1900年に16億5000万人だった世界の人口は、2000年に61億人に達している(参考)。この人口増加を支えたのは、食料生産量を急増させた化学肥料だ。
しかし近年、化学肥料の過剰使用による「土壌微生物の活動が低下し、土壌の生産性が落ちる」「水質汚染のリスク」などの問題が指摘されている。また昨今は世界情勢の影響で化学肥料の価格が高騰しており、化学肥料に依存しない“持続可能な農業技術”の需要がますます高まっている。
そこでスロバキアのスタートアップBIOR Biotechは、 7年以上の研究・開発、エンジニアリング、テストを経て、今年4月に持続的な土壌微生物培養技術「BIO Reactor(以下、BIOR)」を新たに開発した。
土壌微生物の培養で、植物を強化
BIOR Biotechが発表したBIORは、土壌の正常な機能に不可欠な土壌微生物の継続的な培養を実現する技術だ。有効な土壌微生物を組み込むことで植物が強化され、病気や干ばつなどのストレスに対する耐性が向上。作物の収穫量が安定し、より安定した継続的な農業生産が保証される。
土壌微生物、つまり有機肥料を使用しているため水質汚染のリスクが少なく、製造プロセス中のCO2排出量を削減できるのもポイントだ。
なお、BIORを活用して土壌の生命力を高めた場合、1~4年で化学肥料の使用量を25~75%削減可能だ。
“AI駆動マシン”でプロセスを完全自動化
土壌微生物のすべての準備、培養、継続的および最終的な品質検査が自動化されるため、農家は最小限の運用コストで微生物を農場で直接生産できる。
たとえば、pH分析や酸素測定、温度管理や自動pH調整、UVC殺菌などを含む15以上の重要なプロセスを監視・制御することが可能だ。
なお、土壌微生物による肥料低減技術の実用化のためには、培養技術とその効果の診断技術が重要と言われているが、同社技術はそれらの要素をクリアしている。
来年1,000ユニットの市場投入を目指す
BIOR Biotechの主任土壌微生物学者であるNatalia Faragoova博士は、以下のように語っている。
「地球上のあらゆる土には、植物の成長に必要な栄養素がすべて含まれています。問題は、これらの栄養素が植物に直接利用できないことです。彼らはそれらを入手しやすくするために微生物が必要なのです」
現在、世界には約6億5,000万戸の農場がある。今後、BIOR Biotechは同社の技術を今年末に市場投入する予定で、来年には少なくとも1,000ユニットを投入することを目指している。
参考・引用元:
Massive Media
BIOR Biotech
- Original:https://techable.jp/archives/235574
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:Haruka Isobe