ナイジェリア、ケニア、エジプト、南アフリカ共和国はいわゆる「ビッグ4」とも呼ばれ、ビジネス領域でも特に注目されている。2023年はこの4か国がアフリカ大陸へのスタートアップ投資額の約87%を占めた。
一方、ナイジェリアは投資額が大幅に減少。年末から高いインフレに苦しんでいる。ナイジェリア国家統計局によると、総合インフレ率は2024年2月に31.7%にも到達した。ナイジェリア・ナイラの安値が続き、輸入価格が高騰していることが主な要因だ。
国民の家計が圧迫される中、同国のEdTech企業uLessonは自社アプリの定額料金を半額にすると2月に発表した。質の高い教育を手頃な価格で提供することを目指す同社は、モバイル学習用Androidアプリ「uLesson」を展開するスタートアップだ。
クイズなどの楽しい勉強方法で学習者を引き付ける「uLesson」
「uLesson」は、小学校から高校までの数学や生物、化学、物理などの教科をカバーする教育コンテンツをアプリで配信。1年のベータ期間を経て2020年にリリースされたサービスだ。
膨大な量のビデオライブラリから、自分のレベルに合うものを視聴できるほか、マルチプレイヤー形式のクイズといったコンテンツもあり、友達と楽しみながら学べるよう工夫が施されている。
模試やテストも受けられ、学習の進み具合をリアルタイムで追跡・強化。西アフリカの認定試験West African Senior School Certificate Examination (WASSCE)などの対策にもなるという。500万以上のダウンロード回数と1400万回以上のレッスン視聴回数を誇り、西アフリカ諸国の教育水準向上に貢献することが期待されている。
uLesson社はアプリの普及を促進するため、定額料金を重視している。Global EdTechの記事によると、オフラインでもアプリの教材を利用できるよう、インターネットへのアクセスが難しいユーザー層のためにSIMカードがセットになっているという。新製品「uLesson Classboard」を2024年3月にローンチ
同社は2024年3月にアプリ以外の新事業もローンチしている。学校教育に役立つハードウェア「uLesson Classboard」を開発、販売を開始した。
同製品について、uLessonは単なるスクリーンではなく「従来の授業を、“勉強を楽しめる時間”に変えるクラスルーム・ソリューション」、「新しいデジタル・クラスアシスタント」としている。業界をリードするコンテンツによって教師の負担を軽減し、小中学校の生徒に豊かな学習体験を提供する狙いだ。
また、複数の内容を同時に表示する画面分割機能など使い勝手に配慮したUIも特徴。バーチャルホワイトボード上で行った授業の内容を録画すれば、再視聴して復習・欠席した生徒に共有も容易だ。
無料のスタンド付属で配送・設置も無料、アフターサポート完備で、教育機関でのスムーズな導入を目指す。
高品質の教育リソースで西アフリカ諸国に貢献
uLessonは、2019年にSim Shagaya氏によってナイジェリアで設立されたスタートアップ。「手頃な価格でアクセスできる高品質の教育」をナイジェリア全土およびそれ以外の地域の生徒に届けるという使命を掲げている。背景に関係なく、すべての学生に教育を届けることでアフリカの教育格差解消を図る。
2023年には、高品質な教育リソースのアクセシビリティとナイジェリアの学生たちの学業成績、個人での学習時間を強化する目的で「uLesson 全国アカデミック トーナメント」(uNAT) を立ち上げている。6000人の参加者が賞金500万ナイラ(およそ60万円)とグランドチャンピオンの称号を目指して競い合った第1回のイベントでは、数学・化学・生物など、出場者が選択した特定科目でクイズが行われた。
uLessonアプリを利用するナイジェリアの高校生すべてに参加資格があるこのコンテストで証明されたのは、ナイジェリアの学生たちの努力と知力だけではない。uLesson社の重要プロジェクトである学生たちの学業支援と、それによる社会貢献の成果も示されたのだ。同社アプリはナイジェリア以外にもウガンダや南アフリカ、シェラレオネ、リベリア、ガンビア、ケニア、ルワンダでも利用が可能。さらにアフリカ大陸以外でも、アメリカやイギリスなどでも利用できるという。どんな成績のユーザーにも対応する「No one is left behind」(誰も取り残さない)を謳うuLessonの事業は、国や大陸を超えて世界各地でこどもたちに寄り添っていくサービスとなるだろう。
引用元:uLesson
(文・たに おさむ)
- Original:https://techable.jp/archives/231463
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:芥田かほる