1年を通じて販売され、その台数も多いiPhone。各キャリアとも発売に合わせ、新料金プランや新サービスを投入するのが恒例になっています。料金やサービスを周知するうえで、機種変更時に告知できるのはプラスになるからです。とは言え、スマホの料金プランは、21年に大きく変わったばかり。そのため、今年は料金プランの改定といった話はありませんでした。
iPhone発売後の各社の動き
一方で、ドコモやソフトバンクは、iPhone投入に合わせて新サービスを導入しています。ドコモは「smartあんしん補償」を、ソフトバンクは「店頭スマホサポート定額」を、それぞれiPhoneの発売日直前に開始。
これに対し、KDDIや楽天モバイルはiPhoneの新機能である「eSIM クイック転送」をサポートして、機種変更を簡単に行えるようにしています。
ドコモはAppleCare+以上の補償を安価で
まずドコモのsmartあんしん補償ですが、こちらは、iPhoneを含むスマホの補償サービス。これまで提供されていた「ケータイ補償」との違いは、“料金の安さ”と“補償対象の広さ”の2つです。
料金は、端末に応じて4段階に分かれています。ガラケーとも呼ばれるシンプルな携帯電話の場合は330円ですが、高機能なスマホの場合は990円になります。その中間として、550円や825円の料金も設定されています。
最新のiPhoneの場合、「iPhone 14 Pro」や「iPhone 14 Pro Max」は990円、「iPhone 14」は一段階下の825円に設定されています。smartあんしん補償導入前の補償サービスだったケータイ補償の場合、もっとも高い端末には1100円の料金が適用されていたため、110円ほど料金は安くなっています。
また、iPhoneの場合、アップルの用意したAppleCare+を契約するのが一般的ですが、これとの比較だとさらに料金は割安になります。
AppleCare+は、iPhone 14 Pro、Pro Maxが盗難・紛失までカバーすると、月額1600円か2年で3万1800円。月々の料金で600円以上の差が出てくるのは、非常に大きな違いと言えそうです。
安いからといって補償が手薄というわけでもなく、故障時の修理費用がサポートされるだけでなく、全損や紛失・盗難時にはリフレッシュ品への交換も可能。ドコモ以外のキャリアもAppleCare+をベースにした補償サービスを提供しているため、料金はアップルとほぼ同じ。ドコモでiPhoneを買う動機の1つになりそうです。
smartあんしん補償は、むしろ補償の範囲がAppleCare+より広いのも特徴。自動で付帯する特典の「イエナカ機器補償」で、自宅のテレビやゲーム機、さらにはパソコン、タブレットといった機器まで補償の対象になります。タブレットは、ドコモで購入した端末“以外”という制限がつきますが、アップルから直接購入したiPadも補償されるとのこと。連携機能が優れていることもあり、アップル製品を複数使い分けるユーザーは多くいますが、こうした人にはうれしいサービスです。
ソフトバンクは17種類の有料サポート提供
補償を手厚くしてきたドコモに対し、ソフトバンクはサポートで対抗しています。新たに提供を開始した店頭スマホサポート定額は、その名のとおり、有料サポートを定額で提供するサービス。コースは月額990円の「フルプラン」と、月額550円の「ライトプラン」の2つに分かれています。
2つのプランに共通しているのは、17種類の有料サポートを受けられること。スマホの初期化やアカウント設定、メール設定はもちろん、FacebookやTwitter、Instagram、メルカリといったサードパーティ製アプリの設定のサポートまで受けることができます。さらに、フルプランの場合、端末間のデータ移行やフィルム貼り、コーティングまでが対象になります。
データ移行は1回3960円、フィルム貼りや各種設定は1回1100円で提供されていますが、これらを複数回利用するのであれば、お得になるサービスと言えそうです。設定のサポートやデータ移行はスマホに慣れたユーザーには不要かもしれませんが、フィルム貼りやコーティングは、店頭でやってもらうメリットあり。フルプランの場合、1年ごとに継続利用特典としてソフトバンクショップで使える5000円のクーポンか2000円のPayPayポイントをもらえるため、スマホの操作に不安のあるユーザーは入っておいてもよさそうです。
KDDIと楽天モバイルはeSIMのクイック転送が可能に
ドコモやソフトバンクに対し、KDDIや楽天モバイルは目立った新サービスは投入していませんが、iPhone 14に採用される「iOS 16」で新たに始まったeSIMのクイック転送機能に対応し、機種変更が容易になりました。eSIM クイック転送とは、今まで使っていた端末から新しい端末に、iCloudもしくはBluetooth経由でeSIMのプロファイルを移せる機能のことを指します。
eSIMを新端末に移す場合、これまでは、キャリアの用意したサイトにアクセスして、eSIMプロファイルを再発行するなど、手続きに手間がかかっていました。KDDIのpovoでは、サポートにチャットで依頼をしたあと、免許証などを持った写真を撮って本人確認をする必要まであり、お世辞にも手軽とは言えない状況です。本来はネットだけで完結して便利なはずのeSIMですが、機種変更に関しては、物理的なSIMカードより面倒になっていたと言えるでしょう。
これに対し、eSIM クイック転送を使えば、画面に表示された手順に従っていくだけで、iPhoneのセットアップ中にeSIMの入れ替えが完了します。ネットワーク側での対応が必要なため、KDDIと楽天モバイルの2社に限定されますが、手間がかからないのはもちろん、eSIMプロファイルを再発行する時間も短縮され、利便性を高めるサービスです。また、これまでの端末で使用していた物理SIMを、eSIMとして新端末に取り込むことも可能になりました。
新料金プランのように派手は発表はありませんでしたが、補償やサポート、eSIMなどのサービスで大手4キャリアが差別化を図っていることがうかがえます。アップルが端末単体で販売しているため、キャリアからiPhoneを購入する意義が徐々に薄れてはいますが、だからこそ、キャリアはサービス面を強化しているとも言えそうです。
(文・石野純也)
- Original:https://techable.jp/archives/185969
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:amano