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ブームは塗装不可!プラの質感をいかに消すか…【達人のプラモ術<タダノ ラフテレーンクレーン>】

【達人のプラモ術】
ハセガワ
「1/35 タダノ ラフテレーンクレーンGR-130NL/N クレヴォ mini G4」
04/06

第4回となる今回は、いよいよラフテレーンクレーンの本体ともいえるブームの製作を進めていきます。キットのブームは実車同様に伸縮させることが可能(手動)で、最大75センチまで伸ばせます。

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
モデルアート公式チャンネル」
などでもレビューを配信中。

 

■クレーンのブームとは

ブームとはクレーンの仕事である荷を吊り上げたり移動させたりするためのもの。箱型をしており(専門用語では箱型構造ジブとも呼ばれる)、車載タイプとなるラフテレーンクレーンのブームは、油圧シリンダを用いて展開、伸縮することが可能となっています。

ハセガワがモデル化した「GR-130NL/NクレヴォminiG4」は5段ブームを採用しており、キットは1/35スケールでブームを最大75センチまで伸ばせるので、実物は21メートルまで伸ばすことができる計算になります。

ラフテレーンクレーン車載型なので機動性が高く、ブームの長さを作業内容に応じて任意に変えられ、使い勝手が良いのでどこの現場でも重宝されており、広く普及しているそうです。

 

■塗装できない!?

キットのブームは5段構造で、最先端のブーム(パーツN6)を除き、L字型のパーツを接着することでボックス構造を再現しています。L字型の分割としてくれたおかげで、接着線が目立たちにくいパーツの角になっていて、手間のかかる接着線を消すための研磨作業が短縮できるのはありがたい限りです。

今回の作例は建機カラーとしてパーツの多くを黄色に塗装していおり、ブームも黄色に塗装しようと考えていたのですが、実物をリサーチしてみると、ほとんどのクレーンはブームが黒となっています。ブームはロッドアンテナのような伸縮構造なので、塗装のハゲや傷つきを避けるために塗装を避けていると思われます。

キットは塗装しなくてもある程度実車のイメージを再現できる色プラなので、ブームも成型色は黒となっています。それは良いのですが、ブームの製作となる工程18を解説しているインストを見ると、ブームは『塗装しないでください』と注意喚起されています。

えっブームは塗装できない? プラの素材色のままになの? といささか狼狽したのですが、冷静に考えてみればブームはロッドアンテナみたいに箱組みした個々のブームを重ね合わせていくので、どうしてもパーツ表面が擦れる。塗装した状態でブームを伸縮させたらあっという間に塗装が剥げてしまうことは必然です。

当初は、プラの素材色そのままということにどうしても抵抗があり、ブーム表面を塗装の厚み分削って剥がれを防ぐ塗装を、とも考えたりしたのですが、カチっとした精度で組み合わさるロッドパーツの表面を削ってしまうと今度はガタが出てしまう可能性もあり悩みました。

キャラクターモデルなどでは成型色を活かしてツヤ消し、あるいはツヤありクリアーのみで仕上げるという簡単フィニッシュという塗装テクもあるのですが、ブーム部分はクリアーも塗装出来ません。ブームを伸縮させたらやはり剥げてしまいます。

▲ハセガワの完成品サンプルを見てもロッド式のブームは素材色を活かした黒で仕上げられているのがわかる

 

■ブームは無塗装でいくべきか?

ブームの伸縮ギミックを諦めて、収納した状態か伸ばした状態で接着固定してしまえば、塗装できないという呪縛から逃れられるワケですが、それじゃあ「ブームは75センチも伸ばせるんだぜ、スゴイだろ!」というキットの持ち味を活かせなくなってしまいます。なのでここはギミックを重視、成型色の黒を活かして仕上げることにしました。

 

■研磨処理でプラの質感を消す

無塗装でいくとは言ったものの、さすがにそのままではブーム部分だけがプラスチック然としてしまうので、接着が硬化した後、パーツの表面を研磨して質感を整えます。

ブームは個々に組み上げたのち、パーツ表面の研磨は、プラ板に貼り付けたフィニッシングペーパーを使って800番→1000番→最終的はクルマの板金塗装でも使われているコバックスの研磨シート(トレカット)の2000番でエッジを立てつつ磨き上げていきます。その際にはブームの伸縮方向(縦方向)に研磨シートを動かすことでパーツ表面にヘアラインを入れます。作業は難しくはないのですが削りすぎないなように、ブームのエッジがダルにならないようように注意が必要です。

研磨したことでパーツ表面の成型色の黒が白っぽい感じになります。そこで前回も使用したコーティング剤でブームパーツの表面を磨き上げます。そうすることで黒の質感を取り戻せると同時に、へアラインを入れたことでプラスチック感を抑え、塗装したような硬質な質感を再現できます。またコーティング剤を使用したことでパーツ表面の滑りが良くなるで、ブームの伸縮がスムーズに行えるようにもなります。

完成させたブームは、無塗装仕上げながら思っていた以上に良い質感となり、黒部分と黄色のパーツとのコントラストも良い感じになりました。これぞクレーンといった感じです。

▲伸縮可能なブームは6パーツで構成。いちばん先端のパーツN6を除いてL字型のパーツ2個を組み合わせてボックス状に組み上げる構成となっている。パーツの角が接着面となるので、合わせ目消しの作業がやりやすい。パーツはをブーム伸ばした際に荷重がかかるので、接着後しっかり乾燥させる。応力に弱い瞬間接着剤の使用はおすすめしない

▲箱型に組み上げたブーム。右側の爪の部分でロッドアンテナ状の構造になっている各ブームが抜けるのを防いでいる

▲インストの工程18でブームを組んでいくのだが『塗装しないでくださいDo not paint.』の注意書きが!

▲ブームは、成形色の黒を活かしたまま金属的な質感を再現、塗装はしていない。実際の作業では、各ブームパーツを組んだのち、面出しのためフィニッシングペーパーを1ミリのプラ板に両面テープで貼り付けてパーツの表面を研磨。エッジ部分もしっかりと角を立てていく。研磨はフィニッシングペーパーの800番→1000番と目を細かくしていき、今回は仕上げにクルマの板金塗装などで使用されている2000番相当のコバックストレカットグリーンシートを使い研磨し、パーツ表面をヘアライン仕上げとしている。通常のフィニッシングペーパーの2000番でも同様の仕上がりを得ることはできる

▲トレカットP2000を使ったブームの研磨は、パーツに対して縦方向(矢印の方向)に研磨シートを動かすことで均一なヘアラインを入れられる

▲研磨とヘアライン加工が完了したブーム。先端となるパーツN6は突き出しピンの跡が目立つので、丁重に研磨して消しておきたい

▲研磨処理を完了させたのち、ハイコーティングⅡを使いパーツの表面をコーティングすることで、研磨で白くなった素材色の黒がぐっと引き締まり、ヘアライン加工と相まって硬質な質感を得られる。また表面が滑らかになるので、ブームの伸縮が楽に行えるようになる

▲コーティングが完了したら、ブームを組み上げていく。ブームの外装パーツを取り付けた後では分解できなくなるので、ロッド式に差し込んだ状態で伸縮させて、スムーズに可動するかを確認しておく

▲ブームを収納した状態

▲ブームを最大まで延ばした状態

▲ブルーの整形色の外装パーツは下地を塗装したのちボディカラーの黄色で塗装。ブームの一段目は接着面を研磨処理したので下地の白から再塗装した

▲ブームに黄色で塗装し外装パーツを取り付けた状態。指定の青×白も良いが、黄色×黒の建機らしいコントラストが良い感じだ

▲黒の整形色を活かし、へアライン仕上げたとしたブームの質感も良いプラスチックの質感が消えて良い感じなった

▲コバックス(KOVAX)「トレカット グリーンシートP2000」(50枚入り 3410円〜 ※単品販売をしているショップもある) 実車の塗装の際に使用されている研磨シートで、塗装肌の凹凸になじみ凸部のみを滑らか仕上げることが可能。プラモの塗装面、あるいは今回のようなプラスチック表面の研磨にも効果が高い。シートの裏側は粘着剤付きなのでプラ板などに貼り付けて面出し作業ができる。本来は水研ぎで使用するが、今回はパーツ表面にヘアラインを入れるため、あえてカラ研ぎで使用している

▲Mr.ホビー「Mr.ハイコーティングII」(1430円) 前回もクリアパーツの光沢アップに使用した水系光沢コーティング剤。本来は塗装面の艶出しに使用する。特殊レジンコートが滑走膜層を形成するので、滑りが良くなる効果がある。プラスチックやゴムなどを侵さず保護効果もある

 

■悩ましきは起伏シリンダー

クレーンのブームを完成させて、工程21ではブームの外装パーツを車体色である黄色に塗装したのち取り付けていきます。

この際に、ブームの起伏角度を変える起伏シリンダーのロッド(パーツC2)をシルバーに塗装して取り付けるのですが、ブームを起こした際の加重を保持するために起伏シリンダー(工程11で製作)にはポリキャップが入っています。これがロッドを擦るため、やはり塗装が剥げやすい部分です。

当初ミラーフィニッシュシート貼ることで、アクチュエーターロッドの質感を出しつつ塗装の剥げを防げると考えたのですが、フィニッシュシートの厚みで作動が極端に渋くなってしまい断念しました。

結局ロッドはシルバーで塗装してコーティング剤を塗って仕上げていますが、ブームの伸縮を繰り返していると塗装が剥げてくると思います。ブームは後から外せるので、より良い仕上げのアイデアが見つかったら再仕上げしたいと思います。

▲動きが渋くいなるためフィニュシートでの仕上げを諦めて、銀塗装で仕上げたブーム起伏シリンダーのロッド

▲現在より良い仕上げを検討中

 

■いよいよ完成間近のラフテレーンクレーン!

今回完成させたブーム車体に仮り組みしてみると、いやぁ思っていた以上にカッコ良いです! ブームの黒と黄色の車体のコントラストもバッチリ決まっています。残す工程は車体の細部仕上げ。さらにさらに作業時に車体の左右に展開するアウトリガの製作です。そしてやはりウエザリング塗装は外せません!

次回のタダノラフテレーンクレーンの製作もお楽しみに!

▲ブームは旋回台にネジで固定されるので、強度に不安がない。ネジは締めすぎ要注意

▲車体に取り付けた旋回台にブームを仮組した状態。いよいよラフテレーンクレーンらしくなってきた

▲ブームをいっぱいに伸ばしたら手持ちの撮影ボックスに収まらなかったため、床に置いて撮影になってしまった

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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