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曲面にデカールを貼る時の注意点と便利アイテム【達人のプラモ術<フィアット500F>】

【達人のプラモ術】
タミヤ
「1/24 フィアット500F」
03/04

第3回となる今回。ノーマル仕様製作は、缶スプレーでレーシングホワイトに塗装したボディがしっかりと乾燥したので、お楽しみの大判イタリアンカラーストライプデカール貼りのポイントを紹介していきます。そしてボロボロ塗装がいい味出してますなぁ、の映画グラン・ブルーのエンゾ仕様(笑)では、メッキパーツとクリアパーツを取り付けのポイントを解説していきます。(全4回の3回目/1回目2回目

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
モデルアート公式チャンネル」
などでもレビューを配信中。

 

■デカール貼りはチンクエチェント製作のハイライト!

今回の再販キットには、新たにイタリア国旗をイメージした緑/白/赤のストライプや赤色の帯など、走りをイメージさせるデカール(スライドマーク)が追加されています。イタリアンカラーがコンパクトな車体に実によく似合っていて、製作意欲をそそります。

デカールは、「イタリア国旗をイメージしたストライプ」と「艶やかな赤いストライプにレーシングゼッケン仕様」の2タイプ用意されているので、好みに合わせて選べます。デカール自体は発色も良く色の透け等もない高品質なので、今回の作例はストライプ仕様のデカールをチョイスしました。

▲ボディサイドの赤いラインにレーシングゼッケン使用も魅力的だ(画像はタミヤ完成見本)

 

■ボディの曲面にストライプデカールを貼る

レーシングイメージと言っても、昨今のレーシングカー等に比べればシンプルなデザインですが、曲線で構成された特徴的なボディには丸みを持たせてあります。薄い鋼板でも、丸みを帯びたプレス加工を行うことで、軽量化と強度を両立させているということもあり、フロント周りやエンジンフードなどが思いのほか凹凸のあるラインで構成されています。

なので、今回のような大判ストイライプのデカールを貼る場合、いかにボディの凹凸に馴染ませるかがポイントになります。特にフロントカバーからグリル周りは中央部に凸状の膨らみと段差があり、デカールが密着しづらい部分となっています。

 

■デカール(スライドマーク)はスライドして貼る

デカールは、水転写シール、あるいはスライドマークとも呼ばれます。水に漬けることで台紙上の水溶性の糊が溶けて、薄いフィルムのマークとなります。

デカールの質にもよりますが、サイズが大きいものだと、台紙から剥がして持ち上げると丸まったり、糊の面同士が貼りついてしまう、といったトラブルに泣かされることも。こうしたトラブルを防ぐには、台紙のままデカールを貼る位置まで持っていき、台紙上からパーツの表面にデカールをスライドさせるようにします。

万が一デカールが丸まったり、糊の面がくっついてしまったら、慌てず騒がずピンセットなどで無理に広げようとせず、水の中に漬けておいてください。しばらくすると水中花よろしくデカールが開いてきます。そこで水の中から持ち上げてしまうと、また丸まってしまうので、水の中で台紙上に戻してやればリセットできます。

▲糊の成分が溶け出してしまうので、デカールを水に浸けたままにするのはNG。水に5~10秒浸けて、台紙に水が行き渡ったら引き揚げることで糊が溶け出してしまうことを防げる

▲水に浸した台紙の上でデカールが軽く動くようになれば準備OK。無理に動かすのは禁物。古いデカールだとデカールの糊が溶けるのに時間がかかる場合がある

▲デカールは台紙ごと貼る位置に持っていき、台紙上からパーツ上にスライドさせることでスムーズに貼れる。位置修正の際にはたっぷり水を漬けておこなうこと

 

■マークフィットを使用してデカールを密着させる

デカールがボディにしっかりと密着せず、わずかでも浮いていると、シルバリング(デカールの透明フィルム部分が白く目立つ状態)を起こしたり、またデカールを貼った後に光沢を持たせるクリアー塗装の際に、塗料がデカールの裏面に回り込んでシワができたり、最悪溶けるといったトラブルの原因になります。

そこで今回は、タミヤがリリースしているデカール軟化剤「マークフィット」を使用して、デカールをボディにしっかりと密着させています。

デカール軟化剤は、Mr.ホビー(GSIクレオス)の「マークソフター」や「マークセッター」など各メーカーが発売していますが、今回はタミヤデカールと相性が良い(※1)「マークフィット(ハードタイプ)」を使用しました。

使用方法は難しいものではなく、デカールを貼る部位に「マークフィット」を塗布すればOK。デカールの位置を決めたら、綿棒でデカールを内部の気泡を押し出しながら水分を拭き取ることで、軟化したデカールがパーツの凹凸に馴染んでくれます。

(※1)軟化剤はデカールとの相性があり、成分が強いものだとデカールを溶かしてしまうことがある。使用に際しては事前にパッチテストをすることをオススメする。特に古いデカールへの使用は要注意

▲タミヤ「マークフィット(スーパーハード)」(330円) マーク(デカール)を貼りにくい曲面や凸凹面に使用するマークフィットより効果が高いスーパーハードタイプ。曲面や凸凹面、ざらついたつや消し面にもよく密着して、乾燥後のマークの浮き上がり(シルバリング)を防ぐ。塗装を侵す場合があるので、特にアクリル塗料の上から使用する場合は注意が必要

 

■デカールの番号は曲者!

ここで注意をひとつ。デカールの台紙には番号が印刷されています。フィルムに定着はされていないので、水に浸けるとバラバラになってしまうのですが、稀にデカールの表面に残ってしまうことがあります。そのまま乾燥してしまうと剥がすことは困難になるので、デカールを切り出す時点で除けておく、あるいは水に漬けたデカール台紙上から洗い落しておくことをオススメします。

▲デカールの指定番号は水に漬けると分解されるが、トラブルの原因にもなるので、事前にカットしておくようにしたい

 

■綿棒はこするのではなく押すのがポイント

デカールの位置決めが完了したら、綿棒を使いデカール内側に残った気泡や水分を追い出していきます。今回のようにマークフィット(デカール軟化剤)を使用している場合は、綿棒は擦るのではなく上から押し付けて気泡を追い出しつつ、デカールをパーツの凹凸に密着させていくようにします。この際に綿棒は必ず湿らしておいてください。乾いた綿棒だとデカールが貼り付いてしまい、破けるといったトラブルの原因になるので要注意です。

▲綿棒を押し付けることでデカール内部の水分を追い出し、ボディに馴染ませていく

▲デカールを密着させる作業では、必ず綿棒を湿らせておくこと

 

■奥まった部分のデカールはカットライン入れて密着させる

フィアット500Fはフロント周りとリアのエンジンフードの形状が複雑で、軟化剤を併用してもデカールがなかなか密着してくれません。

そこで、フロントフードの凹ラインやエンジンフードの段差部分、ドアの凹モールドは、綿棒で水分を押し出した後にデザインナイフで切れ込みを入れることで、デカールが凹ラインに回り込んでしっかり馴染んでくれます。この際ヘアドライヤーの温風使ってやると、よりデカールを密着させることができます。

▲フロントフード

▲エンジンフードの凹ライン

▲ドアの凹モールド。これらのような細かい凹凸がある場所は、デザインナイフで切れ込みを入れることで、軟化剤の硬化と相まってデカールを密着させられる

▲ボディ両側に貼るストライプはわずかに長かったので、カットしてエンジンフードのラインに合うように調整

 

■デカール貼り完了!乾燥時間をしっかり取る

ボディのデカール貼りが完了したら、クリアーによるコート塗装に備えて、しっかりと乾燥させます。

大判デカールの場合、内側の水分が抜けるのに思いのほか時間がかかります。今回は、前回紹介した乾燥ブースで24時間乾燥させています。室温で乾燥させるのであれば、最低でも丸二日は置きたいところです。

▲ストライプデカ―ル貼りが完了

▲フロントフードやドアライン、エンジンフードの凸部分や凹部分にもしっかりと密着しているのが分かる

 

■缶スプレーを使ってクリアー塗装

デカールが完全に乾燥したのを確認したら、ボディの光沢を出すのとデカールの保護のためクリアーでボディ全体にオーバーコート塗装を行います。今回はタミヤ缶スプレーの「クリアー(TS-13)」を使用しました。砂吹き2回→乾燥→本吹き2回の計4回クリアーを重ねています。ボディが小さいので吹きすぎに注意してください。

▲クリアー塗装、砂吹き1回目。一度に厚吹きするとデカールが溶けるなどトラブルの原因になることがあるので、最初の2回は距離を離して、つや出しを意識せずボディ全体に薄くクリアーを乗せるイメージで(砂吹き、荒吹きと言われる)。この後、1時間程度乾燥させる

▲荒吹きを乾燥させたのち、本塗装を2回塗り重ねて仕上げたボディ

▲良い感じの光沢仕上げとなった。このあと塗装ブースで2日間乾燥させる

 

■お待たせしました、エンゾ仕様の進捗です

いやぁちょっと調べたら、ファイアット500をエンゾ仕様で作っている人多いです。驚きました。ルパン3世の黄色いファイアットと並んで人気あるんですね。

さて同時製作のエンゾ仕様ですが、ウインドウガラスとライト類といったクリアーパーツ、さらにバンパーなどメッキパーツも取り付けています。

ウインドウパーツはウエザーストリップのゴム部分を塗装しなくてはいけないのですが、専用マスクシールが付属しているのでサクサクと塗装を進められます。

▲クリアーパーツとキットに付属している専用マスクシール。マスクシールは初めからカットされているので使い勝手が良い

▲マスクシールを貼ったウインドパーツ

▲裏側の分は用意されていないので、通常のマスキングテープを使ってカバーしている

 

■塗料のはみ出しはコンパウンドと爪楊枝で修正

ウエザーストリップの塗装後、マスクシールを剥がせして完了! といきたいところですが、何か所か黒がはみ出てしまいました。マスクシールをしっかりと密着させていなかったのが原因のようです。

クリアパーツの場合、はみ出た塗料を溶剤(薄め液)で拭き取ると曇ってしまうのでNG。でも修正は簡単。

今回はクリアパーツのカドの部分の小さなはみ出しだったので、爪楊枝の先端にコンパウンド(粗目)をつけて塗料を削り落として修正しました。

あと通常仕様との違いを出すために、ドアのウインドウをカットして窓を開けた状態に仕上げています。

▲ウインドウパーツは黒サーフェイサーで塗装

▲クリアパーツの塗料のはみ出しは爪楊枝とコンパウンド(粗目)で削り落として修正している

▲「タミヤ コンパウンド(粗目)」(385円) プラモデル用の半練りタイプの研磨材。研磨力に優れ、荒れた面を滑らかできる。透明パーツの磨きや、はみ出た塗料を落とすのに使用。研磨後に残ったコンパウンドは水で洗い流せる

 

■クリアパーツとメッキパーツの接着には光硬化樹脂がオススメ

さて、ハードル高いよねと言われるカーモデルのクリアパーツとメッキパーツの接着ですが、インスト(説明書)では多用途接着剤(クリヤー)の仕様を推奨しています。確かに曇らずに便利。ですが、個人的な意見としては、接着剤が固まるまでやや時間がかかるのと、強度がやや不安ということから、最近は光硬化樹脂(UV-LEDレジン 星の雫ハードタイプ)を使用しています。

UVライトを当てることで、すぐに硬化。また透明度が高いのでクリアパーツの接着で万が一はみ出てもほとんど目立ちません。メッキパーツも接着面のメッキを剥がさずにしっかと固定できます。

多用途接着剤に比べて高価ではありますが、パーツの固定以外にも使用範囲が広いので、持っておきたいアイテムです。

▲「タミヤ 多用途接着剤(クリヤー)」(770円) 透明部品やメッキ部品の接着に適した透明度の高い接着剤。塗装面を溶かしにくいので、接着面が曇ることがなく、塗装したパーツの接着もOK。また、粘度が低く糸引きが少ないので作業性も良い。金属や木材、ゴム、皮、紙など多くの材質に使用できる

▲PADICO「UV-LEDレジン 星の雫(ハードタイプ)」(1650円) UV-LEDライトをあてることで1~2秒で硬化がはじまり、90秒前後で完全に硬化するアクリル系光硬化樹脂。時間が経っても黄変せず、高い透明感を維持できる。太陽光でも硬化は可能。推奨ライト:UV-LEDライト(405nm)・UVライト(365nm)

▲フロントガラス等クリアパーツ、ライト、バンパーと言ったパーツを取り付けたエンゾ仕様。ライトのリムとバンパーはメッキパーツだが、デザインナイフで削り込んでベコベコ感を再現。スミ入れ塗料でサビた質感を表現している

▲ウインドパーツは次回ウエザリングを入れていく

 

■次回完成!フィアット500F

というわけで、今回はここまで。いやぁ自分で始めたものの2台同時製作はキツイです(自爆)。でも頑張ります!

次回は2台のチンクエチェント完成編です。お楽しみに!

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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