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「モヤモヤ」レベルの従業員のメンタル不調、会社が取り組む限界をどう超える?

日本では数十年レベルで精神疾患患者が増加しており、多くの企業が産業医と契約してメンタル不調者の面談を依頼する、従業員の相談の場を設けるといった施策を実施しています。

しかし、従業員の中には「プライベートでの悩みごとが仕事に悪影響を及ぼしているが、職場に相談しにくい」「“ちょっとした気になること”を相談していいか迷う」と悩む人が多いようです。

今回は、法人向けオンラインカウンセリングサービスを展開する株式会社Smart相談室の代表取締役・藤田康男氏に、メンタルヘルス領域で発生している「ギャップ」についてご寄稿いただきました。

日本における精神疾患患者の増加

昨今、有名人のメンタルダウンの話や、コロナに関連した職場でのメンタル不調に関連する記事をよく目にします。

最近の環境の変化がメンタル疾患者の増加に繋がってるんだろうと、想像する人は多いでしょう。しかし、実は日本のメンタル疾患患者数は、最近伸び始めたわけではなく、かなり前から増加傾向にあります。

厚生労働省の「患者調査」によると、2017年時点で日本における精神疾患を有する総患者数は約419.3万人で、増加傾向にあります。入院患者数は過去15年間で減少傾向である一方、外来患者数は増加傾向です。

総患者数の推移から、日本では数十年レベルで精神疾患患者が増加しているのがわかると思います。この数字は「精神疾患に関する問題が直近発生したものではないこと」「今後も増加傾向になるかもしれないこと」「社会的な課題といっても差し支えないレベルであること」を表していると思います。

ストレスの原因は「仕事」「コロナ」

次に、人々が抱えている「悩み」について見ていきましょう。

厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は2018年は58.0%で、労働者の半分以上が悩みを抱えていることがわかっています。

また、近年のメンタル不調者の増加傾向にくわえて、2020年からのコロナ禍によって、メンタル不調を訴える人はさらに増加していくと予想されます。2020年9月の厚生労働省の調査によると、調査対象全体のうち半数ほどが不安、ストレスを感じていると判明しています(約16%が「過敏に(ストレスを)感じた」と回答)。

不安の原因は「自分や家族の感染」「自粛等による生活の変化」「自分や家族の仕事や収入」などです。直接的な仕事や職場に関することではなく、プライベート、仕事から間接的に発生する内容に付随した内容が原因となっているようです。

以上のデータから、日本では仕事のストレスやコロナに関する不安などを抱えている人が多いことがわかります。しかし、メンタルヘルスの領域は決定的な改善がなされておらず「今後、解決が期待される社会課題」と言われています。

このような理由から、政府はメンタルヘルス対策を重要視しています。

現場で感じるメンタルヘルス対応の課題

日本政府は、ストレスチェックの実施や産業医の専任、健康経営の啓蒙、ハラスメント窓口の設置義務化などの施策を打ち出しています。企業としては、従業員のメンタル状況を記録するシステムの導入、産業医と契約してメンタル不調者の面談をお願いするなどの施策を実施しています。

しかし、メンタルに関連した数値の悪化を確認して、そのあとに社内で面談し、産業医と面談するというアクションは、すでにメンタル不調に陥っている従業員にとってはもはや遅すぎる対応なのではないでしょうか。

中には「会社側に知られると評価が下がる」「自分の精神状態が社内の人間にばれてしまう」と考えて、「自分の状態がよくない」と記載することを嫌がる人もいるかもしれません。

逆に、責任感や本人の達成意欲から「私は大丈夫」「まだやれる」「私がやらないとダメ」と考えて、無理をしてしまう人もいるように思います。

仮に、従業員の方がメンタル不調に陥ると、人事担当者や上司が従業員の負荷の調整、休職などの対応をしますが、一度メンタル不調を起こしてしまった人へのケアは簡単ではなく、そのあとも病気との折り合いをつけて生活していくことになります。

「どうにかして、メンタル不調を未然に防ぐための仕組みはないだろうか」という思いから、私はSmart相談室の事業アイデアを考えはじめました。

この時点で、私の中で「メンタル不調に陥る前に対応したい」「メンタル不調にならない施策を講じたい」という考えが明確になりました。

合理的に発生している「ギャップ」

「メンタル不調に陥る前に対応したい」「メンタル不調にならない施策を講じたい」という思いからサービス設計に入った私は、設計を進める一環で複数のインタビューを行いました。

そのインタビューを通じて、メンタルヘルス領域で合理的に発生している「ギャップ」に気付きました。その気付きが、Smart相談室の提供価値の根幹になっています。下記にインタビュー結果の主なポイントを整理してみます。

【従業員】

【マネージャー】

【社内窓口担当者】

【人事労務部門】

このように、各立場によってさまざまな悩みがあり、それぞれが複雑に絡み合っているのがわかります。

ヒアリング結果のまとめ

ヒアリング結果をまとめると、従業員がメンタル不調に至るまでに、相談することに関して、下記の要因が強く影響を与えていると考えました。

上記の構造は、なるべくしてなっている、合理的に形成されているように思いました。この構造によって「会社内で相談すること」へのギャップが発生し、知らず知らずのうちに、メンタル不調や体調不良になってしまってしまう……。このように、何だか“合理的にギャップが発生していた”と気付いたのです。

新しい世界観に根ざした価値提供と課題

人の精神的な状況を想像すると、何かのキッカケで「モヤモヤ」が生まれ、ストレスとして蓄積され続けることで身体に影響を及ぼすまでのメンタル不調に陥るのではないでしょうか。

反対に言えば、「モヤモヤ」が発生した段階で、解消のためのサポートができれば状況が変わるのではないでしょうか。

ヒアリングの中で従業員はモヤモヤした気持ちが芽生えても、自身の状況について「大した問題ではない」と考え、相談できないパターンが多く見られました。また、誰かに相談したいと思っても「気軽に相談できる人がいない」といいます。

この構造を変える仕組みを作れば、何かしら状況に変化が生まれるのではないでしょうか。

2016年の厚生労働省の調査によると、「ストレスを実際に相談した」とした労働者のうち、ストレスが「解消された」労働者の割合は31.7%、「解消されなかったが、気が楽になった」という労働者の割合は60.3%となっています。この結果から、悩みが生まれた際に「誰かに話すだけで楽になる」と感じる人が多いと言えるでしょう。

「メンタル不調になる前に、誰かに相談することで、調子をよくしてもらって帰ってもらう」そんなサービスができないだろうか、と考えて作ったのがSmart相談室です。

「悩みを相談したいけど、できない」という構造を変えるために何ができるのか……。熟考を重ねた結果、「どんなことでも話していい、まずは話を聴くよ」という、気軽に相談できる窓口が設置されていたら、従業員のモヤモヤを解消できるのではないかという仮説にたどり着きました。

利害関係のない社外の専門家が相談窓口になることで、社内相談窓口担当の工数を削減し、働く方々のメンタルヘルス改善や離職率低下など、働く環境の改善に寄与します。

<著者プロフィール>

藤田康男
株式会社Smart相談室 代表取締役

医療系人材紹介会社にて10年間、複数事業の立ち上げや組織マネジメントに従事したのち、2021年2月に株式会社Smart相談室を設立。これまでのマネージメント経験から、従業員のメンタル不調に関して課題感を持ち、独自の視点から、課題に対するソリューション『Smart相談室』を提供中。日本の生産性を高め、社会に貢献したいと考えている。Smart相談室:https://smart-sou.co.jp/  Twitter:https://twitter.com/Yasuo_chan

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