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英UCL発AcoustoFabの音響浮遊技術、触れずに薬剤を混ぜる工作機械を開発中

コンピュータサイエンスの名門、英UCL(University College of London)の研究者たちが起業したロンドンのスタートアップAcoustoFab社。超音波スピーカーをアレイ上に配置し、位相差で駆動することにより、「何も触れていないのに物体を動かす」技術を研究している。

2023年に創業したばかりで、現時点では創業メンバー+UCLのみがシェアホルダーというシードステージのスタートアップだ。

AcoustoFabの音響浮遊技術

こちらはCES2024にて筆者が撮影したデモである。

中央のロケットは、CGの後処理でなく、実際に何も無い空間に浮遊している。ロケットの上下に超音波スピーカーが敷き詰められていて、この音波によってモノを持ち上げることができる。この音響浮遊技術がまさにAcoustoFabのコア技術だ。なお音声ノイズはスマホのマイクが超音波を拾っているためであり、実際にはこのような音は聞こえない。

音響浮遊技術により物体の工作を行うことを意図して、社名に「Fab」を入れているという。まだ研究開発の段階で、最初のプロトタイプ製品がローンチするのは2024年末の予定だ。

バイオや製薬、材料などの業界で応用期待

ロボットアームなどを使う場合、マニピュレータなどの物理的な接触を避けることができず、それによりコンタミネーション(意図しない異物の混入)を招く恐れがある。

AcoustoFabの製品は、音響浮遊技術によりまったく物体に触れずに動かせるので、コンタミネーションの恐れなく、液体同士を「混ぜる」、「塗りつける」などの工作が可能。バイオや製薬、材料などの業界で応用が期待される。

なお物体を動かせるのはスピーカーが敷き詰められた範囲のみで、動かすトルクも小さいが、これまでに存在しなかった新しい加工方法となりえる。AcoustoFabでは、薬品やバイオなどを想定した、シリンジ付きのものも開発中だ。

AcoustoFabは、技術デモを中心としたさまざまな研究に加え、実際の工作機械やサービスを提供することを想定している。必要なスピーカーを上下2方向(さらに上1方向だけ)に減らしたり、さらにより重いものを安定して浮かせるなど、多くの改良を加えている。

(取材/文・高須正和)

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