本記事は、モノグサ株式会社 広報の中村大志氏によるインタビュー記事です。
モノグサ株式会社、広報の中村です。弊社が提供する記憶定着のための学習プラットフォーム「Monoxer」は、塾や学校を中心とした4,000教室以上で活用されています。
横浜にある中国語教室、waysChineseもMonoxerを活用していただいている組織の1つです。今回は❝使える中国語❞の学習法について、waysChinese 代表講師の李先生にお聞きしました。
授業で教わっただけでは「使える」ようにならない
李先生:中国の大学を卒業してから、日本語講師として4年間働き、日本の大学院教育研究科に入りました。日本に来てから日本の中国語教育に大きな課題を感じ、❝使える中国語❞を教えてみたいという想いからwaysChineseを開校することにしました。
——❝使える中国語❞とはどのようなところにポイントがあるのでしょうか?
李先生:❝使える中国語❞は、中国語を使って自由に会話ができる状態を目指します。一般的な中国語学習方法だと「授業で教わる」ということで終わってしまうケースが多いと思います。
しかし、❝使える中国語❞を習得するためには、中国語の講義を受けて、自己練習だけではなく、中国語のトレーニングを受けることが重要です。
せっかく先生に教えてもらったにもかかわらず、自分の努力不足のせいで話せないと思っている生徒さんがたくさんいます。実は、彼らはきちんとトレーニングを受けていないため、自分で練習することが難しいのです。
きちんとしたトレーニングを実施していないために、中国語を学んでも使えないままになってしまっている方も少なくないのではないのでしょうか。
——私も大学生の時、第二外国語で中国語を学習していたものの一切使えないので、耳の痛いお話です。トレーニングとはどのようなものなのでしょうか?
李先生:トレーニングには、生徒さんが「聞き取れるようになる」→「答えられるようになる」→「紹介できるようになる」→「質問できるようになる」→「別の場面で実践できるようになる」ための練習や確認が含まれます。
例えば、「他们去北京旅行(彼らは北京へ旅行に行く)」という文章を学習する時には、まず、イラストを見せて、意味を理解してもらいます。その上で最初は、「他们去北京(彼らは北京へ行く)」を聞き取れるようにします。
次に、「他们去哪里旅行?(彼らはどこに旅行へ行きますか?)」と聞かれた時に「北京」と中国語で答えられる状態を目指します。他们去北京做什么?(彼らは北京に何しに行きますか?)」と聞かれた時に「旅行」と中国語で答えられる状態を目指します。
そして、次に「谁去哪里旅行?(誰が北京に旅行へ行きますか?)」と聞かれた時に「他们(彼ら)」と中国語で答えられる状態を目指します。その後は、「他们去北京旅行。(彼らは北京へ旅行に行きます。)」と紹介できるようにします。
最後は別の場面で応用的にこの文章を実践できるようになると、一連のプロセスは習得したことになります。このトレーニングは非常に大事で、授業で先生が単語や文章を教えるだけでは、生徒さんが完全に理解できても、実際に活用することは難しいと思います。
——waysChineseでは授業で教えることに加えてこのトレーニングも実践しているのでしょうか?
李先生:そうですね。ネイティブの先生が「どの段階ができていて、どの段階ができていないのか」を把握した方が適切なトレーニングができるので、レッスンの中に組み込んでいます。
母語をベースとした学習法ではなく、ネイティブ方式で授業を展開
李先生:waysChineseでは、生徒さんに中国語脳を作ってもらうことを大切にしています。
日本語脳で中国語を習得することはもちろんできますが、いちいち中国語から日本語に訳さないといけないため、切り替えられるようになった方が速くアウトプットできると思います。
例えば、WindowsのシステムをMacで使うよりは、素直にWindowsで使った方が使いやすいですよね。その感覚に似ているのではないかなと思います。
——中国語脳を作るためにどのような授業をされているのですか?
李先生:他の言語を使わず、中国語で全部インプットする授業をしています。「りんご」を覚える時に、「りんご」ではなく、りんごのイラストや実物、おもちゃなどを見て覚えるようなイメージです。
特に初級の段階では、生徒さんに文字やピンインを最初に出すのではなく、音声で物を認識することが大切です。
waysChineseでは、一般的な教科書のテキストを見ながら授業することはしません。私たちの教材では、日本語は一切使わず、すべてイラストや図にして授業を展開しています。
教科書のテキスト内容をイラストのストーリーにしてイメージをしながら会話ができるようにしていくのがwaysChineseのやり方です。
もちろん、教科書のテキストを読みながら日本語の意味と中国語の意味を併せて覚えていくという方法も効果はありますが、ネイティブ方式の方が外国語学習者、特に忙しい社会人が❝使える中国語❞を習得する上では効率的なのではないかと考えています。
以前、教科書のテキストを使って教えていたこともありました。この時、確かに生徒さんは試験で高得点はとれるのですが、会話がうまくできませんでした。
テストの成績は高得点にもかかわらず、簡単な言葉でも会話ができない生徒さんを目の当たりにしたことがネイティブ方式にした大きなきっかけです。
waysChineseに通う生徒さんは社会人の方が多いので、限られた時間で勉強しなければなりません。それを考えると赤ちゃんが言語を覚えるようなプロセスで習得するネイティブ方式が良いと思い、会話の習得においては最短距離でできると感じています。
——シンプルな会話だとイラストや写真だけのネイティブ方式でもできるのかもしれませんが、「日本の少子化をどう考えますか?」のような中上級レベルの意見を述べる方法でもネイティブ方式は使えるのでしょうか?
李先生:意見を述べる問題は、中国語だけの問題ではなく、日本語でも難しいと思われます。waysChineseの授業では、生徒さんが自分の意見をしっかりと表現できるように、以下のような進め方をしています。
先生:日本の少子化問題について言いたいポイントを、文章ではなく簡単な単語やフレーズで考えましょう!
生徒:(簡単な単語やフレーズを用いて、ポイントを答える)
先生:どんな問題がありますか?どのような取り組みが必要ですか?
生徒:労働力不足や財政難など問題を引き起こす。解決に向けた取り組みは、子育ての支援や働き方改革など。
先生:どうして?どのように?もっと詳しく……
このように質問を投げかけて、生徒さんに自分の意見をより詳しく説明してもらいます。生徒さんが表現できない部分があれば、その場で教えます。その後、生徒さんはまとめを作成し、自分の意見を述べる練習をします。
また、初級の段階では、基礎の定着が非常に大切です。基礎がおろそかな状態では、抽象的な質問や意見を述べることはできません。基礎については、どれだけみっちりやってもやりすぎることがないくらい大切だと思っています。
——そのようなネイティブ式授業の中で「Monoxer」はどのように役立っているのでしょうか?
李先生:授業の中で扱った会話や文章を定着させることはとても重要です。生徒さんにはMonoxerを活用して、授業で学んだ単語や会話を復習してもらっています。
MonoxerのAIによる難易度調整機能によって、生徒さんは無理なく記憶定着することが可能になっています。生徒さんが、数日経った後に「今日何を勉強したっけな?」と忘れられることを防ぐことができます。
——他に中国語を学ぶ上で大切なポイントはありますか?
李先生:中国語においては特に、発音の悪い音声で学習を絶対にしないでください。
——なぜでしょうか?
李先生:中国語と日本語の音節の違いです。音節は簡単に言うと、言語において発音される最小単位の音です。主に「子音」+「母音」で構成されています。
日本語で言うと「あいうえお、かきくけこ…」などの五十音が一音節にあたります。日本語は濁音や半濁音を加えると、大体100音節程度と言われる中で、中国語は約16倍の約1600音節あります。
日本人が今持っている発音方法では、これらの音を作り出すことができないことから、日本人がよく話すカタカナ英語のようなカタカナ中国語は全く通じないことがあります。
中国語は、発声を間違えると意味が全く違うように伝わってしまう言語なので、発音が非常に重要です。
また、正しい発音を聞かずにいきなり教科書などの聞いたことがない中国語を読むことも控えた方が良いと思います。
「何回か繰り返し聞いた上で、発音してみる」→「ネイティブチェック」→「修正・改善」というサイクルを繰り返していくことがおすすめです。
——映画を観て中国語を学ぶのはいかがでしょうか?
李先生:中上級レベルの方は映画で学習するのも良いと思いますが、初級者には難しいのであまり映画はおすすめしません。私のおすすめは「ストーリー練習法」です。
——「ストーリー練習法」とは?
李先生:対話形式の文章のストーリーを徹底的に中国語で叩き込んでいく学習法です。
中国語会話のテキストには会話文が載っていると思いますが、1つの会話文を「リピーティング」「シャードイング」「スピードアップ」という3段階の練習法で徹底的に習得すると良いでしょう。
「リピーティング」とは、先生やテキストの音声を聞いた後、その音声を真似して繰り返し発声することです。
「シャドーイング」は、聞いている中国語音声のすぐ後を追って復唱する勉強方法です。音声を聞き終わってからではなく、流れている音声を追いかけるように発音しましょう。
ここまで完璧にできたら「スピードアップ」です。同じ文章を限界まで早く読めるようにすることは中国語習得においても有効です。
その上で、最終的にはその会話文を3つの立場から紹介できるようになればマスターしたと言えるでしょう。
——3つの立場とは?
李先生:主人公A、主人公B、第三者の3つの立場です。それぞれの立場で会話文の紹介ができるようになれば完璧です。
例えば「女性は男性の家に遊びに行った帰りに雨が降った。そこで男性が車で送ろうとしたが、女性はタクシーで帰った」という文章は第三者の立場で説明されています。
これが女性の立場では、「私が男性の家に遊びに行った帰りに雨が降った。彼は送ってくれると言ったが断ってタクシーで帰ることにした。」となります。
男性の立場では、「家に女性が遊びに来て、帰りに雨が降った。私は女性を車で家まで送りたかったが、断られて女性はタクシーで帰った。」と説明の方法が変わると思います。
それぞれの立場から中国語で説明できるようになれば、そのシーンの会話文はマスターしたと言えるでしょう。様々な会話文でこれができるようになれば、中国語力がどんどん高まると思います。
——ありがとうございます。最後に中国語はすぐに習得するのは難しいと思うので、継続的に勉強できるようにモチベーションを保つ方法を教えてください。
李先生:継続的に言語学習を進めるためには、正しいトレーニングを受けて、言語能力を着実に高めることが大切です。一歩一歩進んでいく中で達成感を感じることができれば、モチベーションにつながると思います。
しかし、勉強量が多くても定着しない場合は、正しい勉強方法を知らないことが原因かもしれません。
進歩を実感できないと学習のモチベーションが下がってしまうことがあります。そんな時には、改めて中華圏の人や文化・社会に触れてみるのが良いかもしれません。
中華圏への興味の度合いが大きければ大きいほど、中国語を学ぼうとする意欲は増していきます。継続することは非常に大切なので、自分なりのモチベーション管理法を見つけることが重要です。
<インタビュイープロフィール>
李 肖楠
中国語教室waysChinese 代表講師横浜国立大学大学院教育研究科修士課程修了。waysChineseを0から立ち上げ、2019年より中国語教室「waysChinese」代表講師を務める。10年間の講師経験を経て、1,000人以上を指導。「総合トレーニングコース」を開発し、AIアプリも活用したハイブリッド教育のデザインも実践。
<著者プロフィール>
中村 大志
モノグサ株式会社 広報2013年新卒で株式会社マイナビ入社。求人広告の営業に従事した後、2015年より食品・ヘルスケア専門のPRエージェンシーに入社して食品やサプリメントなどの商材のPR業務に従事。2020年にモノグサ株式会社へ1人目の広報担当として入社後、自社と提供しているプロダクト「Monoxer」の認知向上と支持者の増加に向けて、PR活動を担当している。
- Original:https://techable.jp/archives/203993
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:はるか礒部