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照度は?色温度は?ビデオライトの位置は?動画撮影に必要な照明環境を基礎から検証してみた

【YouTuber、はじめました!】

YouTuberとして活動を始めた人にありがちな失敗が、いざ動画を撮影してみたら画面がちょっと暗いというパターン。では、動画撮影に求められる部屋の照度ってどれくらいでしょうか。そこで今回は、僕が普段行っている屋内のガジェットレビューと同じシチュエーションで、YouTube撮影時の照明をテーマにいろいろとテストしてみました。

照明のテストといっても、オススメの動画撮影機材を比較するわけではありません。僕がYouTube収録を始める際に使った撮影機材は、第1回でも紹介した通り、調光可能なLED電球を22個とビデオライトが2灯を導入しています。

▲照度計を使って検証環境ごとの照度も計測。照度計はアマゾンで約2500円で購入

今回紹介するのは、これらを正しく使いこなすためのお勉強的な内容です。照明の基礎、動画撮影に部屋の明るさってどれくらい必要? 照明って電球色でも大丈夫? ビデオライトってどの位置に置けばいいの? という基礎知識を、僕自身を実験台として検証してみました。

 

■必要照度、照明色、ビデオライトの位置など考えることはたくさん

最初に照明機材の紹介から。撮影している部屋の天井照明は、60W相当の電球型LED照明(個別に調光・調色可能)が22個と、さほど明るくないダウンライト(電球色)。電球型のLED照明は10個のメイン照明と12個のサブ照明で分けていて、直上の位置にはLED照明のメインとサブがそれぞれ2個ずつ。直上の天井照明から、椅子に座った僕の顔の位置まで約1mです。

▲「LEDVANCE SMART+」という調光・調色対応のLED電球。60W相当の明るさのものを22個導入

▲撮影用のビデオライトはNeewer「2パック 調光可能な二色480 LEDビデオライトとスタンドライティングキット」。Amazonでの購入価格は1万8949円

まずは、今まで撮影してきた環境で計測してみると…約425ルクス。動画の見た目として十分な明るさだと思います。

▲天井のLED電球とビデオライトで約425ルクス

カメラに詳しい人は「動画の明るさってカメラの設定次第では?」と思う人もいるでしょう。僕が動画撮影に使っているα7Ⅲのセッティングは、フルHD/60p撮影でシャッタースピードは1/60、絞りF11、ISOオート、露出+0.7。ホワイトバランスはマニュアルで固定です。

60pの動画撮影では本来シャッタースピードはコマ数の2倍程度の1/125が理想なのですが、僕のYouTubeでは機材を斜めから撮りつつ自分も映ることがあるので、シャッタースピードを1/60と最低限にしてF11まで絞ることでボケる範囲を狭くしています。

また、撮影場所の照明が蛍光灯の場合には、電力の周波数によるフリッカーに要注意。シャッタースピードは東日本が1/50かその倍数、西日本では1/60かその倍数にする必要があります。ただし、僕の照明はすべてLEDなので、この制約は気にしていません。

次に、部屋の照度がどれくらい必要かを検証してみました。

まずは、ビデオライトを使わずに22個のLED照明(+ダウンライト)で撮影した動画が次のスクリーンショットです。これは照度計の数値は約335ルクスで、一般家庭のリビングに近い明るさです。

▲天井のLED照明をすべて点灯した約335ルクスで収録

動画の明るさとしては、ギリギリ合格点くらいの明るさでしょうか。

続いてLED電球をメインの12個のみに減らした状態。照度計の数値は約155ルクス。

▲天井のLED照明を半分の付けた約155ルクス

こちらは、見た目にも暗さが気になります。見た目の印象を良くするためにも、一般家庭のリビング程度の300ルクス程度は欲しいなというのが結論です。そして、画面全体をもっと明るく見せたいなら、僕が天井照明+ビデオライトで確保した425ルクスは割と適正な数値でした。

続いて検証してみたのは、照明色による動画への影響です。

動画収録をしたい部屋の照明が、電球色という方もいますよね。白色や電球色を含む光源の色合いは「色温度」という言葉で呼ばれていて、ケルビン(K)という数値で表します。一般的な白色の蛍光灯が4200-4500K程度で、僕の普段の収録環境はこれに近いものです。電球のような黄色がかった照明は2700K程度。

照明色をテストするためあえてホワイトバランスを変えずに照明色を3000K程度まで下げて撮影した動画のスクリーショットは次の通り。

▲電球色の照明でホワイトバランス固定だとこんな色合いに

撮影している僕が実際に見ている色合いはこの色なのですが…正直、黄色過ぎですね。この状態からカメラのホワイトバランスをオートに設定して収録した動画が次の画像です。

▲ホワイトバランスオートで撮影してもやや色合いが変わります

だいぶ黄色っぽさは収まりましたが、蛍光灯色の撮影とくらべると今度は赤っぽく温かみあるように映りました。僕のガジェットレビューだと、カメラ側でホワイトバランスを追い込む必要あります。ただ、例えば会話メインで落ち着いたYouTubeコンテンツなら、あえてこの色もアリかもしれません。

続いて、動画収録用に導入済みのNeewerのLEDのビデオライト2灯の設置場所も検討していきます。

▲これまでのセッティング。正直、後ろに影が出ていました

ビデオライトは2灯あるのですが、1灯だけ使って教科書通りにセットするなら…カメラのすぐ横かつ高い位置から、45°の角度で見下ろす位置にメインライトをセット(これ、プレーン・ライトと呼びます)。

▲カメラのすぐ横にスタンドを立てて45°の角度で顔に向けます

▲1灯のみで撮影した動画は影も気になりません。照度は約365ルクス

メインライト1灯でも明るく撮影できますね。

そしてもう1灯としてバック・ライトも追加してみました。バックライトは僕の左斜め5°くらいで顔の高さの位置に追加すると…こんな感じ。

▲僕の座っている位置の左やや後ろに顔に向けて照明を照らします

▲顔の輪郭に光が当たって立体感が出ています

人物メインでかっこよく撮影するなら、バックライト追加はいいですね。ただ、ガジェットレビューのYouTubeで顔がクッキリ見えるのが求められるのかという問題と、バックライトは置き場に悩むという問題も。

そこで目先の問題意識を、とりあえず顔を明るく見せつつ影を柔らかくする方向に変えます。2灯照明だと天井バウンス撮影が推奨されますが、僕の家の天井は黒色で光を吸収するため不向き。

そこで、横45°の高い位置のキー・ライトと、反対横30°で顔の高さで照らすフィル・ライトの考え方を採用した結果がこちら。

▲右45度の高い位置(キー・ライト)と左30度の顔の高さ(フィル・ライト)に照明をセット

▲キー・ライト+フィル・ライト100%

▲キー・ライト+フィル・ライト20%

1枚目がフィル・ライトの明るさ100%で、2枚目はフィル・ライト20%まで絞っています。100%はまだ影が目立っていますが、フィル・ライトを20%まで下げるとバランスが取れたのではないでしょうか。ただ、動画で見てみると影は少し見えるし、左右で影の高さが異なるのが気になる…。

キー・ライト+フィル・ライトは角度も含めた微調整が難しいなと思っていろいろ試行錯誤してみて、僕なりに考えたセッティングがこちらです。

▲カメラすぐ横にキー・ライト+フィル・ライト20%

明るさの確保と影のなさのバランスが取れました

基本は1灯照明の考え方で、カメラ真横にメインライト(キー・ライト)をセット。プラスして30°程度の角度で、顔の高さにフィル・ライトを追加して明るさは20%で顔に向けます。これで強い影もなく顔の明るさを補えます。それに、この位置なら照明を置く際に障害物が邪魔になりにくいかなと。

これまで適当なセッティングで行っていたYouTubeの動画収録ですが、部屋の照明環境、照明色の影響、ビデオライトの位置など照明は本当に奥深い世界。いざ自分が作る身になると、教科書通りの知識にプラスして、設置場所の事情なども考えて応用していく必要があるなと思いました。

今回の記事内容は、YouTubeチャンネル「オリチャンネル」にて、それぞれの照明環境で撮影した動画サンプルも掲載予定。良かったら動画でも確認してみてください!

>> [連載]YouTuber、はじめました!

 

<取材・文/折原一也

折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長。YouTube

 

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