フェラーリが「ウニベルソ・フェラーリ」と題した、ファンのためのイベントを開催しました。お金があってもなかなか買えないフェラーリ。お金があまりないファンも大切したいと、過去の“名車”から最新モデルまで集めて、一般向けにフェラーリワールドを広く見せてくれるというイベントです。
2019年にフェラーリ本社があるイタリア・マラネロで第1回が開催され好評を博した「ウニベルソ・フェラーリ」。
このイベントのミソは、「上顧客にしか公開してこなかった“内側”を、多くのファンに見てもらいたい」ところにあります。フェラーリのスポークスパーソンを務めるチーフ・マーケティング&コマーシャルオフィサーのエンリコ・ガリエラ氏は、そう教えてくれました。
コロナ禍のため間が空いたあと、第2回めの開催となった2022年11月26日から29日にかけての「ウニベルソ」。舞台は、豪州シドニーでした。英国的な伝統もあるのか、ぜいたくな雰囲気の競馬場内に新設された施設を使い、真っ赤な壁を特別に作り付け、わざわざ敷き詰めた赤いカーペットが来場者を場内へと導いてくれました。
■F1、クラシックモデル、限定生産車などが一同に。めくるめくフェラーリワールド
展示の概要お伝えすると、たしかに、多岐にわたっています。
最初の部屋はF1、つぎはクラシックフェラーリ、それから、一般人が参加できるレースで使うモデル、つぎに新型車の数かず、そして「テイラーメイド」というオーナーのためのカスタムメイド、そしてごく限定生産の高性能の「イコナ」シリーズというぐあい。めくるめくという感じで、展示ルームが続いていました。
私たちジャーナリストだって、SP2やSP3といった「イコナ」シリーズの実車など、じっくり見る機会は限られていますし、じっくりモータースポーツ計画を聞くことも頻繁ではありません。
365GTB/4デイトナ(1968年)やF40(87年)が中央に、壁には設計図などが並べられていたのは「クラシケ」の部屋。2006年に開設されたこのサービスは、「貴重な遺産」とフェラーリがするクラシックモデルのレストアがメイン。
かつて職人が作りあげた複雑なボディワークやメカニズムを復元してくれます。同時に、製造から20年以上を経過したフェラーリモデルに対して「公式認定書」を発行。きちんとメンテナンスを受けてきたモデルならば、「貴重な遺産」の仲間入りが出来るということです。
モータースポーツ活動は、フェラーリ社のもっとも重要な柱です。かつて、レース資金をかせぎだすためにクルマを売っていた、といわれるほどのフェラーリ。
ご存知のように、F1や、23年には「499P」を頂点カテゴリーのLMHクラスに参入させるというルマン24時間レースをはじめ、フェラーリのモータースポーツ活動は多岐にわたります。
■参加型プログラムも充実
顧客参加型のプログラムも充実しています。2005年に限られた顧客向けに始まったスペシャルモデルによる「XXプログラム」や、レースで戦ったF1マシンを販売してサーキット走行を楽しませる、フェラーリならではのものも。
日本では、23年に「フェラーリチャレンジジャパン」が開催されます。「488チャレンジEvo」を使ってより広い層を対象にしたレースで、4戦通して参戦も可能だし、スポット参戦もできるというもの。
レースはちょっとというオーナーには、トレーナーがついて、サーキット走行の楽しさを教えてくれるプログラムもあります。フェラーリといえば、本質はレース。そのコアは健在なのです。
「テイラーメイド」プログラムは、「車両のすべてのディテールを お客様のニーズに合わせてカスタマイズしていただける」とフェラーリが説明するサービス。「フェラーリのDNAと密接に結びついた3つのコレクション」(フェラーリのHP)と解説される「Scuderia」「Classica」「Inedita」が柱です。
聞き慣れない「イネディタ」は、スタイリング、カラー、マティリアルに「実験と技術革新の要素を導入した」とされるもの。イネディタとは「前例のない」という意味になります。
会場に置かれた1台が、「296GTB」を「スクーデリア」で仕上げたもの。ブルーのボディに、イエローのアクセントカラー。それにゼッケンがついていました。
「6」は、フィル・フィルとオリビエ・ジャンドビアンのドライブで1962年のルマン24時間レースで優勝した「330TRI/LM」へのオマージュだとか。
330TRI/LMは、フロントエンジン時代を最後の飾るすばらしいマシンでした。でっかいドライビングランプを埋め込んだエアインテークの迫力もそうとうなもの。
ただ、もしこのマシンへの思い入れを現代のフェラーリで表現するなら、本当はフロントエンジンの「812コンペティチオーネA」とかをベースにテイラーメイドしたほうがしっくりくるんでしょうけど。いろいろ考えられるのが、テイラーメイドプログラムの楽しさなのですね。
「イコナ」は、2018年に立ち上がったプログラムで、スペシャルなスタイリングと、スペシャルなメカニズムをもった、ごくわずかな限定モデル。
第1弾が「モンツァSP1」と「モンツァ SP2」。です。その際「最もアイコニックな歴代フェラーリ・モデルをモチーフとしつつ、時代を超越したそれらのスタイリングが現代の感覚に合うよう大胆に再解釈されたもの」というフェラーリの解説がついていました。
■新型車も惜しげなく。「プロサングエ」は初お目見え
「ウニベルソ」会場では、2021年に発表されて、こちらも大きな話題になったイコナ第2弾「デイトナSP3」も展示。「330P3」(1966年)をスタイリングのベースにしたといいますが、見どころはたんにスタイリングでありません。排気量6.5リッターのV12自然吸気エンジン搭載で、静止から時速100kmまでに到達するのに2.85秒しかからないそうです。
シドニーの人たちにとって、さらに最後の驚きというか喜びは、4ドア4人乗りの新型「プロサングエ」の初お目見えでした。私は、9月にマラネロ本社でのお披露目に立ち会いました。どこで見ても、かなりの迫力です。
「SUVという人もいますが、これはスポーツカーです」。本社からシドニーを訪れたエンリコ・ガリエラ氏はそう説明しました。
「いま発表されても、すでに将来までの生産ぶん、すべて売約済みって話ですが……」。プロサングエの記者会見時に、オーストラリアの記者が手をあげて、ガリエラ氏に質問しました。
「たしかに、プロサングエの割合はつねに、フェラーリモデルの生産台数中20パーセントに抑えますけど、そんなことはないですよ」。ガリエラ氏の答えです。会場の誰もが信じていない顔をしていました。手に入れることを誰もが熱望するプロサングエ。フェラーリってすごいんだな、とウニベルソであらためて思わされました。
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/496706/
- Source:&GP
- Author:&GP