【達人のプラモ術】
番外編
第60回全日本模型ホビーショーレポート
10月1~2日、東京ビッグサイトにおいて第60回全日本模型ホビーショーが開催されました。前回となる第59回は2019年。2020年と2021年はコロナ渦により開催を自粛したので、実に3年ぶりの開催となりました。5月に開催された第60回静岡ホビーショーに続き、ホビーイベントが開催されるようになってきたのは嬉しい限りです。
そこで今回は『達人のプラモ術』番外編ということで、達人が全日本模型ホビーショー会場で、これはいいぞぉ! と注目した最新のプラモをピックアップして紹介していきます。
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中。
<達人チョイス1>
ビシビシとこだわりを感じさせてくれるディテールが魅力!
世界限定500台のスーパーバイクが1/12スケールでキット化!
タミヤ
「1/12 DUCATIスーパーレッジェーラ」(4620円)
2022年10月8日発売
世界限定500台、実車価格1100万円! というスーパープレミアDUCATI スーパーレッジェーラをタミヤが1/12でキット化。トランスフォームしそうな戦闘的なフォルム(カウルには翼が付いている!)や、搭載されたV4エンジン等、見どころ満載のモデル。バイクプラモというと複雑な部品が組み合わさる難しいプラモデルに思われがちなんだけれど、ビギナーでも組み上げることができる工夫とアイディアが盛り込まれているのがタミヤテイストであります。
そして本キットはドライブチェーンの表現に注目。これまでの1/12バイクプラモのチェーンは、スプロケットと一体成型のパーツで再現されているのが当たり前だったんだけど、実物のチェーンにはスプロケットを噛んで車輪を回転させための溝がある。本キットは、極薄のチェーンパーツを2枚重ねることでスプロケットの歯が噛み合わさるリアルなチェーンを再現しちゃったんですね。
これを見てバイク好きは「タミヤは分かってるねぇ」と唸るのであります。しかしこの極薄のパーツは従来のパーツに比べて強度がないため「これが今後の標準になるかは検討中」とのこと。それだけに作ってみたくなります! にしてもバイク乗り(元だけど)としてはスーパーレッジェーラに一度は乗っててみたいです。しかし価格1100万円って絶対転べないよなぁ(←こう考える時点で負けてる)。
<達人チョイス2>
これは作りたい!
会場発表!最新鋭スティルス戦闘機がタミヤブランドで登場
タミヤ
「1/48 ロッキードマーチンF-35AライトニングⅡ」(価格未定)
発売日未定
この夏は映画『トップガン マーヴェリック』が公開され、大ヒットしたこともあって、スケールモデルでも現用戦闘機が人気を集めました。特に劇中での主人公マーヴェリックの愛機となるF/A-18スーパーホーネットは模型店で品切れ続出、入手困難が続いています。
さて現実の世界での最新鋭戦闘機といえば、航空自衛隊でも採用されたF-35ライトニングⅡで、ご存知の方も多いと思います。F-35はこれまで数社がキット化しているのですが、今回タミヤが1/48スケールでF-35Aキット化し会場発表ということもあり、大いに注目されていました。
ステルス機の特徴ともいえる機体のRAMコーティングはモールドで再現。そしてリアルなエンジンノズルのディテール、超絶と言っていいほど緻密な彫刻で再現されたウエポンベイ(撮影不可でしたぁ)など。また最近のタミヤはフィギュアのディテール再現が凄いのですが、本キットに付属しているパイロットがすんごいリアルで、特にF-35パイロットの特徴的なヘルメット(F-35GenIII Helmet Mounted Display System)がシャープに再現されているのに注目です。
このヘルメット、機体のあらゆる情報が有機EL製のバイザーに投影されるヘッドアップディスプレイ機能をはじめ、音声コマンドを聞き取るマイク、ナイトビジョンシステム、さらに機体外側の全方位映像も投影可能なのだそうです。ちなみにヘルメット単体のお値段は4400万円! そんな最先端のハイテクヘルメットのディテールに「う~む」と感服しつつ、複雑なラインで構成されたインテークダクトなどは極力パーティングラインが表に出ないパーツ構成など、組みやすさにも最大限の配慮がなされているのは流石のタミヤテイスト。ビギナーにもオススメで、発売が待ち遠しいキットであります。
<達人チョイス3>
マニアックと言うなかれ!
Uボートに搭載されて偵察に活躍したローターカイト
TAKOM(タコム)
「1/16 ドイツ海軍 フォッケ・アハゲリス Fa330 バッハシュテルツェ Uボート艦載偵察機」(6100円)
発売中
えー、実は個人的に大変好きなメカです。第二次大戦中、ドイツ海軍で活躍した潜水艦Uボートに搭載されていたローターカイト。潜水艦って一般的な艦船と違って背の高い艦橋やマストがないので、海上での見張りは低位置からの視界しか得られなかったんですね。そこで登場したのが3枚ブレード回転翼凧のFa330であります。
一見、小型のヘリコプターに見えますが、エンジンなどはなくUボートの甲板で組み立てて、Uボートが航走するとローターが風を受けて回転。船体とはワイヤー(船と交信用の電話線も兼ねる)で繋がれており、ぶっちゃけ回転翼で浮き上がる凧。それでも上空120メートルまで上がれたので46km先まで視界を確保できたんだそうです。偵察中に敵に発見された場合、船体と繋がれたワイヤーを切り離し、操縦士と機体は犠牲にされたらしいです。
キットは1/16スケールということで、リアルなフィギュアが付属しており。まぁ正直なところ実に地味なプラモではありますが、Uボート大好きな達人としては入手しないワケにはいかない模型だと思うワケです。いやー渋い、実に渋い。
<達人チョイス4>
アハト・アハトと呼びたい!
ドイツの傑作高射砲「88mmFlaK/36」ポイントは缶入り?!
BoderModel(ボーダーモデル)
「1/35 ドイツ88mm砲Falk36 w/砲兵フィギュア」(9500円)
発売中
88mm FlaK 18/36/37は第二次世界大戦前よりドイツ国防軍で使用された傑作高射砲で、ミリタリーマニアの間でも人気が高いアイテムです。ドイツ語では 8.8cm Flugabwehrkanone(アハト・アハト ツェンチミーター フルッガベア・カノーネ)と読み、その口径からドイツ軍将兵はAcht-Acht「アハト・アハト」(ドイツ語で8・8の意味)と呼ばれていたそうです。もともとは対空砲として開発された88ミリ砲ですが対戦車砲としても優れ、1937年からは野砲や対戦車砲として使われることが多くなり、最終的には対地攻撃任務が全体の93%にものぼったそうです。
タミヤも同じ1/35でキット化しており、こちらも傑作キットとして名高いですものですが、今回ボーダーモデルから発売されたキットは完全新金型で、6体のフィギュアが付属。ディテールもかなりいい感じでミリタリー好きならば作らなけりゃアカン(なぜか関西弁)キットです。
そして本キットは、一般的な紙製箱ではなく、金属製の専用ボックスに収められているのがポイントになっています。これがまたモデラーの琴線を刺激するんですね、マジで一目惚れしました。いやぁケースだけ販売してくれませんかねぇ(←最低)。
<達人チョイス5>
ミニクーパーと言ったらこれでしょ!
ハセガワ
「1/24 ミニクーパー1.3i(1997)」(3190円)
2022年10月29日ごろ発売予定
今回キット化されたミニ(クラシックミニ)の生産が中止されたのが2000年だから、すでに22年経つんですね。好きなクルマのひとつで、何度か実車の購入も考えたことがあるんですよ(知人のミニが走行中にラジエイター脱落という事故を起こしたのを見て断念)。いろんな意味で味のあるいいクルマですよね。
プラモデルとしてはタミヤから1/24でキットが発売されていましたが、現在は入手困難になっています。今回ハセガワのニューキット発表はミニファンにとっては朗報です。
キットは1997年~2000年に生産されたクラシックミニの最終型(通称MK.X)のミニ クーパー(1997年)を実車取材をもとに完全新金型で再現。足回りや特徴的な車体構造の再現にこだわって、キットを組み立てる際、実車をレストアしているような感覚が味わえるとのこと。実車は買わなかったけれど、プラモでオーナーになるのも良いなぁと思う今日この頃であります。
注目モデルはここまでなのですが、会場では一風変わったプラモの新製品も見つけました。それらをご紹介しましょう!
<番外その1>
組み立てるとゴミができますって…
リアルなゴミのプラモデル爆誕!
グッドスマイルカンパニー
「ゴミプラモ 1/1スケール」(1540円)
2022年12月発売予定
今回のホビーショーの中で一番衝撃を受けたアイテム、ゴミのプラモ! なんとクシャっと丸めた紙屑のプラモなんですよ…。以前リアルな寿司プラモを販売して話題を集めたStudioS YUTOの製品。
まぁ確かにスケールモデルと言われればそうなんだけれど、シュールすぎる(笑)。いやぁプラモ世界は奥が深い。これをリアルに仕上げて展示したら…まぁ勘違いされて捨てられちゃうだろうなぁ。
<番外その2>
1000/1?(拡大)スケール!
アメーバのプラモがあってもいいじゃないか!
アトランティスモデル
「ノンスケール アメーバ(単細胞生物)プラモデル」(4840円)
発売中
え~とですね、ゴミのプラモデルに続きましては、アメーバのプラモデルです。いやほらあの単細胞生物、科学の授業とかで必ず出てくるアレです。
実は旧リンドバーク(アメリカのプラメーカーで現在は廃業)が60年代に発売していたモデルで、今回アトランティスモデルが再販したものです。60年代当時は人体模型(製品名は驚異の人体)のプラモデル、さらには牛やコオロギ、猫と犬の内部を再現した模型、眼球や脳といった科学系模型がたくさんありました。しかしアメーバは当時でもかなりシュールな模型だったと思います。
キットはクリアー成型で、アメーバとユーグレナ(ミドリムシ)、パラメシウム(ゾウリムシ)の3種類がセットになっており、それぞれ科学的考証に基づき(本当かなぁ)、実物の約1000倍のサイズで立体化されており(ディスプレイスタンドも付属)、組み立てることで単細胞生物を学べる科学キットらしいです(笑)。
>> [連載]達人のプラモ術<写真・文/長谷川迷人>
【関連記事】
◆新作の世界観に浸れるガンプラづくりのポイント【趣味と遊びの秘密基地ギア】
◆第60回静岡ホビーショーでプラモの達人が気になった最新プラモデル5選
◆プラモのヤスリがけがキレイでスピーディにできる「アルティマ」がさらに進化!
- Original:https://www.goodspress.jp/features/482489/
- Source:&GP
- Author:&GP