人気が続くバイクの中でも、特に激戦区となっているのが400ccクラス。国産モデルだけでなく、輸入ブランドでもハーレーダビッドソンが「X350」を、トライアンフが「スピード400」を投入するなど、ラインナップが急速に充実してきています。“走って楽しい”モデルが揃っている中、元々走りにこだわるメーカーとして知られているKTMが「390 DUKE(デューク)」の新型をリリースしてきました。
輸入車400ccクラスの中でもハイパフォーマンスなマシンとして知られる「390 DUKE」ですが、どんな進化を遂げているのか? 兄弟モデルに当たるハスクバーナの「ヴィットピレン401」「スファルトピレン401」も合わせて乗ることができたので、その違いも含めてレビューしたいと思います。
■ハイパフォーマンスな単気筒エンジンを搭載
近年、国内でも見かける機会が増えているKTMですが、ヨーロッパのオーストリアで生まれたメーカーで、設立されたのは1934年と90年の歴史を持つブランド。収益規模としては世界5位に当たる大きなメーカーでもあります。“Ready to Race”という標語で知られ、元々はオフロードレースを中心に活躍していましたが、近年はMoto GPにも参戦するなど、ロードレースの世界にも活躍の場を広げています。
「390 DUKE」は2014年から日本国内でも販売されているモデルで、オフロードマシンで培った技術を投入した高性能な水冷単気筒エンジンを搭載しています。個性的なフロントマスクと、鋼管パイプを組み合わせたトレリスフレームが記憶に残っている人もいるかもしれません。2024年モデルでは、フレームからエンジン、足回りまで一新されており、担当者によると「従来モデルと同じ部分を探すほうが難しい」というほどのリニューアルを受けています。
水冷単気筒のエンジンは排気量が373.2ccから398.7ccまで拡大されていて、最高出力は44PSから45PSにアップ。最大トルクも37Nm→39Nmに向上しています。ボア×ストローク値は89×64mmで、ショートストロークの高回転型エンジンであることが数値からも感じられます。
マフラーはリアサスペンション直下に配置されるショートタイプとなり、ルックスがさらにアグレッシブな印象に。スロットルは電子制御で、この型から走行モードの切り替えにも対応するようになりました。
■足回りも本気のスペック
フレームは新設計となっていますが、個性のひとつとなっていたトレリス構造は引き継がれています。
大きく変わったのは、リアサスペンションのマウント位置で、リンクレスのダイレクトマウントである点は共通ですが、車体右側にオフセットされルックス的にも存在感が大きなものになりました。この配置によって、エアクリーナーボックスの容量を確保できたのだとか。
サスペンションは前後とも、KTMのグループ企業であるWP製で、フロントフォークは倒立式のAPEXオープンカートリッジタイプ。伸圧両側の減衰力調整が可能で、走りにこだわる人は最適なセッティングを見つけられます。
リアはサスペンション本体にプログレッシブ特性を持たせたもの。スイングアームの造形も個人的にはグッときました。
ホイール形状も一新されていて、本体が軽量なだけでなく、ブレーキディスクのインナー部分を省くことでさらなるバネ下重量の低減を実現しています。見た目にもすっきりしていて軽そうな印象。ブレーキは320mmのシングルディスクに、新開発のラジアルマウント4ピストンキャリパーを組み合わせています。
■同クラスの輸入車ではピカイチの運動性能
初めてこのバイクにまたがると、一般的なネイキッドマシンに慣れた人は驚くかもしれません。着座位置がかなり前方で、ハンドルがめちゃくちゃ近い! ほとんどエンジンの上にまたがっているような感覚です。近年のオフロード車に近いと言えばわかりやすいでしょうか。
オフロードレースにルーツを持つKTMらしいとも言えますが、近年のスポーツマシンは前乗りのマシンが増えているので、トレンドが追いついてきたとも言えるかもしれません。
シート高は820mmですが、オプションで800mmまで下げられます。タンクのボリューム感は先代モデルに比べて増していて、ニーグリップがしやすくなっていますが、車体幅自体は単気筒マシンらしくスリムなので足付き性は悪くありません。車体が153kgと軽量なので、片足でも楽に支えられます。
軽量な車体に元気のイイ単気筒エンジン、そしてハイスペックな足回りの組み合わせが楽しくないわけがありません。ピックアップの鋭いシングルエンジンは、街中でもキビキビした走りが楽しめますし、ワインディングなどで高回転まで回せば、単気筒とは思えないような伸びを味わうことができます。
コーナーでは、行きたい方向に顔を向けるだけで向きが変わってくれるような俊敏なハンドリング。街中の交差点などでもコンパクトに曲がれますし、ワインディングの高速コーナーなどでも剛性の高い車体と足回りで路面に貼り付くようなグリップが感じられます。車体の重心に近いエンジンの上辺りに座っているおかげでバイクとの一体感が非常に高いのも魅力です。
同クラスの輸入モデルにも結構乗っていますが、そうしたマシンと比べてもスポーツ性能では頭一つ抜けているような印象。価格は78万9000円ですが、それが安く感じられるような運動性能です。
■兄弟モデルとの違いにも驚愕
同じフレームとエンジンを採用した兄弟モデルにも試乗することができました。それがハスクバーナの「ヴィットピレン401」と「スファルトピレン401」。
ハスクバーナは北欧スウェーデン生まれのブランドですが、現在はKTMと同グループに属しています。「ヴィットピレン401」と「スファルトピレン401」は個性的なタンク形状が印象的な、モダンなデザインのネイキッドモデルです。
先代の「ヴィットピレン401」は、高いシートと低いセパレートハンドルで、見た目の印象よりスパルタンなライディングポジションでしたが、このモデルからアップタイプのハンドルとなり、とっつきやすくなりました。
乗ってみると「390 DUKE」に比べて着座位置が高く、後方なので同じフレームとは思えないくらい。ハンドリングも軽快ではありますが、一般的なロードマシンに近い印象でした。
「スファルトピレン401」のほうは、さらにアップライトなハンドル形状で、スクランブラー的なタイヤを履いています。驚いたのはハンドリングの違いで、タイヤとハンドルくらいしか違わないように見えるのに、軽快に切れ込むハンドリングで乗り味もスクランブラー的でした。
同一のプラットフォームを採用した3車種に乗ってみましたが、感じたのは基本設計の完成度の高さ。3車3様のハンドリングの違いは、とても同じベースとは思えないものでしたが、どれも軽快さと安定感を兼ね備えていて、懐の深さを感じます。普通自動二輪免許で乗れる排気量なので、輸入車を食わず嫌いしているようなライダーは、どれか1台乗ってみると世界観が変わるかもしれません。
>> KTM
<取材・文/増谷茂樹>
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/597836/
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