1958年に初代モデルが登場し、60年以上の歴史と1億台を超える累計販売台数を誇るホンダの「スーパーカブ」シリーズ。かつては原付一種(50cc)のイメージが強かったのですが、近年は原付二種クラスが支持を集めており、「CT125・ハンターカブ」や「クロスカブ110」など人気のバリエーションモデルも揃っています。
そして、実は同シリーズの原付二種モデルは、昨年に新型エンジンを搭載するなど大きくブラッシュアップされています。進化した「スーパーカブ110」と「CT125・ハンターカブ」、そして「クロスカブ110」にそれぞれ試乗する機会があったので、どんな違いがあり、どのモデルがどんな人におすすめか、比較の上で解説します。
■ディスクブレーキになって性能アップした「スーパーカブ110」
現行のスーパーカブシリーズのスタンダードといえるのが「スーパーカブ110」。ルックスは歴代シリーズの血統を強く感じさせるものですが、前後ともキャストホイールとなり、フロントはディスクブレーキとなっています。現代のバイクらしく、もちろんABSも装備。というより、ABS装備を義務付ける規制に対応するため、ディスクホイールを採用してディスクブレーキ化されたという流れです。
エンジンは、現行モデルから新設計のロングストローク型が採用されています。これによって、最高出力は8.0PSと先代モデルと変わらないものの、最大トルクは8.5Nmから8.8Nmへと向上しました。実際に乗ってみても、低中回転域でのトルクがアップしているので街乗りがよりラクに。特に登り坂などで、従来ならシフトダウンしたくなっていたところでも、アクセルを少し大きく開けるだけでスムーズに登れるようになっています。
新型モデルとなって、最も進化が感じられるのは足回り。剛性の高いキャストホイールとなったことで、路面との接地感がリアルに感じ取れるようになりました。ブレーキも制動力がアップしたことで安心感がアップ。また、コントロール性も高くなったので、ブレーキでフロントの荷重をコントロールすることもできるようになっています。
「スーパーカブ110」は2009年以降、フロントフォークがテレスコピックタイプとなり、走行感が大きくアップしましたが、今回のディスクブレーキ化でもそれに匹敵するくらい性能が向上しています。サスペンションは柔らかめのセッティングで、車重も101kgと軽く、街乗りに向いた設計。
今回比較する3車種の中では、最も街乗りが快適なモデルといえます。進化しているにも関わらず、価格が30万2500円とリーズナブルなのも魅力でしょう。
■細部がブラッシュアップされた「CT125・ハンターカブ」
近年のバイク人気を牽引する存在でもある「CT125・ハンターカブ」。大きめの荷台を持ち、キャンプ道具などを積み込んでツーリングに出掛けるのに適しているだけでなく、足回りには剛性が高いものを採用し、未舗装路も難なく走れてしまうのが人気のポイントです。2022年型からは、ロングストローク型の新型エンジンを採用し、細部がブラッシュアップされるなど魅力をさらに増しています。
新型のエンジンとなったことで、最高出力は8.8PSから9.1PSにアップ。発生回転数も7000rpmから6250rpmに下げられました。最大トルクは11Nmと変わっていませんが、排気量が123ccと大きいので、3車種の中では最もパワフル。ほかにも、リアサスペンションがプリロード調整可能なものになり、2人乗りや多くの荷物を積んで出掛ける人にとってはありがたい進化を遂げています。
乗ってみると、ロングストローク型のエンジンとなった点はほかのモデルと変わらないものの、低速トルクよりも中回転域でのパワーアップが強く印象に残ります。幹線道路などでアクセルを開け足していったときに、加速の伸びがより感じられるように。車重は118kgと3車種の中で最も重いのですが、それをものともしないパワフルさです。
足回りも、剛性感が一番高く、ビジネスバイクというより普通のバイクと同じような感覚で乗れるのも大きな魅力。オフロードでの走破性も高いので、林道ツーリングなどにも出掛けられます。週末のツーリングを重視して選ぶなら、最も魅力的なモデルでしょう。気になるのは44万円と3車の中では最も高い価格と、800mmと高めのシート高くらいでしょうか。
■最も進化の恩恵が感じられる「クロスカブ110」
「クロスカブ110」も、2022年のモデルチェンジで新型エンジンを搭載し、前後ホイールがキャストタイプとなりました。ディスクブレーキ化された点も「スーパーカブ110」と同じですが、よくみるとキャリパーが片押し2ピストンとなっています(「スーパーカブ110」は1ピストン)。また、サスペンションのストロークも伸びていて、シート高は「スーパーカブ110」の738mmに対して、「クロスカブ110」は784mmと違いがあります。
新型のエンジンは「スーパーカブ110」と全く同じスペック。車重は107kgと3車の中間的な値となっています。見た目にはレッグシールドがなく、丸目ライトの周囲にパイプを配置したややSUV的なデザイン。マフラーは「CT125・ハンターカブ」のようなアップタイプではなく、下側を取り回されていますが、ヒートガードに穴開け加工が施され、ややワイルドなルックスです。キャリアは「スーパーカブ110」と同じくコンパクトなものになります。
走行してみて、モデルチェンジによる進化が最も感じられたのが、このモデルでした。先代のモデルは「CT125・ハンターカブ」と比較すると非力に感じたものですが、ロングストロークエンジンとなったことで数値以上にトルクアップが体感でき、登り坂や抵抗の大きい未舗装路でもシフトダウンをすることなく、グイグイ加速できます。
ストロークが長めに取られたサスペンションはダンピングも効いていて、新採用のキャストホイールと相まって普通のバイクに乗っているようなフィーリング。制動力とコントロール性のアップしたディスクブレーキで、フロントの荷重をコントロールしながらワインディングも楽しめます。それでいて、価格は37万4000円。性能向上に対して、価格アップを最小限に抑えているので、コストパフォーマンスは最も高いという印象でした。
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同じ原付二種のシリーズモデルでありながら、乗り比べてみるとそれぞれに印象が異なる3車種。特に「クロスカブ110」の性能アップが大きく、「CT125・ハンターカブ」との性能差がかなり縮まっているので、街乗りだけでなくツーリングを楽しみたい人にも勧められるバイクになっていました。ただ、“これぞカブ”という歴史あるスタイリングを継承している「スーパーカブ110」の魅力アップも見逃せないところ。3車種それぞれに魅力があるので、好みと使い方に合わせて選んでください。
<取材・文/増谷茂樹>
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/540208/
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