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サーモン需要を満たすイスラエルAquaMaofの省電力養殖システム、静岡県でも活用

2022年に国連が発表した「世界人口推計2022」によると、世界人口は2022年に80億人に達し、2050年には97億人に増える見込みだという。こうした世界的な人口の増加に伴い懸念されているのが、“たんぱく質不足”だ。

近年、世界では魚類をはじめとする天然資源が枯渇し続けている。

国際連合食糧農業機関(FAO)の統計によると、天然で漁獲可能な数量は1990年頃から頭打ちになっており、天然資源だけでその需要を満たすことは難しいだろう。

そんな中、水産養殖が需要と供給の間のギャップを埋める上で重要な役割を果たしているのが“養殖”だ。養殖の生産量は年々増加しており、中でも養殖サーモンの世界全体の生産量は2021年に約320万トンに到達するほどだ(参考)。

このような養殖業の需要が高まっている状況下で、イスラエル企業であるAquaMaofの循環式養殖システム「Recirculating Aquaculture Systems、以下RAS」がサーモン需要を満たすツールとして注目を集めている。

エネルギーコスト削減が期待されるRAS

魚の養殖を陸上で行う“陸上養殖”には「掛け流し式」と「RAS」がある。掛け流し式は飼育水に使用する用水を海・川から汲み上げ、使用後の水を海・川へ流す方式である。単純でコストがかからないが、排水による環境汚染が課題となっている。

一方でRASは飼育水を濾過し循環再利用する方式。給水量や排出水量が少ないという持続可能性の高さが特徴だ。そして環境への影響の少なさから、近年特に注目を集めている。

RASでは水温や水流、塩分などを調整できるため、さまざまな魚に適した環境で通年飼育し、成長を促進させることが可能。生産性や品質の向上が見込めるという。

一方で循環式養殖システムには注意点もある。掛け流し式より放水量は少ないが、放水によって周辺の生態系へ影響を及ぼす可能性がある。

また養殖場の温度調整や機器の動力となる電力のコストが大きいことも課題だ。生産時に発生するCO2削減や生産におけるコスト削減の観点から、消費電力削減がRASにおいては重要である。

効率的な電力消費を実現するAquaMaofのRAS

Image Credit:AquaMaof

こうした背景のなか、注目されているのがAquaMaofのRASだ。AquaMaofのRASの最大の特徴は効率的な電力消費である。AquaMaofによると、他のシステム設計で消費される電力の約3分の1を利用できるという。

AquaMaofのRASは非常に水効率が高く、最小限の水しか取水・放水しない。そのため外部源から水を汲み取るための電力や、取水・放水した水の温度維持に必要な電力を抑えることが可能だ。

また、従来のRASの多くは機械装置を使用してシステム内の水の循環を行うが、AquaMaofのRASでは重力などの自然物理力を用いることで、電力消費の削減を実現している。

SalmonBusinessによる2019年の報道で、AquaMaofは電力消費の削減によるコストカットにより、サーモンを1キロあたり3ドルで生産できると語った。

日本における2019年の、サーモン1キロ当たりの輸入価格は4ドル程度であるため、AquaMaofのシステムでの生産コストは輸入価格よりも低価格と言える(参考)。そのため日本でのAquaMaofのRASの活用に期待が集まっている。

AquaMaofの資金獲得、日本への拡大

AquaMaofは2019年に日本、ロシア、ノルウェー、ドイツ、ポーランドを含む世界各地に水産養殖施設建設のための資金を2億3000万ドル以上確保しており、自社のRASのグローバル展開を試みている(参考)。

2021年には、ノルウェーに本社を構えるProximar Seafoodの委託プロジェクトとして、アトランティックサーモン生産用RAS施設の建設を開始すると発表。

日本の静岡県小山町、“富士山の麓”にあるProximar Seafoodのサーモン陸上養殖場は2022年よりすでに運用を開始しており、最初の水揚げは2024年中頃を予定している。

出荷初年となる2024年の出荷数量は約2500トン、2027年のフル稼働時には約5300トンの出荷が見込まれている。今後サーモン需要のある国でのさらなる普及が期待されるだろう。

参考・引用元:AquaMaof

(文・MOMMA)

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