過去にはゲームのNPC(ノンプレイヤーキャラクター)といえば、何度話しかけても同じセリフを繰り返すのがお決まり。プレイヤーキャラクターに家探しされようと、テーブルの上に土足で上がられようと怒ることもないのが普通だった。ところが近年、NPCを個性と深みのある人物として生き生きと描写し、ゲーム世界のリアリティを高めようという動きがある。その手段の一つが、生成AIによるキャラクター作成だ。
昨年12月、NPC作成ツールのスタートアップInworld AIが、生成AIを用いたNPC作成ツールをパワーアップさせた。同社はその前月11月に、マイクロソフトのXboxとのパートナー契約を取り付けたことで話題になった企業だ。日本では電通グループが10月に出資を行っている。
生成AI活用のNPC作成ツールをデベロッパー向けに提供
Inworld AI公式サイトより引用
トレーニングおよびデプロイなど、生成AIを動かすうえで必要になるのが半導体。Inworld AIは、大手半導体サプライヤーNVIDIA社が展開する「NVIDIA Inceptionプログラム」のメンバーとして、開発全体にわたってサポートを受けている。
昨年末にアップグレードされたのは、「Character Engine」に搭載されている「Character Brain」と「Contextual Mesh」という機能だ。NPCの設定に生成AIの機械学習を使って、より細かく、より個性的なキャラクターに仕上げていける。これらの機能を使うことで、ゲームに登場するNPCたちの、リアルでダイナミックな演出が期待できるわけだ。
「Character Brain」ではキャラクターの人物像を徹底追及
Inworld AI公式サイトより引用
音声、会話、外観、役割、性格、感情など、どんな人物なのか(NPCは人間とは限らず、動物や物体かもしれないが)、詳細を設定しながら最終的なイメージに近づけていく。
Inworld AI公式サイトより引用
例えば「悲しみ、怒り、嫌悪、期待」など18種の感情から選択可能で、感情の度合いも8段階で設定できる。
Inworld AI公式サイトより引用
セーフティ設定で酒・薬物・暴力などへの反応をインプット
もう1つアップグレードされた機能が「Contextual Mesh」だ。ここでの「Contextual」とは「慣習的な・常識的な」ほどの意味で、「Mesh」とは網目でふるいにかけることを指す。キャラクターの行動や言動を様々な角度からふるいにかけて、特定していくことができる。
Contextual Meshで設定可能な項目は「Configurable Safety」(設定可能セーフティ)、「Knowledge」(知識)、「Player Profiles」(プレイヤーキャラクターの各種属性)、「Relationships」(プレイヤーとの関係構築)、「4th Wall」(第四の壁)の4点だ(「4th Wall」機能は現在企業向けバージョンにのみ実装)。
暴力に関しても同様。もし「None」を設定すると、そのキャラクターはゲームの中で一貫して危険で暴力的な行為をとることになる。そのほか性的な話題、信仰、政治など数多くの項目をキャラクターごとに設定できる。まるで、身近にいる誰かのようなリアルな人物がゲームに臨場感を与えるに違いない。
主人公やメインキャラクターにかまけてNPCをなおざりにすると、ゲーム世界のリアリティや没入感が損なわれてしまう。反対にNPCの描写にまでこだわって作りこめば、プレイヤーのエンゲージ率が増加するのだ。Inworld AIのNPC作成ツールが、これからのゲームの質を変えていくことになるだろう。現時点では日本語版がないのが残念だが、ゲーム立国である日本としても早期の日本語版リリースを待ちたいところだ。英語版にはなるが、無料のデモで誰でも気軽にNPC作成にチャレンジできる。興味がある人は、どんなNPCが作成できるのか、先行して試してみるのもいいだろう。
引用元:Inworld AI 公式サイト
(文・MI001YOU)
- Original:https://techable.jp/archives/225884
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:Techable編集部