Appleで非常に強い影響力を持ってきたフィル・シラー氏が、App Storeでデベロッパーや自社の利益よりもユーザーの尊重を強く主張し、ビジネスの方向性を巡って社内で対立していたことが分かりました。
エディターによるキュレーション推し
App Storeには、Appleらしさが良くも悪くも表れています。厳格な審査、サードパーティとの共存を許さないプラットフォーム、そして“Apple税”――しかし、Appleの中でもどういった方向性でストアを運営していくのかの考えは一枚岩ではありません。
総じてビジネス感覚に敏いイメージのあるApple幹部ですが、フィル・シラー氏(元マーケティング副社長、現フェロー)が、App Storeの方向性を巡り、キュレーション重視を貫ぬこうとして社内で対立していたことが分かりました。
厳格なレビュー体制はもとより、エディターチームによる「Today」「ゲーム」「App」といったタブでのアプリの推奨はシラー氏が強く支持しており、高額な費用を要したため、社内で眉をひそめる関係者も少なくなかったそうです。確かにコスト削減を重視すれば、ユーザーに自分で検索してもらえば事足ります。
しかしシラー氏は、App Storeがかつてのような自発性や新しいアプリを発見する楽しさが失われていると判断、単に有名デベロッパーのアプリを推奨するだけでな不十分だと考え、社内の反対を押し切って、あくまでもプロのエディター陣によるキュレーションにこだわりました。
何をチョイスするかにも目を光らせる
またシラー氏のこだわりは、どんなアプリがエディターによって特集されるべきかにまで及びました。
例えば、銃などの武器を使って生き残りを懸けるFPSゲームは米国の銃乱射事件を受けて、いわゆる“ガチャ”と呼ばれるゲームも依存症を生む危険があるとして、それぞれシラー氏からストップがかかっていたことが分かっています。後者については、マージンで稼ぐAppleに莫大な収益をもたらすため、Appleの経営陣からもかなり不満の声が上がっていたそうです。
同じくアプリのトラッキングの透明性(ATT)についても、デベロッパーのiOS離れを引き起こすのではないかとの懸念が社内でありましたが、プライバシー機能(の拡充)はユーザーにとって正しいことであり、広告主側もいずれは適応していくとして、あくまでもユーザー第一主義を貫くことにこだわっていたとされています。
広告ビジネスの躍進目立つAppleだが
一見すると、FacebookやGoogleのような広告ビジネス企業とは無縁に思えるAppleですが、App Store内には「Apple Search Ads」と呼ばれる広告枠が存在します。
今後もこうした自社プラットフォームでの広告ビジネスが加速していくと考えられているため、プライバシー機能やユーザー尊重主義を利用しているのではないかとの批判は少なくなりません。
しかし、Apple幹部、それも最古参の重鎮がこのようなユーザー尊重の姿勢を社内で強硬に主張していたことは、同社のビジネススタイルに疑問を感じていた向きにとっても希望の光ではないでしょうか。
Source:AppleInsider
(kihachi)
- Original:https://iphone-mania.jp/news-486592/
- Source:iPhone Mania
- Author:iPhone Mania