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生身の人間の声を採用したTTSツール「Listnr」、自分の声のクローン生成も可能

入力した文字や文章を即座に音声に変換するAIツール、TTS。「TTS」は「Text‐To‐Speech」の略で、日本語では「読み上げ音声AI」や「テキスト読み上げ音声合成ツール」などと呼ばれる。

グローバル化に伴いニーズの高まる多言語通訳や、障がい者のコミュニケーションツールとしての役割が期待される技術で、DATA Bridge Market Researchによると世界のTTS市場は2029年までに$170億ドル(約2.2兆円)規模に成長するとの見通しだ。

2024年3月時点ですでに数多くのTTSツールがオンラインで利用可能だが、「Listnr」はカスタマイズ性の高さと使いやすさが特徴。142か国語に対応し1000種類以上の音声タイプから選択可能で、自分の声のクローンも生成でき、TikToksやYoutube、PodcastsへのAPI機能も充実している。

シンプルで使いやすいAI音声、リアルな人間の声が1000種類以上

Listnerが他のTTSツールと異なるのは、実在する人間の声が採用されている点だ。すべての声には提供者がいて、声の所有権は提供者に属している。

各自が自分の声をListnrに登録するシステムで、登録済みの音声は142か国語1000種類以上に及ぶ。豊富な言語・声の種類からユーザーの目的やイメージに合ったものが選べるようになっているのだ。

Image Credits:Listnr

実際のツールを使わなくても、公式サイト上でListnrの機能の一部を試すことができる。140字までテキストを入力でき、言語やボイスの選択、音声生成、生成音声のダウンロードまで可能。実際に日本語音声を入力すると下の画像のようになる。

サイト上では140字までだが、メールアドレスの登録またはGoogleアカウントでListnrにログインすれば1000単語/月の無料プランを利用できる。使い方はじつにシンプル。音声にしたい文章を画面に入力して、希望する音声のイメージを設定するだけだ。後は本物の人間が読み上げたようにナチュラルな音声をAIが生成してくれる。

Listnrにログインした状態。Image Credits:Listnr

女性や男性でフィルタをかけたり、一覧にある「John」、「Paul」といった名前から探せる。「Alloy(合金)」、「Echo(エコー)」、「Fable(寓話)」、「Onyx(オニキス)」のように声のニュアンスも選べるので、求めるイメージに近い音声を見つけやすい。

エディター画面。Image Credits:Listnr

また、TTSエディター画面では「Speed」のスライドバーで読み上げ速度を自由に変更したり、「間」の追加、ピッチや発音の変更、完成した音声の保存・エキスポートなどを行うことができる。

有料プランは1~99ドルの4種類があり、いずれも1000単語/月までは無料で使用可能。金額に比例して利用できる機能や使用可能な単語数も多くなる。例えば、実際にマルチリンガルである人物の音声を選択して、多国籍な発音を再現することもできる。設定できるキャラクターの選択肢も増え、よりイメージに近い音声でナレーションやコミュニケーションの質を高めていけそうだ。

他に、画像や文章のURLを添付するだけで音声に変換できるボイスオーバー(自動通訳&音声)機能も。現時点ではYoutube、TickTock、Podcastと連携済みで、APIで簡単に接続できる。

インドからカナダに移住した青年が学生時代の貯金を元手に開発

複数のスタートアップ紹介サイトによると、Listnrの設立者兼CEOのAnanay Batra氏はインド出身。彼の教育のために家族でカナダに移住し、トロントのヨーク大学で理学士号を取得、コンピューターサイエンスも修めた人物とのことだ。

起業のきっかけは、Batra氏が2020年にポッドキャストを始めようとしたことだった。ポッドキャストの制作ワークフローを容易にするソリューションが存在しないことに気づいたのだ。そして、録音・編集・ホスト・配信・マネタイズの5工程すべてをワンストップで実行できるソリューションの構築を目指すことに。

録音・編集・ホスト・配信・マネタイズの効率化を目指した。Image Credits:Listnr企業サイト

しかし、当時大学を出たばかりのBatra氏にはSaaSアプリを構築するコーディングスキルも資金もなかった。仕方なく、学生時代にアルバイトやインターンで作った貯金を使って人材を採用。数ヵ月かけて20人以上の学生にあたった末に、ようやくBatra氏を含めて3人のチームが発足した。誰もSaaS構築の経験はなかったが、何とか3か月ほどでプロトタイプを完成させたのだ。

2020年9月にローンチしたが、初めはバグだらけでユーザーの評価も星1など散々なありさまで、全員が数日徹夜で修正にあたった。その後も修正とローンチを何度も繰り返してListnr V1は何とか動作する製品となった。

今ではListnrは業界でも注目される存在だ。AIでプロ並みの動画を制作するSynthesia社が2月29日に公開したばかりの記事「AI生成音声ベスト13」では3位に選ばれている。また、Batra氏は今年1月、Xにて「Honda AustraliaがListnrのクライアントになった」と発表。「今後も大企業が続々顧客リストに加わる予定」としている。

カスタマーサービス、商品紹介、プレゼンテーション、ナレーションにナビゲーション、アニメやゲームなどTTSの用途は幅広い。医療や教育分野でのコミュニケーションツールとしても注目されている。ぎこちないデジタル音声は過去のものとなり、Listnrのツールでより自然な生成音声の普及が期待できそうだ。

引用元:Listnr サービスサイト

Listnr企業サイト

(文・Takasugi

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