【欲しくなるコーヒー道具 #02】
コーヒー道具ってこだわりだすとキリがない。「おいしいコーヒーを家でも飲みたいだけ」なんて言いつつ買い揃えていった道具類が、なぜか不思議とキッチンのいいアクセントになったり。そこにあるだけで満足感があり、ちゃんと使いこなせば“おいしさ”で応えてくれる、そんなコーヒー道具をお試し!
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この秋、コーヒー界隈を賑わせているのが、CAFEC(カフェック)の「フラワードリッパー DEEP27」(1320円)。9月1日の発売以降、コーヒー系YouTuberやブロガーがこぞってこのドリッパーを取り上げていて、そりゃーもう気になりまくってます。
そして「DEEP27」発売日から遡ること約1カ月。7月末に発売されたのが「コニカル30 シングル コーヒードリッパー 1杯用 “Tarachine(たらちね)”」(990円)。なんとこのふたつ、似たようなカタチをしているんです。
どちらも鋭角の円錐形という形状で「1杯分の少ない粉量でもおいしくコーヒーを淹れられること」を目指して作られたものです。
近いタイミングで発売されたのは本当に偶然とのことですが、話題の製品だけあり、やっぱり試してみたくなりますよね。先日ポチったところ、ようやく届いたので、さっそく使ってみました。
■同じようでよく見ると違いがいっぱい
まずは並べてカタチを確認。
角度は「たらちね」が30度、「DEEP27」が27度。いやー鋭い!
底部の穴の大きさは、どちらも大きめ。適当にドバドバお湯を落とすと、あっという間に抽出が終わりそうな予感。
そして、この手のドリッパーでコーヒーを抽出するにあたり必要になるのがペーパーフィルターです。おそらくですが、これまでのドリッパーのほとんどが台形と円錐形の2種類なのは、フィルターも関係していると思われます。
フィルターは消耗品。一度使うとおしまいで、日々減っていくため、定期的に購入することになります。そうなると、買いやすいことも重要になってきます。以前はスーパーに置いてあるのは台形フィルターばかりで、円錐形はなかなか見かけなかったのですが、最近は取り扱っているところが増えましたね。
そして円錐形のフィルターは、HARIOの「V60」に合わせてか60度の扇形がほとんど。この“60度”がポイントになります。
「DEEP27」の角度は27度。そのためCAFECでは専用フィルターも同時発売しました。
実はCAFEC、以前より独自のペーパーフィルターを開発し発売しています。木材の4倍の強度を持つというマニラ麻(アバカ)が使われていて、やわらかく触り心地のいいフィルターで、「DEEP27」用のフィルターにもこのアバカが使われています。
使い方はいわゆる円錐形フィルターと同じです。
接着部分に沿って折るだけ。これで開けばOK。
一方の「たらちね」ですが、こちらは角度が30度。ということは60度の半分ですよね。なので、円錐形ドリッパー用である60度のペーパーフィルターを半分に折って使えるというわけです。
パッケージにも「一般的な60度ペーパーフィルターを使う場合」という説明が書かれています。それによると「フィルターを半分に折り、ステッチ(接着部)がない方を広げてドリッパーにセット」となっています。
たしかにキレイに収まりますが、片側は1枚でもう片側は3枚重なっています。これ、お湯の落ち方に影響しないのかが気になります。
ちなみに「たらちね」の台座部分には三角形の覗き穴が2カ所開いています。どのぐらい落としたか見て確認できるのはありがたいですね。
さて、それぞれのドリッパーがどういうモノなのかを確認できました。でもいちばん大事なのは、どんな味になるのか。では同じ豆、湯温、湯量で抽出してみましょう。
■これ同じコーヒー豆なの!?
今回用意したコーヒー豆は、スターバックスの「ハウスブレンド」(1320円)。スタバの定番ともいえる豆です。酸味もコクも真ん中となっていますが、元々スタバの豆は深煎り傾向。開けて豆を確認すると、かなりオイルが出ています。
久々に買った豆なので、味を確認する意味で、いつも使っているHARIOの「V60透過ドリッパー01クリア(1~2杯用)」(実勢価格:500円前後)でも同じ条件で淹れてみることにします。
3つ並べてみると、高さも角度も違いますね。
豆の量は12g。これを少し粗目に挽いて、90度のお湯を180ml落としてみます。
挽いた豆をフィルターに入れてみて思ったんですが、粉の最上部、見えている面積が明らかに違います。
ハンドドリップするときの注湯方法としてよく言わるのが「中央の500円玉ぐらいの範囲に「の」の字を描くように細くお湯を注いでいく」というもの。でも「DEEP27」も「たらちね」も見えている範囲が500円玉よりほんのちょい広いぐらい。
はてさて、どうお湯を注げばいいのか。
「DEEP27」は、CAFECのサイトに抽出している動画(YouTube)があったので、それを参考に、「全体を湿らせ、蒸らしたら、中心に少しずつ何度も注湯」でやってみます。
「たらちね」はパッケージに書いてある「30mlで全体を湿らせ20秒蒸らしたら、中央にひと筋で約80ml注湯し、最後に残りの量(今回は70ml)を注湯」でいきます。
まずは、いつも使っている「V60」から。
いつもの自分の淹れ方です。1杯分の粉量だと表面積が小さく粉の深さも浅いので、気をつかいますね。いつもは15~18gの粉でたくさん抽出するので気付かなかったのですが、粗目に挽いた粉だとお湯の通るスピードが速いため、注意が必要。しっかり粉にお湯をまとわせてコーヒー成分を抽出させるためには、お湯を細くゆっくりめに落とさないといけないかも。
次は「DEEP27」。「V60」と比べて見えている粉の面積が小さいため、最初にフィルターギリギリまでお湯を当てるのに気を遣いましたが、そのあとは中央に細く落としていくだけなので、さほど難しくないかも。そして横から見ると分かるんですが、粉の深さが「V60」の倍ぐらい違います。これなら中央にお湯を落とすだけで、しっかり全体に回ってくれるだろうなという気がします。
最後は「たらちね」。こちらもさほど気をつかうことなく落とせました。リブに沿ってお湯がクルクルと回りながら下に落ちていく様子がよくわかります。フィルターをセットする時に気になった、半分だけ3枚重ねについては、抽出時はあまり気になりませんでした。
では、それぞれの味をチェックしてみましょう。
▼HARIO「V60」
スターバックスの顔である「ハウスブレンド」だけあり、酸味を抑え苦味を出しつつもスモーキーさがあり、かつ後味にほんのり甘さを感じさせるバランスの良さがそのまま出ている。
▼CAFEC「DEEP27」
ひと口めから感じるまろやかな味わい。同じ豆でもこんなに違うのかと驚き。ブレンドらしいバランスの良さはしっかり表現しつつ、苦味を抑え、豆の持つ本来の甘さや酸味も嫌らしくなく感じさせてくれる。これはペーパーフィルターも大きく影響しているかも。
▼「たらちね」
苦味強めでコクもしっかり出ている、ワイルドな仕上がり。甘さや酸味は抑えめというより、ほぼ感じられなくなった。これは冷めたあとも同じ。同じHARIOのペーパーながら「V60」よりも個性的な味になっているのは、お湯が落ちるスピードの違いがあるのかも。
すべて同じ条件ながら、これほど味に違いが出るとは思いませんでした。そして「DEEP27」のおいしさにはちょっと感動。おそらく浅~中煎りのスペシャルティコーヒーならばまた違った結果になったのかもしれません。ですが、誰もが入手しやすく、価格もほどほどのチェーン系ショップの深め&焙煎後時間が経ってしまったコーヒー豆だと、ドリッパー次第でこれだけ変わるということが分かったのが最大の収穫でした。
ただし「DEEP27」は、ペーパーフィルターの入手難易度が高いことが唯一のウィークポイント。とはいえネットを使えばいいわけだし、抽出もさほど難しくない。おそらくハンドドリップビギナーでもおいしいコーヒーを淹れられるドリッパーなんじゃないかなと感じました。「たらちね」も発想は同じなのですが、抽出したコーヒーの味は大きく異なります。こちらはスペシャルティコーヒーで使った時が楽しみかも。
どちらも、ドリップのレシピ次第で大きく味が変わる円錐形ドリッパー。毎日使って、自分なりの淹れ方を見つけるという楽しみもありそう。150~180mlぐらいで十分という人は一度使ってみてはいかがでしょうか。
ちなみに「DEEP27」は11月5日現在でもまだ予約受付中&順次発送となっていますが、さほど時間もかからなそうですよ。
>> 欲しくなるコーヒー道具
<取材・文/円道秀和(&GP)>
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/566789/
- Source:&GP
- Author:&GP