【男前マルチツールの世界】
マルチツール。それは、手に収まるほどのコンパクトなボディにさまざまな道具を詰め込んだ“ハンドツール”とかく専用ツールに比べ「間に合わせ」と思われがちですが、そこにはマルチツールだからこそ味わえる奥深い世界が存在します。
男前なマルチツールの魅力を紹介する連載第42回は、ROGAN「MUTT Compact」(実勢価格:8000円)です。
目的に応じたツールを常に所持するのは理想です。それが当たり前と思っているとお金がいくらあっても足りませんし、所持するツールも無限に増えてしまいます。目的に応じたツールを揃えてキャンプやアクティビティに出かけることは楽しいですが、身ひとつで行かなければならない時は、ラフに使えるツールがひとつあると便利です。
■メイドインUSAの無骨なアイテム
ROGANは現役のアメリカ海兵隊EOD(爆発物処理班)の要望で作られたマルチツールのブランドです。それまで現場では銃剣を使用していましたが、想定外にラフに使われるシーンではすぐに駄目になり、本来の目的で使えなくなってしまったそうです。薪を割り、土を掘り、扉のこじ開け、ペグの打ち込みなどができる刃物ではないツールが求められました。その答えがこの一見ただの鉄の板だったのです。
全長165mm、幅27mm、厚み4mm。素材は炭素鋼材。特に特殊な鋼材ではなさそうです。重さは約114g。サイズ、重さとも9cmブレードのナイフと同程度だと思います。先端と片側がベベル状の加工がされていますが刃は付いていません。
ナイフやナタを充てて打ち込んで薪割りをするバトニングですが、ROGAN「MUTT Compact」でも問題なく行えました。刃物、特にナイフでバトニングすることは便利で手軽な反面、刃を痛める可能性があります。どんなに強靭な素材であっても刃が欠ける可能性はあります。ただ薪を割るだけであれば切れる刃は必要ありません。
傷んだ木柄からクサビを抜いて先端部を抜くなどのラフな使い方もできます。ナイフの先端でもできなくはないのですが、したくないですよでよね? ナイフは可能な限り切る仕事に専念させたいのです。
スコップがあればそれで良い。しかし、持っていなかったら何で掘るのか? ナイフでも掘れますが、石や砂礫がある地面では刃が欠ける可能性がある。やはりナイフは使いたくない。そんな時にも使えます。
丈夫な炭素鋼材なので、金属の切断、突貫力に優れます。蚤(ノミ)を使うようにエンドの部分をハンマーで叩けば、薄い金属であれば穴を開けることも可能です。こんなラフな使い方もできるわけです。
切るんじゃない、叩き切るんだ! 実際に使用すると痛快です。ツールをラフに扱うことは好ましいことではないと思う人もいるかもしれませんが、このツールに限って言えば、どれだけラフに扱えるか試したくなります。
全長は16cm程度なので携帯性は充分。刃が付いておらず安全なのでユーザーは様々な心配をすることなく扱えます。これは結構重要なファクターだと思っています。
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このアイテムの特徴はいずれもナイフで代用可能なものばかり。しかし、逆に考えてほしい。ナイフは切ることを目的にしたツールです。それ以外のラフな仕事はこんなツールに任せてもいいのではないでしょうか。無骨で頑丈、ただそれだけ。これぞ男前なマルチツールです。
<取材・文/GOL>
GOL|現在、東京近郊の山村と都会で二拠点生活をしています。ライター業がメインですが、地方の魅力発信にも力を入れています。実地でのレビューがしやすい環境を活かしてアイテムを紹介していきます。
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/579345/
- Source:&GP
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