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「車買えぬ日本」を生き抜く秘策。過熱する車のサブスクリプション市場と次の一手

新型コロナウイルス感染拡大の影響などによる新車の納車遅れで、中古車市場に顧客が殺到し、中古車価格が高騰。自動車を買えなくて困っている人たちがいる。そのようなニュースを目にした方も多いでしょう。

しかし、「自動車を買えない」という状況はコロナ禍の前から別の理由で存在していました。自動車を買えない理由は何なのか、その課題を持つ方々はどうしているのか。

車のサブスクリプションサービス「おトクにマイカー 定額カルモくん」を提供するナイル株式会社 自動車産業DX事業部COOの久米田晶亮氏に解説していただきます。

市場リサーチで見えてきた安心・安全が買えない状況

ナイルが自動車産業に着目したのは、2018年のサービスローンチから遡ること1年強前の2016年10月のことです。

消費者の自動車購入プロセスの中で、ディーラーへの訪問数が減っているという情報から、「現物を見なくても自動車を購入する方は増加する。自動車のオンライン販売には大きなポテンシャルがある」と感じたことが、事業を開始するきっかけとなりました。

その後、市場をリサーチしていく中で、地方都市を中心とした自動車を日常的に使用する地域には、「欲しい自動車を買えない」という課題を持つ方が少なくないことがわかりました。

日本における自動車販売では、自動車ローンが利用されるケースが4割弱を占めています。一方で、年間約200万人が自動車ローンの審査に落ちているという数字もあります。これは、多くの方が自動車を買う手段を失っていることを意味しています。

自動車ローンの審査でチェックされる項目は、一般に年齢や年収、雇用形態、勤続年数、ほかの借入れ金融事故(返済の遅延、自己破産などの履歴)の有無などといわれています。

収入が上がりにくい社会構造の中で、子供の成長などに伴って支出は増え、さらに物価高が重なることによって、返済の遅れが生じていたり、離職・転職によって、勤続年数がリセットされたりといったことで、審査のハードルを越えるのが難しい方が一定数存在します。

また、スマートフォンだけで申し込める少額のキャッシングや、分割払い・後払いなどの手軽なサービスが一般化したことから、ちょっとした残高管理のミスが金融事故につながってしまうこともあります。

弊社のサービスを利用されるお客様の中には、携帯電話料金の払い遅れが理由で自動車ローンの審査に通らなかったという方もいました。

さらに、自動車そのものが高額化していることも見逃せない要因です。例えば、軽自動車の平均価格は、2001年に88万3,150円だったのに対し、2021年には157万7,405円まで値上がりしています。

安全性能、環境性能が重視されるようになったことで機能は増え、同じ車種であってもモデルチェンジの度に高くなっているものも少なくありません。

では、新車ではなく中古車を選べば良いかというと、中古車もけっして安くはありません。自動車の価格、つまり自動車ローンの借入額が大きくなると、当然、審査も厳しいものとなります。

「自動車が必要なのに自動車ローンが組めない。」私たちがリサーチしていく中で、そういった方々は仕方なく、手持ちのお金で購入できる、型落ちの中古車を探すといった状況がありました。しかし、型落ちの中古車は燃費性能があまり良いとはいえないのも事実です。

もしも、電気自動車やハイブリッドの自動車を買うことができれば、月々かかっていたガソリン代を減らすことができます。

また、「ニュースで流れるペダルの踏み間違いや確認不足による不幸な事故、それを回避する方法として、本当は安全性能のついた自動車に乗りたい」そういった声もありました。

自動車に乗る際の安全や家計面での安心を、お金を理由に手に入れられていない。その課題にナイルは向き合うこととしました。

注目され始めた車のサブスクリプション

2019年、「サブスク」の略称で流行語にもなったサブスクリプションサービスは、定額料金で製品やサービスを利用できる手軽さから、動画・音楽を皮切りに、書籍、衣類、家電、そして、自動車まで、さまざまな分野に進出し、すっかり身近な存在となりました。

中でも、車のサブスクリプション市場の盛り上がりには目を見張るものがあります。

サービスを提供している会社の顔ぶれだけ見ても、以前からあるオリックスやガソリンスタンド運営会社のコスモ石油、出光、ENEOSなどに加え、トヨタのKINTOをはじめとする自動車メーカーなどがここ数年で参入してきました。

また、珍しいところでは、大手電気通信事業者であるソフトバンクも2022年に法人向け中古車サブスクリプションサービスの提供を発表しています。

まずは法人向けですが、ゆくゆくは個人向けにサービスを展開していくとコメントしていることから、全国に販売拠点があるソフトバンクの参入で、さらに市場が拡大すると予測しています。

お金を理由に欲しい自動車を持てないという方の受け皿として存在感を増しているのが、まさにこの「車のサブスクリプション」です。

車のサブスクリプションは自動車を「買う」のではなく「利用する」サービスですから、自動車購入時にかかる初期費用など、突発的な出費は避けられます。

弊社のサービス、「おトクにマイカー 定額カルモくん 」の例ではありますが、1万1,220円(2022年10月現在。ダイハツ「ミライース」の金額)を毎月支払うことで、安全性能がついた新車に乗ることができます。

また、車のサブスクリプションにもカーローン同様に審査があるのですが、実際にカーローン審査に落ちた方が弊社の審査を通っている例は少なくありません。

詳しい審査方法は審査会社が公表していないため、私たちでもわかりませんが、カーローンは用途に対していくらお金を借入れできるかが審査されるのに対し、車のサブスクリプションはサービス利用料に対する審査であること、さらに、審査項目のひとつといわれている、年収に対する年間の返済額の割合「返済負担率」をカーローンよりも抑えやすいことが要因かもしれません。

このように、大きなお金を用意しなくても手軽に始められること、定額利用により家計管理が楽になること、審査のハードルが低いといわれていることが車のサブスクリプションの注目されている主な理由といえます。

自動車を必要とする方が苦しむことのない未来を

ナイルが車のサブスクリプション事業を開始するにあたって目標としたのは、「マイカーの概念を変え誰もが自由に移動を楽しむ社会をつくる」こと。

具体的には、料金や利用の条件を可能な限り引き下げ、車種、契約年数などの選択肢を増やし、一人でも多くの方が自分のライフスタイルに合った自動車やカーライフサポートを得られるサービスとすることを目指したのです。

例えば、事業開始当初は、店舗を置かず、インターネットでの集客に特化することで、徹底的なコスト削減を図り、業界最安水準の月額料金を実現しました。(現在は、店舗展開も一部行っています)。

私は、自動車の購入や自動車ローン利用のハードルが高い状況はもうしばらく続くものと考えています。また、このまま自動車の高額化が進めば、車のサブスクリプションですら利用が難しい方が増える恐れもあります。

しかし、私たちは事業開始時に掲げた目標を忘れません。今後はより、車のサブスクリプションサービス全体で金融機関からの与信がつきづらい方々向けにサービスが拡充されていくかと思います。

定額カルモくんでも、既存の金融システムにおいては与信の観点からローンやリースなどを活用できなかった方々に向けてモビリティ×Fintechといった領域にも目を向け、幅広い方々に車を提供できるよう独自の取り組みを進めています。

自動車を求める誰もが、自由に移動を楽しむ社会になるために何ができるのか。ナイルはこれからも考え続けます。

<著者プロフィール>

久米田 晶亮(Shosuke Kumeda)

2008年、オプト(現 デジタルホールディングス)に新卒入社。2014年に完全子会社としてコネクトムを創業し、代表取締役として経営全般を管掌。有店舗事業者のデジタルシフト支援として来店促進ツール/SaaSの開発立ち上げ。2021年1月に同社代表取締役を辞任、同年9月に取締役を退任し、2022年3月よりナイルに執行役員、自動車産業DX事業部COOとして入社。

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