【達人のプラモ術】
番外編
達人オススメプラモ製作ツール
『冬来りなば春遠からじ』は英国の詩人、シェリーの詩、西風の一節ではありますが、3~4月と言えば新学期、新生活スタートのシーズン。そこで今回はプラモ製作はお休みさせていただき、これからプラモを始めたい、本格的に楽しみたい人にプラモの達人御用達の製作お役立ちツールを紹介します。
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube「
モデルアート公式チャンネル」などでもレビューを配信中。
■ツールは作品のクオリティアップの要
さて、ひと言でプラモ製作に必要なツールやアイテムといっても、さまざまなものがあります。切る・削る・貼る・塗装といった製作工程でそれぞれに必要なアイテムは変わってきます。
達人がプラモを作り始めた1960年代当時は、プラモ用と呼べるツールやアイテムなどは本当に少なくて、ニッパーひとつにしても一般的な工具からの流用でした。「ニッパーなんて知らなくて爪切りで部品を切り出してた。ヤスリもついているから便利」「塗料に歯磨き粉を混ぜればツヤ消しになる」「某社のお菓子の中箱がプラ板として使える」なんてのは昔の話になりました(遠い目)。
プラモデル専用のツールやアイテムは70年代半ばくらいから登場してきたと記憶しています。現在はニッパーひとつ取っても、ゲートカット専用の薄刃ニッパーや、片刃ニッパー等々、パーツカットに特化したものが数多く揃っているなど、プラモ作りの環境は大いに進化しています。いや良い時代になったものです。
■達人ツールボックスを公開!
それにしてもプラモ製作を取り巻くアイテムは本当に多くなりました。全てを紹介するとなると幾らスペースがあっても足りません。
そこで今回は、プラモ製作入門ツールではなく、達人が模型製作で愛用しているツールにスポットをあてて紹介いきましょう。
<エアブラシ>
昨今、スケールモデルにしてもキャラクターモデルにしても、エアブラシは欠かせない塗装ツールとなりました。国内ではGSIクレオス(Mr.ホビー)、タミヤ、エアテックス、イワタ、ウェーブの5社がホビー向けのエアブラシ発売しており、入門用の簡易タイプをはじめダブルアクション、トリガータイプなど用途に応じたバリエーションも揃っています。また近年では海外製で低価格のエアブラシもネットを中心に数多く発売されています。
これからエアブラシを始めたいというビギナーにとっては、どの機種を選んだら良いのかは悩みどころですよね。達人からのアドバイスとしては「ビギナーだからまずは価格の安い簡易型を購入」と言う考え方はオススメしません。「上位モデルは使いこなせないんじゃないか」という声をよく聞きますが、エアブラシも馴れが必要です。使い込んでトライ&エラーを積み重ねることで、使いこなせるようになる塗装アイテムです。
簡易型は、扱いこそ簡単ですから初めは良いのですが、ある程度慣れてくると、もう少し細かい塗装ができないものか…、迷彩塗装や光沢塗装が今ひとつ…、といった性能面での不満が出てきます。結果的に上位モデルに買い替えるというパターンとなります。
考え方はいろいろあると思いますが、達人的には、買い替えの負担をなくして、よりエアブラシ塗装のノウハウを習得しやすい『汎用性の高いモデル』の購入をオススメしています。要は“習うより慣れろ”といったとことです。その方が上達も早いですしね。また最近増えてきている低価格が魅力の海外製エアブラシですが、修理等アフターサービスがない場合もあるので、初めての購入では国内メーカーのモデルをオススメします。
国内5社のエアブラシであれば、ニードルなどパーツ単位で購入できますし、修理等も受け付けてくれるので安心です。耐久性も高く、日頃からちゃんとメンテナスさえしていれば、10~15年でも問題なく使えるツールなので、愛着も湧いてきますしね。
▼汎用性が高いダブルアクションエアブラシの名機
GSIクレオス
「プロコンBOY WAプラチナVer.2 ダブルアクションタイプPS289/口径0.3ミリ」(1万4630円)
ホビー用エアブラシでは老舗ともいえるGSIクレオスの“プロコンBOYシリーズ”最上位機種ということもあり、他モデルに比べてやや高価なモデルにはなります。しかし、機能は充実しており、口径は汎用性が高い0.3ミリ。ダブルアクションモデルの中でもズバ抜けて使いやすいので、メインとして使用しています。
低圧から高圧まで空気の流れを整え、安定した吹き付けを可能にしたエアアップ機能。ボタンを押し下げた際にいきなり塗料が吹き出るのではなく、押し下げた量に応じてスムーズにエアが出てくる“セミイージーソフトボタン”はビギナーにも扱いやすくありがたい装備です。
また“エアアジャストシステム”で、エア圧調整のレギュレーターがなくてもエアブラシ本体でエア量を微妙にコントロールできるのもポイントになります。
こうして文字にすると、なんだか使いこなすのが大変そうに感じてしまいますが、そういうカタログスペックを意識せずに、使いやすくてさまざまな塗装シーンをこなせる汎用性の高いエアブラシだと思っていただければ。ちなみに達人は、自宅用、アトリエ用、イベント用として現在8機所有しております。
▼セカンドエアブラシにオススメ
タミヤ
「スプレーワークHG トリガーエアーブラシ 口径0.5ミリ(カップ一体型)」(1万8700円)
エアブラシは1台あれば、塗料を入れ替えることでほとんどの塗装をこなせるのですが、ある程度使いこなせるようになったら2台目の購入を考えましょう。先にオススメした口径0.3ミリダブルアクションモデルは汎用性が高く幅広く塗装に対応していますが、大型モデルや、カーモデルのボディ光沢塗装には、塗装の幅を広げる意味でも口径0.5ミリのトリガータイプがオススメです。
達人オススメはタミヤ「スプレーワークHG トリガーエアーブラシ(カップ一体型)口径0.5ミリ」です。
トリガータイプのエアブラシは、その名のとおりトリガー(引き金)を引くだけで塗料を吹き付けられるタイプです。ビギナーでも扱いやすく、0.5ミリモデルはカーモデルのボディ塗装のような光沢塗装に適しています。
感覚的にはスプレーガンに近いですが、細かいな塗装にも対応できます。「スプレーワークHG トリガーエアーブラシ」は樹脂製のグリップが装備されているので握りやすく、長時間使用でも手と指が疲れないのがポイント。また大容量の15㏄カップが付属しているのもありがたいです。
達人はカーモデルや大スケールの艦船モデル、RCカーのボディ塗装ではトリガータイプを使っています。「スプレーワークHG トリガーエアーブラシ」には口径0.3ミリモデルもあります。ダブルアクションはどうしても苦手と言う方にはこちらがオススメです。
▼精密塗装専用ハイエンドエアブラシ
GSIクレオス
「PS771 Mr.エアブラシカスタム018 ダブルアクション(口径0.18mm)」(3万3000円)
口径違いで2台のエアブラシを持っていれば、およそほとんどの塗装シーンを問題なくこなすことができるのですが、より細密な塗装をとなると、より小口径のエアブラシが必要になってきます。
というワケで達人が使用しているのが「GSIクレオス Mr.エアブラシ カスタムグレード018ダブルアクション(口径0.18mm)」です。
GSIクレオス製エアブラシのフラグシップモデルというだけあって、価格も高価ですが、低圧のコンプレッサーでも塗装ができるように内部構造がチューニングされており、繊細なグラデーション塗装を可能としています。
当然ながら面塗りには適しません。塗装というよりも描くためのエアブラシと言っていいと思います。
さらに塗料の希釈も、口径の大きいエアブラシと比べてシビアになります。キャラクターフィギュアの複雑かつ繊細な髪の塗装や、1/72スケールのドイツ機のメロメロ迷彩等々、塗装の用途も限られているし、細密塗装に特化した機種だけにエアブラシを使い慣れたモデラーでなければオススメはしません。
<エアブラシ関連あると便利モノ>
▼簡易エアフィルターでトラブル防止
GSIクレオス
「ドレン&ダストキャッチャー」(3300円)
(※「ドレン&ダストキャッチャー2」は3960円)
エアブラシはコンプレッサーで圧縮した空気を使用するのですが、コンプレッサーによってはレギュレーターや水抜きタンクを装備していないタイプもあります。夏場など湿度が高いとホース内部が結露することがあります。水抜きタンクを装備していれば問題ないのですが、それがないと吹き付け時に塗料に結露した水が塗料に混入してしまうことがあります。
そうしたトラブルを防いでくれるのが、簡易エアフィルターの「ドレン&ダストキャッチャー」です。エアブラシに直結することで結露した水や空気中のホコリの侵入を防いでくれるスグレもので、取り付けることでエアブラシの重心が下がってをホールドしやすくなるといったメリットもあります。
▼小さいけれど侮れない!
タミヤ
「スプレーワークコンプレッサーアドバンス」(2万8600円)
付属品:ACアダプター、カールホース
達人はホビーショーなどイベントでエアブラシ塗装の実演をすることが多いこともあり、携帯には、コンプレッサーも小型のタミヤ「スプレーワークコンプレッサーアドバンス」を使用しています。
12.5×7×11.5cm、本体重量600グラムと小型軽量ですが、本体上部のダイヤルでエア圧力の調整が可能で、最大空気圧力約0.20MPa、連続使用でも0.08MPaを維持できるスグレものです。
広い面積のつや有り塗装から繊細な迷彩塗装などの細吹きまで、大型コンプレッサーにヒケを取らない性能を持っているので、自宅の据え置機コンプレッサーとしても十分に使用できます。
静穏性にも優れているので、これから初コンプレッサー購入を考えている人にもオススメ。本体のハンガーからエアブラシを取り外すと自動的に作動状態になるセンサースイッチは便利(一部エアブラシは装着不可)。
<あると便利!なツール>
▼地味だけど…これは使える!
タミヤ
「強力すべり止めシール」(286円)
サイズ:75mm×150mm、厚さ約0.5mm
ここでちょっと、3月2日に発売されたばかりのニューアイテムを紹介しましょう。タミヤ「強力すべり止めシール」は、強力なすべり止め効果を発揮する特殊なシールです。って、名前そのまんまやん(笑)。
作品の展示台やディスプレイケースに貼って位置ずれを防止したり、デスク上のカッティングマットや金属定規などの底面に貼ればズレたりすることがなくなり安定した作業が可能になったりします。
そして「その手があったか!」と目からウロコ落ちなのが、このシールをはさみなどでカットして、先端に幅のあるピンセットに貼る、という使い方。これで、つかんだものをしっかり保持できます。
ピンセットで極小パーツ掴んだらピンッて飛んでっちゃってなくしちゃった…なんて経験、誰でも一度はあるはず。いやこれは便利ですよマジで。
▼何気に便利なアイテム
Finisher's(フィニッシャーズ)
「ベッキーキャップ(内径24ミリのボトル対応:5個入り)」(660円)
各社のシンナーやクリーナーなどの溶剤容器にキャップ替わりに取り付けると、ノズルを回すだけでスポイトなどを使わずとも適量注げるようになる便利モノ(内径24ミリのボトルに対応)。そのまま溶剤のフタ替わりにもつかえるので、付けたままの保存も安心。これがなかなに便利で、達人のようにしょっちゅう溶剤をひっくり返してデスク上を大惨事にしているモデラーにはありがたいアイテムです。
▼細部マスキングに重宝
ペベオ・ジャポン
「ドローイングガムマーカー(マーカータイプマスキングインク)0.7mm」(770円)
モデラーにはお馴染みのマスキングゾル(液状のマスキング剤)ですが、粘度が高いため、筆での細かなマスキングはなかなか難しいですよね。「ドローイングガム」はマーカータイプのマスキングインクで、0.7ミリ幅でのマスキングができるというスグレものです。
厚塗りをしなければ塗布後90秒前後で乾燥してくれるのもポイント高し。錆やチッピング塗装の際のマスキング、マスキングテープの目止めにも使っております。本来はアート用のマスキング剤なので紙素材などにも使用できます。
▼ヒートガンでデカールの定着性をアップ
elesories
「エンボスヒーター ヒートガン 小型300W 2段階温度(200度/350度) 超軽量 曲面ノズル付き レジン用」(2380円~)
達人的には、これまで塗装の乾燥促進やデカールの乾燥にヘアードライヤーを使用していたのですが、最近ヒートガンに切り替えました。
ヘアードライヤーではピンポイントの加熱などが難しいことや、また塗装面の乾燥でホコリを巻き上げてしまうことがある、というのが切り替えの理由です。
現在ホビー用のヒートガンは各社から発売されています。見た目がドライヤーと似ていますが、ドライヤーはJIS規格によって吹き出し口から3センチのところの温度が140℃以下と規定されていますが、ヒートガンの吐出温度は300℃程度と非常に高温です。ハンダ付けや塩ビの溶接などにも対応した機種では600℃以上の高温にもなりますが、塗装やデカールの乾燥という用途であれば、低温タイプのモデルで十分です。
現在使用しているエンボスヒートガンはレジン用という事で200℃と350℃の切り替えができるモデル(レジンの気泡取りなどガレージキット製作などにも使用するため)ですが、プラモデルでの使用には必要十分だと思います。サイズ的にもホールドしやすく、また静音性にも優れているのがポイントです。
▼オマケ
タミヤ
「モデラーズナイフ」(1210円)
とてもキレイなブルーが出ました!
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/590685/
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