2024年の東京オートサロンに出展され、大きな話題となった日産のEV『アリアNISMO』。電動化と同時に”ワクワクするクルマ”にこだわる日産らしい1台ゆえ、市販を心待ちにしていた方もいらっしゃることでしょう。
そんなアリアNISMOですが、6月の発売予定と発表されました。今回はEV NISMOのフラッグシップとなるアリアNISMOとはどんなクルマで、ノーマルとはどこが違うのかご紹介しましょう。
■“NISMO”のネーミングに相応しい細部にわたるスポーティなチューニング
日産アリアは2021年6月に予約注文が開始されたSUVタイプのEV(電気自動車)。発表直後には限定車”limited”を設定、あわせてバッテリー容量の違いにより「B6(66kWh)」と「B9(91kWh)」の2モデルがあること、またFWD車のほか4WDの「e-4ORCE」が両モデルに用意されることが発表されました。
その後、B6のデリバリーも開始されたのですが、サプライチェーン問題もあり一時受注停止になっていました。しかし、今回のアリアNISMO発表に合わせて、3月中にB6の受注再開、そして下旬には全グレードの発売となったのです。
そして、日産のモータースポーツ活動を担い、コンプリートカー開発も手掛けるNISMOの名を冠した「アリアNISMO」は3月8日に正式発表、6月に発売予定とのこと。
ベース車はB6とB9の両グレードが設定されますが、駆動方式はe-4ORCEに統一されています。また、B9には高速道路の走行をナビ連動でサポートするプロパイロット2.0も設定されています。
NISMOモデルらしくレッドのアクセントが目を惹くエクステリアは専用のフロントバンパーやリアバンパーロワー、リアスポイラーのほかドアフィニッシャーなどを装着。これに伴って全長は4595mmから4650mmへと55mm延長されています。
これらのエアロパーツにより空気抵抗を低減しつつ、ダウンフォースの向上を図っています。各専用パーツそのものは控え目ですが、練られたシンプルさとでも言うのでしょうか、ひと目でNISMOと判別できる造形の美しさと力強さが感じられます。
また、モーターの鉄芯をイメージした2×5スポークの20インチホイールは軽量・高剛性であるのに加えて、エアロダイナミクス効果も狙った形状となっています。
ホイール径(標準19インチ→20インチ)やリム幅(8.0J→8.5J)により、タイヤの接地面積と旋回時の剛性を向上させたほか、タイヤそのものもコンパウンドや内部構造をチューニングするなど、EV NISMO用に最適化しています。
前後サスペンションやスタビライザーといったシャシー関連も専用チューニングが施されます。例えば、フロントスプリングはバネ定数をフロント側3%アップ、リア側10%アップ(B9)、フロントスタビライザーとリアショックアブソーバーもNISMO専用とされ、日産の”匠ドライバー”によりチューニングが実施されています。
加えて、e-4FORCEの制御もノーマルに比べて、フロント駆動力配分を減らし、リア駆動力を増すことでトレース性の高い旋回加速を実現したといいます。
そして、何より”NISMO、本気だな…”と感じさせるのがパラートレインにも専用チューニングを施したことでしょう。最高出力はB9 e-4ORCEをベースとしたモデルでは290kW(394ps)から320kW(435ps)と約+10%の向上を果たしています。
また、速さや気持ち良さを感じられる加速特性を追求した”加速チューニング”を施したほか、ドライブモードは「スタンダード」「エコ」「スノー」に加えて「NISMO」モードを設定。スイッチ操作ひとつでEVならではの力強いレスポンスと爽快な加速フィールを体感できるようになっています。
■EV NISMOの頂点に相応しい躍動感に溢れる佇まいと走り
発売に先駆けてテストコースで対面したアリアNISMOですが、ノーマル車のモダンでシンプルな美しさを活かしつつ、ホイールやディテールの造形、レッドのアクセントが与えられたことでダイナミックさを感じさせる佇まいを見せます。
デザインに関しては”風格プレゼンス“と”電撃パフォーマンス”、この二面性がキーワードとして強調されましたが、風格と力強さを兼備した実車を見ると納得という印象です。
インテリアもしかりで、ブラックを基調としながらステアリングにはレッドのセンターマークが与えられるほか、インパネやセンターコンソールの金属加飾も金属調レッドに改められています。
また専用開発のフロントシートはスエード調表皮を採用、ホールド性や姿勢保持性、フィット感まで匠ドライバーによる走り込みで入念なチューニングを施したそうです。
実際、シートのサイズは大きめですが、クッション部の程よいストロークによるしっかりとしたホールド感に加えて、手触りが良く滑りづらい表皮により体をしっかりと支えてくれます。
また、インテリア全体の質感も高く、インパネやセンターコンソールまわりに配されるマット系素材も指紋が付きづらく好印象。
ドアパネルや前席足元中央部にはANDON(行燈)イルミネーションが備わりますが、ほのかに灯る赤い明かりが上質さとスポーティさを巧みに演出しています。
そんなディテールもあって”走り”への期待値も高まります。試乗車はB9 e-4ORCEですが、まずはスタンダードモードで走り出しますが、約2.2トンという車重を感じさせない加速感はEVならでは。アクセルパダルだけで加速・減速を自在にコントロールできるe-pedalを駆使すれば車体サイズを感じさせない軽快な走りが楽しめます。
また、NISMO専用のチューニングが施された足まわりも硬いと感じることはありませんし、タイヤのパターンノイズこそドライバーの耳元に届くもののEVらしい静粛性もしっかりと保たれています。
一方で、NISMOモードに切り替えると、その血統を色濃く感じることできます。真っ先に感じるのは加速時の力強さで、特に80~120km/hの車速がググッと伸びる感覚とレスポンスの良さは爽快のひと言に尽きます。
また、NISMO専用のBOSEプレミアムサウンドシステム搭載車では加減速に合せてEVサウンドがスピーカーから響きます。音質もデザインしたというこのEVサウンド、加速時はジェットエンジン風、減速時は重低音と変化しますが、(好みこそあれ)スポーティな走りを演出してくれますし、走りのテンポを掴むうえでも役立ちそうです。
試乗コースにはパイロンスラロームも用意されていましたが、加減速・コーナリングのすべての操作が安心して行えますし、2トン強という車重を感じることはありません。しっとり・しっかりとした安定感と機敏な身のこなし、その絶妙なサジ加減はさすがNISMOというところでしょう。
さて、EV NISMOのフラッグシップにして、車格的にも国内向け日産SUVの頂点でもあるアリアNISMO、気になるお値段は842万9300円から944万1300円。
輸入車の高性能EVやSUVに迫まる価格帯ですが、そうしたグローバルなライバルと並んでも決して劣らない、個性が光るモデルであるのは間違いありません。
【Specifications】
日産アリアNISMO B9 e-4ORCE
全長×全幅×全高:4650×1850×1650mm
ホイールベース:2775mm
車重:2210kg
動力:電気モーター
駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
総電力量:91kWh
最高出力:フロントモーター160kW(218PS)/5950-11960回転
最高出力:リアモーター:60kW(218PS)/5950-113200回転
最大トルク:フロントモーター300Nm/0-4392回転
最大トルク:リアモーター300Nm/0-4392回転
駆動:全輪駆動
価格:944万1300円
>> 日産 アリア NISMO
<写真・文/村田尚之>
【関連記事】
◆売れセンど真ん中のおでかけミニバン新型日産「セレナ」!e-POWERが第2世代になってどこが進化した!?
◆凍結湖で実力を体験! 開発者が胸を張る日産「アリア B9 e-4ORCE」の走行安定性をチェック
◆日産の電気自動車「リーフ」のバッテリーを再利用したサステナブルなポータブル電源
- Original:https://www.goodspress.jp/reports/593969/
- Source:&GP
- Author:&GP