょうか。今まで飲んだことがあるカクテルも、別物なんじゃないかと思わせるほど口当たりの印象が一変しました。素人でも上手にカクテルが作れ、プロのバーテンダーにとっては技術を底上げしてくれるアイテムになりそうです。
分かりやすいメリットは大きく3つ。
1.お酒や果汁などのストレスがないように設計されているので、素材本来の繊細な風味が引き立つ。
2.微細な凸凹がきめ細やかな泡を生み出し、最後までまろやかな口当たりを持続。
3.氷の溶け出しが少なく、奥行きのある立体的な味わいになる。
あまりにも味わいやテクスチャーが変わるため、シェイクする回数や氷の量など、今までのシェーカーと考え方をまったく別にした方がいいというバーテンダーもいるほど。このカクテルシェーカーを使った新しいカクテルの表現が生み出されるなど、バーのシーンが楽しく変化しそうな予感に満ちています。まさに新時代のカクテルシェーカーの誕生といえるでしょう。
手にした印象は、丸みを帯びたトップは持ちやすく、指にしっくりとなじみやすい。一般的なシェーカーに比べて0.2mmほど分厚く、とても頑丈。ボディとストレーナーの噛み合わせもよく気持ちいいほどスパッとはまり、今までのシェーカーとサイズ感や重さは同じくらいなので違和感なく使いこなせそう。18-8 ステンレス鋼の、シンプルでいて美しいデザインも長く愛用できそうな魅力です。
■シリーズで揃えたくなる!カクテルツールとデキャンタ
回しやすく抜き差ししやすい「バースプーン」や、高級酒も余さず注げる撥水加工の「メジャーカップ」、多機能な「ストレーナー」などカクテルツールも斬新な工夫がほどこされており、シリーズで揃えるバーテンダーも増えているそう。また、今後はオリーブやエディブルフラワーなど、繊細な素材をつまめるカクテル用トングも発売される予定です。
シェーカーと同じく、0.1ミクロン単位の緻密な研磨技術が容器内部に施された「デキャンタ」にも注目。1~2杯分のワインを注ぎ、側面に沿わせるようにゆっくり回すだけでワインの香りが立ち上り、年数を重ねた芳醇な風味がたやすく開いてくれる画期的なアイテム。
デキャンタ内部の緻密な凹凸にワインが触れ、ミクロレベルの気泡が発生することで、ワインにほどよく酸素が溶け込むという仕組みで、ワイン初心者でも上手にデキャンティングできます。
デキャンタにはウイスキーなど、蒸留酒を注いでもかなり楽しい。デキャンタを左にくるりと回せばウイスキーの持つキャラメル香やバター香など重厚な香りが立ち上り、右に回せば甘くまろやかに味わいの印象を変えるのです。左回りはウイスキーのアルコール感とテロワールが際立ち、右回りは飲みやすくおだやかな飲み心地に。その差は面白いほど歴然で、いろいろなお酒で飲み比べしたくなります。
>>BIRDY.
(取材・文/嶺月香里)
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/475250/
- Source:&GP
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