【達人のプラモ術】
イタレリ
「1/4トン 4WDオフロードトラック」
03/04
前回は、今回のキットを作る上で設定した「米軍払い下げの中古ウィリスMBを自分で塗り変えちゃいました」に合わせて、くすんだライトブルーに塗装しました。そして今回はさらにウエザリング(汚し塗装)を加えて、いかにも使い込まれたボロジープに仕上げていきます。(全4回の3回目/1回目、2回目)
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube「
モデルアート公式チャンネル」でもレビューを配信中。
■ウェザリング塗装とは?
模型を製作する際、インストの指定どおり製作し塗装した状態だと見た目の実感に欠ける場合があります
特にミリタリーモデルでは、戦場で使い込まれた車両の錆や泥汚れ、オイルや排気で煤けたエンジン等の質感を塗装で再現することで、重量感やリアルな存在感を表現できます。
一般的にカーモデルだとピカピカに仕上げるのがセオリーで、汚し塗装は少数派となりますが、例えばラリーカーなどでのオフロード走行で泥にまみれた車体の再現が、カーモデルにおけるウェザリング塗装と言えるでしょう。
そして今回のウィリスジープでは「払い下げのオンボロ中古車をサーファーでもあるオーナーがリペイント。掃除もメンテナンスもなしで乗っている」という設定なので、ミリタリーモデルだけれどカーモデルでもあるといった塗装とウェザリングを施しています。
ましてやウィリスMBは元祖オフロード4×4ですから、民生仕様にしてもウェザリング塗装はよく似合います。
■ウェザリング塗装は楽しい…しかし奥は深い!
近年は、泥の表現、あるいは錆の質感再現、退色感を表現する塗料や、塗料が剥げて下地が露出した状態を再現するチッピング液など、ウェザリング塗装用の塗料やテクスチャーが国内外のメーカーから数多く発売されていて、それはもうものすごく充実しています。
例えば泥ひとつとっても『東部戦線泥セット』といったピンポイントなアイテム(東部戦線と西部戦線では泥の色が違うのだそうです…)もあり、汚し塗装とは奥の深い世界なのだと痛感してしまいます。
こうしたテクスチャーや塗料を使用することで、ディープでリアルな汚し塗装を再現できるワケですが、今回はビギナーでも簡単にウェザリングを楽しめるベーシックなアイテムでウィリスMBを仕上げてみました。
■まずは車体を完成させる
前回、ライトブルーであえてムラを残して仕上げたボディに、エンジンを搭載したフレームを合体。可倒式のウインドシールドにはクリアパーツを接着し、メータパネルやサイドマーカー等の細部塗装を施して組み上げます。本来のミリタリー仕様では車体左側にスコップと斧を装備し、車体後部にジェリ缶(ガソリン缶)を搭載していますが、サーファー仕様という事であえて取り付けていません。
装備品の取り付けの是非は好みで良いと思いますが、戦場じゃないから流石に斧はマズイでしょうねぇ。バックミラーも本来なら左右に必要なはずですが、今回は雰囲気重視でキットオリジナルの運転席側のみとしています(よく見たらウインカーもないな…)。
■ステッカーチューンで60年代を演出
完成した車したライトブルーのウィルスMB。こういう仕様もも悪くないな思いつつ、もうひとつヒネリを効かせたいとも思いまして。手持ちのカーモデル用デカールから、いかにも60年代風のクルマに貼られていたであろうステッカー、“ダンロップ”とか“チャンピオンプラグ”とか、“モービル1エンジンオイル”といったロゴのデカールを車体各部に貼ってみました。
ボンネットサイドにはライトメーカーの“CIBIE”を貼ったけれど、ホントは猫の顔で当時人気だった“マーシャル”にしたかったな…。
デカールを貼りながら、69年にテレビで大人気を博した『丸善ガソリン100ダッシュ』の小川ローザのCMを思い出したりしたんだけれど…、今の人は知らないだろうなぁ。
さておき、懐かし系のステッカーデカールを貼ったことで、60年代に走っていたよね感がアップしたと思います。
1/24旧車用のステッカーデカールは、現在なかなか入手が難しいかもしれません。画像データはネット上に豊富にあるので、自作デカールで再現もありだと思います。
■ウェザリングパステルとスミ入れ塗料を使った汚し塗装
車体のデカールが乾燥したら、いよいよ汚しを入れていきます。今回使用したのはMr.ホビーの「ウェザリングパステルセット」とタミヤの「スミ入れ塗料」3色、「リアルタッチマーカー」の3アイテムです。
ウェザリングパステルは、パステルの微粉末で、錆の表現に“ラストオレンジ”、煤や排気汚れの再現に“チャコールブラック”、ホコリっぽい汚れに“ライトグレー”を使います。使用方法はそのまま、あるいは水性アクリル塗料のつや消しクリアーで溶いて使用します。
タミヤスミ入れ塗料はエナメル塗料なので、ウォッシング塗装(※1)の際にも、車体の塗装に使用しているラッカー塗料を侵しません。なので車体全体のウォッシング、ウェザリングパステルと併用して、錆やエンジン周りの煤汚れの再現に使っています。
(※1)ウォッシング塗装
ウェザリング塗装に、ウォッシングという技法があります。ウォッシング(washing)とは洗浄、洗うという意味ですが、ウェザリングの場合は、塗装面全体に薄めたエナメル塗料を塗り込んでから、エナメル溶剤で洗う(拭き取る)技法のことを言います(※水性アクリル塗料で塗装している場合、エナメル塗料でのウォッシングは不可。またエナメル塗料はABS素材を侵すので同じく使用できない)。
■ウェザリング実践
作業はまずスミ入れ塗料のダークブラウンで車体全体をウォシング。この際にスミ入れ塗料は攪拌せず、あえて上澄みを使うのがポイントです。攪拌してしまうと濃くなりすぎるので後の拭き取りが大変になってしまいます。
乾燥後にエナメル溶剤を含ませた綿棒でダークブラウンをふき取っていきますが、パーツの凹凸部部には塗料が残るので、立体感が強調され、またダークブラウンを使ったことで土の汚れ感が出てきます。
ウェザリングパステルは水性アクリルのつや消しクリアーで溶いたものを面相筆で塗布します。ラストオレンジをボルトや溶接部分に塗ることで、赤錆が表現できます。濃い目に溶いたものを塗るとサビでグズグズになった感じも表現できますよ。
エキゾースト周りはチャコールブラックを溶いたものを使い、煤けた感じを再現します。同時にエンジン全体はスミ入れ塗料のブラウンでウォッシングすることでオイルの汚れ感が出せます。
タイヤにはウェザリングパステルのライトグレーを粉のまま塗布して、ホコリっぽい褪せた感じを表現できます。ただし粉のままのウェザリングパステルは定着しないので、軽く艶消しクリアーでオーバーコートしておく必要があります。
最後にリアルタッチマーカーのグレー3(黒)を使い、塗装が剥げたチッピング(※2)を描き入れていきます。チッピングは均一にならないようにランダムな傷、」スクラッチ状の傷を表現できます。工事現場のブルドーザーやトラックの汚れや塗装のハゲチョロが参考になりますよ。
(※2)チッピング
チッピングは「欠ける」という意味。模型のウェザリング塗装では硬いものぶつかったり、擦れたことで塗装が剥げて下地塗装や金属地肌が露出してしまった状態を再現した塗装のこと。
■ウェザリングを失敗しないコツ
ウェザリングを施すことで作品のイメージは大きく変わるので、楽しいディテールアップ塗装といえます。実際作業でもウェザリングを進めると作品の表情がみるみる変わっていくので、ついついもう少し、もうちょっと汚すか〜となるのですが、気をつけないといけないのが汚し過ぎです。
気がついたらウェザリングをやり過ぎて、スクラップ見たいな仕上がりになってしまった…なんてことがままあります(経験者)。なのでウェザリングはどういうシチュエーションで仕上げるかなど、しっかりした目標をもって作業を進めること。そして「う〜んこんなもんかな」と全体のバランスを見ながら控えめな仕上げがちょうど良い塩梅になると思います。
* * *
ということで、ウェザリング塗装が完了、オンボロウィリスMBが完成しました。
次回はこれにサーフボードを積んで60年代サーファー仕様に仕上げていきましょう。さらにせっかくなので簡単なベースを制作、以前紹介したポルコロッソやブガッティ100Pのようなビネットとして仕上げようと考えています。
さてロングボードをどんなデザインで塗りましょう? 次回、ウィリスMB60sサーファー仕様 完成編をお楽しみに!
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/555431/
- Source:&GP
- Author:&GP