事業者用の決済端末。これは新興国の小規模事業者にとっては悩みの種でもある。
屋台にクレジットカードを認識できる端末を置ければいいが、いかんせんそのようなスペースはない。また、新興国の通信状況では決済端末そのもののオペレーションが難しい場合も。ナイジェリアのスタートアップNombaは、中小零細の事業者にとっても使いやすい形の決済端末を開発し、近年急速に契約者を増やしている。
これが「レジ」というものを過去の遺物にしてしまう可能性があるのだ。
スタッフ全員が決済端末を持つ時代に
たとえば、10人の従業員が働いているブティックがあるとする。そこで服を買うとき、今までなら店内の端に設けられたレジカウンターに足を運んで決済を済ませる必要があった。しかし、もしも10人全員がポケットに収納できるサイズのワイヤレス型決済端末を持っていたらどうか? 「レジ前に並ぶ」という現象はなくなるはずだ。
Nombaが提供する決済端末は、合計4種類。いずれもスマートフォンと大差ないサイズである。
その中のひとつ、「Nomba Pro」はとても決済端末とは思えない見た目である。スマートフォンとほぼ同様のフルスクリーン設計で、本体裏側にはクレジットカードの非接触型決済対応マークが描かれている。接触型決済を行う場合は、カードを本体下部から差し込む仕組みだ。
対応通信規格はWi-Fi、Bluetoothの他に4G、3G、2Gのセルラー回線。スペアの通信手段を複数揃えることで、「回線不良で決済ができない」という最悪の事態を極力回避できる。
小売店舗がNomba Proを利用する際、これを決済だけでなく在庫管理に用いることも可能。その店のスタッフ全員が、残りの在庫や売り上げを把握・共有できる仕組みになっているのだ。
問題は、Nomba Proの販売価格。1台6万2,000ナイラ(2024年4月時点:約8,288円)である。これは中規模の事業者ならともかく、個人経営の小規模店舗にとっては決して安くはないかもしれない。
小規模事業者向けの廉価版端末も
そこでNombaでは、機能を抑えた廉価版製品「Nomba Mini」も用意している。
こちらはフルスクリーン設計ではなく物理ボタン搭載型。対応クレジットカードはVisaとMastercard、そのうえで銀行が発行した決済カードにも対応する。非接触型決済には非対応だが、Wi-Fiとセルラー回線接続は可能だ。
そんなNomba Miniの販売価格は2万5,000ナイラ(2024年4月時点:約3,342円)。上述のNomba Proの半値以下である。零細商店・食堂なども導入しやすい、ちょうどいい丈の決済端末とも言える。
このように、 Nombaはあらゆる事業者に適合した製品を複数開発している。これは結果としてクレジットカードの使える店を増やし、ナイジェリア国民のみならずナイジェリアを訪れた外国人にとっても多大な恩恵を与えるはずだ。
決済端末がもたらす「変革」
2023年5月、Nombaはアメリカ・サンフランシスコのベンチャーキャピタルBase10 Partnersが主導するプレシリーズB投資ラウンドで3,000万ドルの資金を調達した。
皮肉なことに、サンフランシスコでは2019年にキャッシュレス決済のみ対応の実店舗を条例で禁止している。どの店舗も完全キャッシュレスになってしまうと、銀行口座やクレジットカードを持っていない人が困窮するという考え方から出た条例である。
しかし、新興国では「実店舗の急激なキャッシュレス化」がむしろ中小零細事業者にビジネスチャンスを与えている。スタッフが手軽に携帯できる事業者用決済端末は、今まさにナイジェリア国民の生活を変革しようとしている。
参考・引用元:Nomba
(文・澤田 真一)
- Original:https://techable.jp/archives/231655
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:澤田真一