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【柴田裕史氏インタビュー】“インプレッションゾンビ”のいないSNSが必要。Kabukura.aiがユーザー数を伸ばしている理由とは

SNSに疲れていないだろうか。今やちょっと思いついた意見をSNSで公開するだけで非難されたり、意図した内容がうまく伝わらなかったり、果ては炎上したり。気軽に発信しづらくなり、随分と息苦しい時代になったと感じている人も少なくない。SNSを見ている側にとっても、目に付く話題は誰かへの誹謗中傷や、デマか本当かわからない噂、センセーショナルなだけで意味のないゴシップに溢れている。

そんな今、注目されるのは“マイクロクローズドなコミュニティ”。今回は「株クラ」(株式投資を愛好するクラスターの略)という専門分野に特化したクローズドコミュニティ“Kabukura.ai”を立ち上げたTHIRD AVENUE GROUP LLC代表・柴田裕史氏の話を聞いた。

Kabukura.aiは2024年1月にローンチしたサブスクリプション形式のオンライン情報プラットフォーム。“株クラ”たちが有用な情報を交換できる場所として注目を集めており、日本でも新NISAなどを契機に個人投資への関心が一層高まるなか需要の広がりが期待されている。

一方、Kabukura.aiがユーザー数を伸ばし急成長を遂げている理由は、こうした機運だけではない。柴田氏は従来のSNSの活用性に疑問を呈しており、ユーザーがより快適に活用できるSNSの必要性を指摘。今後はkabukura.aiと同様のシステムを他分野へ応用することも視野に入れているといい、まさに今、情報交換プラットフォームの変革を担っている注目の人物とも言えるだろう。

情報の取捨選択能力をユーザーに求めないSNSを

――どうしてKabukura.aiを開発しようと思ったのですか?

柴田:Kabukura.aiを一言で表すなら“誹謗中傷のないクローズドな株コミュニティ”です。既存のオープンなSNSは、アルゴリズムによって人目を集める投稿をことさらに持ち上げています。そのために炎上を目的とした過激な発言や詐欺まがいな発言が横行、果ては“インプレッションゾンビ”と呼ばれる注目を集めている投稿に無意味なコメントを残すことでインプレッションのおこぼれを頂戴するような行為まで頻繁に行われています。

昔からインターネットの活用には情報を取捨選択する能力が求められていると言われていましたが、最近では余計にそういった能力が必要となり、一般的なリテラシーでは対応しきれない状況も増えてきています。そのためちょっとした勘違いで諍い(いさかい)に発展したり、犯罪紛いの行為の片棒を担がされることになったりしています。

本来そういったことはSNSの利用目的である情報入手において不要なはずですが、広告に依存する事業モデルにおいては運営企業の飯のタネともなってしまい、規制されるどころかインセンティブにより加速する始末です。そこで、本当に有用な情報やコミュニケーションを取れる場所を提供することで、広告収益なしでもユーザーから月に10ドルを利用料金として支払って貰うことで成り立つSNS、Kabukura.aiを開発しました。

TV CMも話題に。100%生成AIを使用してたった数時間で作成されたものだという

有用な情報を投稿することにインセンティブがつく仕組み

――たとえばX(旧Twitter)と比較するとどのように違うのでしょうか。

柴田:Xと比較した時、Kabukura.aiの特徴はシンプルなUIであり、それゆえに情報の取捨選択が容易である点です。

Xにはフォローという仕組みがあり、自分好みの発言をする投稿者をフォローする、あるいは不快に感じる投稿者をブロックしたりミュートしたりすることで自分のタイムラインが自分好みの投稿のみ掲載されるようになっていきます。これは自分の考えに迎合するような意見ばかりが集まってしまう側面もあり、情報収集という観点では課題もあります。

Kabukura.aiには、フォローという仕組みはありません。日々ユーザーから投稿される情報のなかでとりわけ有用なものには多くのGoodやCommentがつきますが、そういった情報を数多く投稿するユーザーをランキング付けし、優先的にタイムラインに表示することでよりよい情報がより目に留まるようになっています。

このランキングは日々更新されていくため、たとえばXではたくさんのフォロワーを獲得しているインフルエンサーの発信は常に優先的に表示されますが、Kabukura.aiでは情報が有用でさえあれば利用を開始したばかりのユーザーの投稿であっても多くの人の目に留まるように表示されます。

言い換えれば、Xでは一度たくさんのフォロワーを獲得できれば、どんな内容の投稿でも、多くのインプレッションがついたり優先的に表示されたりしますが、Kabukura.aiではフォロワーの上に“あぐらをかく”ことはできず、有用な情報を投稿することにインセンティブがつく仕組みとなっています。

――Kabukura.aiのユーザーは実際どのようにサービスを活用していますか?

柴田:たとえば注目されている銘柄の決算があった場合、多くの人がさまざまな分析を行って投稿しています。Kabukura.aiのユーザーはそういった意見のなかでもとりわけ評価された複数の投稿を見て、自分の投資判断に役立てることができます。

株式投資に正解はないので、1つの銘柄に対して賛否を問わずさまざまな意見を集めることが重要なので、こういったデザインとなっています。広告は一切表示されないため、スムーズに情報を収集できることが特徴です。

ユーザーのなかには、重要な経済指標やニュースの速報をまとめて投稿する人、そういったものをどう判断すればよいか示唆してくれる人もいます。Kabukura.aiでは、たとえ初心者的な質問でも知識あるユーザーが質の高い回答をしてくれることが多いことも魅力の1つだと思います。

他分野でも展開できるようシステムを販売することも視野に

――実際には今どのくらいの人が利用していて、将来はどのようにしたいと考えていますか。

柴田:はっきりした数字は申せませんが、現在のユーザー数は4,000人程度です。サービスを開始して1か月程度でこの数字は当初の予想を遥かに上回っており大変驚いています。2024年中に1万人超えることを目標としていましたが、今は目標を2~3万人に上方修正しました。

またKabukura.aiは株式投資を愛好する人たちのためのマイクロクローズドなコミュニティですが、このようなコミュニティを分野違いでたくさん作っていきたいと考えています。と言ってもSNSを量産するのではなく、Kabukura.aiのようなプラットフォームの仕組みを、マイクロクローズドなコミュニティを作りたい方に販売することを考えています。

現時点ではクローズドなコミュニティはサロンのような形で運営されていますが、それだとプラットフォーム会社に対してユーザーの課金額の何割かを使用料金として払わなくてはいけません。しかしKabukura.aiならかなり優良なシステムを安価に売り切りで提供することができます。その理由は開発体制にあります。じつはKabukura.aiではウクライナの技術者たちが一丸となって開発しており、費用としても日本でシステムを作るより安価で作ることができます。

――ウクライナで開発されたとなると大変なことも多かったのでは?

柴田:私自身がもともとウクライナに住んでいてウクライナ人のIT人材を日本に発信してきたこともあり、ITエンジニアの知り合いが数多くいます。またウクライナ自体が東欧のシリコンバレーと言われるほどにIT人材を多く抱えている国なので、協力してくれる人たちを探すこと自体に苦労はありませんでした。

しかしご存じのとおり今のウクライナは平時ではありません。開発中も空襲があったりと、常に心身に過大なストレスがかかる状況のなかで開発を続けました。とても大変でしたが、ウクライナを支援したいと考えてくれる多くの方からの助力で何とかKabukura.aiをローンチさせることができました。

開発に協力したウクライナのエンジニア

――最後に、一言お願い致します。

柴田:Kabukura.aiは多くの方の協力を得て開発されました。先述したウクライナのエンジニア以外にも、私の考えに賛同していただきKabukura.aiを活性化させるべく有用な情報を惜しげなく投稿してくれる株クラのインフルエンサーの方々が何人もおります。お陰様で当初より目指していた質の高い情報をユーザーの皆様がアクセスできるようになっており、またKabukura.aiのユーザー同士のやり取りも敬意に満ちて非常によい雰囲気となっています。今後はよりユーザー同士のコミュニケーションが活発になるような施策を導入していきますので、ぜひ参加してみてください。

<インタビュイープロフィール>
Hiroshi Shibata/柴田 裕史
Ago-ra IT Consulting及びEE Technologies代表、ITウクライナ協会日本市場担当、日宇複数企業の顧問、代表を兼務。米国、豪州の大学を卒業後、欧米の外資系金融3社のテクノロジー部でアルゴリズム取引開発に10年以上従事。’02年の学生時代に創業。’16年に欧州へ拠点 を移す。世界8か国に在住経験あり。現在キーウにて日本企業向けオフショア開発コンサル業および現地IT企業の日本向けマーケティングを支援。

取材/文・はっさく(@hassakumacro

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