インドでは、生成型AIの技術開発をてがけるスタートアップがここ数年で多く誕生している。特にコロナ禍での成長はめざましかったが、世界的な景気停滞の影響もあり2023年は勢いが落ち着いた印象だった。また、世界的に広がっているChatGPTなどと比較すると、まだまだインドはAI分野において世界的な存在感を示せていないという見方もある。
AI開発・利用に関する法規制については各国で対応が急務とされているが、インド政府が生成AI開発において法規制を導入する考えがないのは、国内企業の躍進を後押しする狙いがあるからだろうか。
そんななか、1月26日にインドのAIスタートアップKrutrimが10億ドルの評価額で5,000万ドルを調達し2024年のインドにおける初のユニコーン企業となったことが多数のメディアでも報じられ、広く話題を呼んでいる。
いわゆる“AIブーム”で投資家の関心がAI関連企業に集まっているとはいえ、なぜ設立1年未満のAIスタートアップがユニコーン企業になれたのだろうか。
じつは、Krutrimの創業者であるBhavish Aggarwal氏は「Ola」で知られるインド最大のライドシェアリングサービスを運営するOla Cabsの創業者でもある。また今回のKrutrimを主導したのはアーリーステージでOlaに投資したMatrix Partners India。つまり、今回のユニコーン企業誕生はOla Cabs関係者の意図が色濃く出ているともいえるだろう。
多様な言語を理解、インドに特化したLLM
しかしKrutrimの躍進はそれだけが理由ではなく、開発自体も順調なようだ。同社は2023年12月に同社初となる多言語大規模言語モデル(LLM)を発表。インド言語の2兆を超えるトークンのデータで訓練され、22のインド言語を理解することができ、マラーティー語、ヒンディー語、ベンガル語、タミル語、カンナダ語、テルグ語、オディア語、グジャラート語、マラヤーラム語など約10の言語でコンテンツを生成できる。まさにインドに特化したLLMだ。
同社のLLMは、Olaのカスタマーサポート、ボイス&チャット、カスタマーセールスコールなど、さまざまな社内業務にも活用されるという。ライドシェアリング市場においてOla cabsはUberのインド市場シェアを大きく上回る約6割のシェアを持つとされており、さらに金融サービスやクラウドキッチンなどさまざまな事業を展開している。そのOla CabsでKrutrimのLLMが使用される意味は非常に大きく、同社の企業価値向上に寄与していると考えられる。
LLMだけではない
そして、Krutrimが開発しているのはLLMだけではない。なんとAIに特化したハードウェアやチップを開発しており、それを用いたデータセンターの建設をインドで行うつもりだ。つまりKrutrimが最終的に目指しているのは、ハードウェアからソフトウェアまで網羅したインド初のAI企業なのである。
2024年2月にユーザー向けのベータ版が発表される予定であり、AIアプリケーションの作成を目指す企業や開発者向けのAPIとしても利用できるという。Krutrimの実力はどれほどのものか、市場の注目が集まる。
参考・引用元:Krutrim
文・はっさく(@hassakumacro)
- Original:https://techable.jp/archives/226245
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:小川大