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人事やマーケにも フリーランスが多職種に広がっているワケ

多様な働き方が認められるようになり、フリーランスが増加している近年。人事やマーケティングといった職種でもフリーランスが増えているといいます。その理由とは、何なのでしょうか。

起業家やフリーランスなどを支援する株式会社Hajimariの代表取締役・木村直人氏に、フリーランスが多職種に広がっている理由についてご寄稿いただきました。

フリーランスはなぜ増加している?

副業元年と言われた2018年以降、フリーランスという働き方は増加しています。

内閣府が発表したデータによると、特定の発注者に依存する自営業主、いわゆる雇用的自営業等は増加傾向にあり、昨今の労働市場の変化における特徴の一つとされています(※公的統計では、フリーランスに関する直接的な統計はないものの、雇用的自営業等は、本業としてのフリーランスに近いとされています)。

フリーランスが増加した背景には、どのような社会現象があるのでしょうか。

2019年4月、日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長は「企業が終身雇用を続けていくのは難しい」と言及。同年5月にはトヨタ自動車株式会社の豊田章男社長が「終身雇用の維持は難しい」と発言し、社会に大きなインパクトを与えました。

このように、経済界のリーダーが「終身雇用の崩壊」について語ることが増え、企業の力に頼ることなく、個の力で生きていく必要がある時代になりつつあります。

また、価値観の多様化により、誰もが同じような働き方や報酬を望むのではなく、一人ひとりが自分に合った多様な働き方や生き方を望み、選択する機運が高まっています。

その結果、時間や場所に縛られず、個人のスキルを高める仕事を受けることができる、フリーランスという働き方を選ぶ人材が増加したのでしょう。

当社が支援した起業家の中には、「起業当時はプロダクト開発に並行して、収入を確保する必要がある」という人がいました。その人は時間を柔軟に調整できるフリーランスとして働きながら、開発に注力することで、事業を成功に導きました。

つまり、理想とする働き方・生き方を自由に選択することで自己の希望を成し遂げたのです。

変化の早い現代では、多くの企業は素早く各分野のプロフェッショナルを獲得する必要があります。プロダクトを開発するエンジニアは技術革新のたびに不足し、社会の影響を受けやすいマーケティングの分野、人事の分野は慢性的な人材不足に悩まされています。しかし、労働人口は年々不足しており、特に専門性の高い職種の人材を採用することは非常に困難です。

そんな中で、専門スキルを持ち、正社員に比べて時間・育成コストがかからないフリーランスに業務を依頼したいという企業が年々増加しています。

個人の働き方への変化と、企業からのニーズの双方が合致し、フリーランスの増加が加速していったと考えています。

フリーランスはなぜ多様な職種・業種に広まっていくのか

フリーランスという働き方を選ぶ人の中で「クリエイティブ・Web・フォト系」「エンジニア・技術開発系」といったIT関連のスキルを持つ人の割合は全体の約40%を占めるといいます(※フリーランス協会『フリーランス白書2022』参照)。しかし、それ以外の職種に就いていてもフリーランスになる人は増えています。

当社では2020年以降、支援するフリーランスを、IT人材から他職種まで広げてきました。その背景として、多様な職種で「人材獲得」が課題になっていることが挙げられます。

人事フリーランスを導入し、組織力を強化した楽天投信投資顧問株式会社

例えば、人事においては、オンライン化に伴い採用手法が変わったことから、あらゆる職種の採用活動が難しくなっています。人材獲得が企業成長の課題になっているにもかかわらず、そもそも現場に採用担当者が足りていない状況です。

また、マーケティング領域において人材の獲得は、企業の業績に直結する課題です。消費者行動の変化に左右されやすいマーケティング領域では常に最新の知識・経験が求められるため、未経験で人材を採用しても育成時間・コストが大きく、企業の負担となってしまいます。

ファイナンスの分野においても、同じことが言えます。ベンチャー企業でCFO(最高財務責任者)を採用することはコストや魅力度といった観点から難しいようです。

そこで週に1度程度のMTGで適切にアドバイスをもらい、今後の事業成長に耐えられる管理体制、資金調達戦略を企業とともに考えられるフリーランスの存在が非常に貴重になってくるのです。

このように時代の変化とともに、企業がプロフェッショナルな人材を外部に求める機運が高まるにつれ、フリーランスとして活躍できる職種が増加していくと考えられます。

今後の展望〜フリーランスはどの領域・どんな人材に広まっていくか〜

今後も、フリーランスという働き方はさまざまな領域において広がっていくと考えています。昨今は、美容師やジムのトレーナー、英会話の講師などがフリーランスに転身することが珍しくなくなってきました。

フリーランスが活躍しやすい職種は、専門性が強く、働く場所を変えても、発揮できるパフォーマンスが変わらない仕事でしょう。加えて、市場の需要・供給が崩れている領域については、フリーランスも増えるのではないかと考えています。

例えば、保育士も今後フリーランスが増えるの可能性があります。共働き夫婦の増えた現代では、保育園のニーズが年々高まっていますが、保育士の数が追いついておらず、保育園不足が深刻な社会問題になっています。そんな中、「週3日程度なら働ける」という保育士がいれば、フルタイムの正社員ではなくとも、うちで働いてほしいと思う保育園は多いでしょう。

そのほか、薬剤師や看護師など、明確なスキルを必要とする、需要と供給が崩れている領域においてもフリーランスの増加が加速していくと思います。

多様な業種・職種でフリーランスが増加する中で、活躍するフリーランスとなるためには、プロフェッショナルとして成果を出すことへの“こだわり”を持つことが大事です。

正社員にも言えることですが、フリーランスは仕事において求められているものを自分で考えて、依頼主と調整しながら成果をあげることが求められます。「言われたことだけこなせばいい」「指示されることをやっていればいい」というスタンスでは、フリーランスとして継続して仕事を受注することはできません。

特定分野のプロフェッショナルとして、自分の持つ高いスキルで結果を出すことを常に意識し、結果を出し続ける人材だけが生き残っていける世界だと思います。

また、フリーランスには、なかなか新しい領域へチャレンジすることが難しい(自分のスキルの向上が難しい)という側面があります。企業側は「正社員と同じように、フリーランスに新しい挑戦をさせて教育していく」というモチベーションがなく、今持っているスキルを最大限に活かして仕事をしてほしいと考えているからです。

フリーランスがスキルを高めるためには、自分が働く場所で高いパフォーマンスを発揮し、信頼を得て「そこまで経験と合致してはいないけれど、この人になら次はこの仕事を任せてみようかな」と思わせることが必要です。そうして徐々に仕事の幅が広がり、フリーランスとしてのスキルの幅も広がるのです。

今後は「フリーランス」「会社員」それぞれの働き方をよりフレキシブルに選択できる時代になってくるでしょう。

フリーランスとして活躍する人材が、未経験の業務に挑戦したいときにだけ会社員に戻り、しっかりと知識と経験を身につけてから、再びフリーランスとして活躍する……そんな働き方が増えてくるかもしれません。

働き方が変化しても、プロフェッショナルとして全力で仕事に望む人材になることが、現代社会のビジネスパーソンにおいて求められていることなのではないでしょうか。

<著者プロフィール>

木村直人
株式会社Hajimari
代表取締役

早稲田大学卒業後、大手損害保険会社を経て、株式会社アトラエ入社。成功報酬型求人サイト「Green」の立ち上げから関わり、仕組みを作る。
その後人材系のベンチャー企業に参画し、取締役COOに就任。新規事業としてIT分野のプロフェッショナル人材を活用する「ITプロパートナーズ事業」を立ち上げる。
2015年4月より「ITプロパートナーズ事業」を業務移管させる形で、株式会社ITプロパートナーズ(現:株式会社Hajimari)を創業し、代表取締役に就任。

「自立した人材を増やし、人生の幸福度を高める」ことをビジョンに掲げ、現在8事業を展開している。売上高成長率159%の注目スタートアップ企業である。

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