自分の金融信用情報にはどのようなことが書かれているのか、大抵の人は知らないだろう。
だが、もしもその情報を「信用スコア」という形で可視化できればどうか。何かしらの理由でスコアの数値が低かったとしても、「どうすればスコアを上げていけるか」をアドバイスしてくれるコーチがいれば心強いはずだ。
それをサービスとして展開しているのが、インドネシアのスタートアップPT Skortech Karya Indonesiaの「SkorLife」である。このアプリは現時点の信用スコアを可視化すると同時に、それをもとにした「金融コーチング」も提供する。信用情報を数値化するアプリ
住宅ローンや自動車ローン、クレジットカードのキャッシングなどの融資を利用している人にとっては「あとどれくらいローンを組めるか」が悩みの種になる状況もある。
たとえば、新車の購入を考えているが今現在の信用情報で自動車ローンを新しく組むことが可能なのか。それをあらかじめ教えてくれるアプリがあれば、消費者は審査に落ちることもなく、購入・返済プランも立てやすくなる。SkorLifeは、こうした信用情報を分かりやすい数字として利用者に提示する。
利用者はまず、インドネシアの信用調査会社CLIKにメールを送り、自分の信用情報を取得する。CLIKはインドネシア金融庁(OJK)からの運営認可を取得している企業だ。当然ながらSkorLifeもサイトトップにあるとおりOJK認証マークを得ている(これについてはインドネシアのフィンテック事情を語るうえで極めて重要なので、のちほど詳しく解説したい)。次に、利用者はCLIKから自身の信用情報を得たら、それをSkorLifeアプリを使って送信する。SkorLifeはその情報を基に、信用スコアを算出する。スコアは「優良」が597~659、「良」が562~596、「平均」が520~561、「不良」が320~519、「問題あり」が150~319のように区分され、それに応じた財務管理が実行される仕組みだ。
ローンの滞納があった場合は当然信用スコアにも響いてしまうが、滞納の解消プランを分かりやすく表示してくれるのもSkorLifeの特徴である。単に返済を催促する設計ではなく、いわば「協力して信用スコアを上げていく」という前向きな方向性になっている。今までに契約したローンをアプリで一括表示し、それぞれの支払い残高やトータルの残高も一目で把握することができる。さらに、利用者の名前が勝手に使われて身に覚えのないローンが組まれないよう監視する機能も。つまるところSkorLifeは、「金融の安全性」を担保してくれるサービスなのだ。
OJKの認証マークを取得、アプリダウンロード数50万超
こうしたアプリが登場する背景には、インドネシア人がそれだけローンを頻繁に利用しているという状況がある。一方で、インドネシア語で言うところの「pinjol(pinjaman online:オンライン融資)」に関連するサービスが急速に普及し、中には強引な貸し付けと法外な金利を貪る悪質なpinjolも現れるようになった。
地元メディアdetik.comの記事に詳しく説明されているが、インドネシア国内でサービスを展開するpinjolは必ずOJKの認可を得なければならない。OJKは「金融の透明性」を目指すと同時に、オンライン金融関連サービスに対して認可の申請を徹底させるようになった。そのため、インドネシアのオンライン金融アプリは「OJKの登録リストに企業名が載っているか」がまず重要になるのだ。
認可のためにクリアすべき条件は「SNSやメッセンジャーアプリ等のプライベートチャンネル経由でローン契約のオファーをしない」、「返済を90日滞納している利用者はブラックリストに登録し、他のpinjolも利用させない」、「インドネシア国内に明確な拠点を構えている」、「苦情対応窓口がある」など。すべてのpinjolに対して安易に認証マークがばら撒かれるわけではないのだ。
PT Skortech Karya Indonesiaの場合は、2022年9月に登録を完了させている。SkorLife自体は利用者にローンを提供するアプリではないものの、金融サービスであることに変わりはないからだ。同社は2023年5月にシードラウンドで400万ドルの資金調達を遂げているが、OJKの認証マークはそれ以上に重要なポイントだ。SkorLifeアプリのダウンロード数は50万を超え、Google Playの評価では2024年5月2日時点では4.4である。去年シードラウンドを迎えたばかりのスタートアップが提供するサービスだが、その信頼度は政府公認のマークにも支えられ、まさに盤石と言っても過言ではないだろう。
(文・澤田 真一)
- Original:https://techable.jp/archives/233286
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:澤田真一