【達人のプラモ術】
イタレリ
「1/32 イタリア空軍 マッキ MC.202フォルゴーレ」
02/06
前回はインストの製作手順に沿ってエンジンの製作からスタートしたマッキ MC.202。アルファロメオ社製RA1000 RC.41エンジン(ダイムラー・ベンツDB601のライセンス生産)は、配管などにビニール素材等を使うことでストレート組みでもリアルに仕上がります。
第2回となる今回は、組み上がったエンジンを機体に搭載していくのですが、これがなかなかに難易度の高い作業でした。(全6回の2回目/1回目)
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube「
モデルアート公式チャンネル」などでもレビューを配信中。
■ダイムラー・ベンツ DB601Aがあったからこそ高性能機になれたマッキMC.202
同盟国であるドイツのダイムラーベンツから提供された、メッサーシュミットに搭載されていたDB.601エンジン(水冷倒立V型12気筒、1100馬力)。このエンジン、キャブレターが当たり前の時代に燃料直接噴射ポンプ(言うところのインジェクション)を搭載し、空中戦においてどんな状況でも常に安定した性能を発揮しました。
ライバルだった英国の戦闘機スピットファイアが搭載していたRRマーリンエンジンは気化器(キャブレター)だったので、空中戦でマイナスGがかかるとエンジンが息をついてしまいます。
ちなみにDB.601エンジンですが、当時日本でも川崎(陸軍)とアツタ(海軍)がそれぞれ導入し、ライセンス生産していました。3式戦飛燕や艦上爆撃機彗星に搭載されたのですが、工作技術の低さからトラブルが多発。本来の性能をほとんど発揮できなかったようです。
<ダイムラー・ベンツ DB601>
形式:液冷倒立V型12気筒
排気量:33929cc
全長:1722mm
全幅:705mm
乾燥重量:610 kg
■機体によって細部仕様が異なるので要注意
今回はエンジンマウントとなる主翼の主桁の製作からスタート。
インストでは工程5からスタートとなるのですが、実は機体によって細部仕様が異なるので注意が必要です。塗装図A・B・C・E・F・G・Hの場合は工程5で製作。今回選んだのは塗装図Dの機体なので、エンジンマウント部は補器類の配置が異なり、主脚収納部の内壁がない工程6となります。
■機体内部の塗装は下地に黒塗装が基本
イタリア機ということもあり、インストに指定されている塗装指示にもあまり馴染みのない色名があります。今回は、先ごろ発売されたばかりのVICカラーのイタリア機用セットに含まれている機体内部色(インテリアグリーン)で、エンジンの隔壁や脚収納部の塗装を行っています。
色調的には明るいヨモギ色という感じなので、そのまま塗装するとかなり明るい印象(明度が高い)となります。エンジンやコクピットの塗装では、重厚感や使い込まれた質感を陰影をつけたて再現したいので、下地に黒を塗装することでインテリアグリーンの明度を抑えました。ちなみに黒を混ぜて明度を落とそうとすると、色が濁ってしまうので要注意です。
■難解なエンジンの取り付け
今回、ちょっと驚いたのがエンジンの取り付けです。一般的な飛行機モデルだと大抵の場合、コクピットと一緒に胴体に挟み込むことが多いのですが、本キットは主翼下面に接着したエンジン隔壁にエンジンを取り付けて、同時に主脚も取り付け。その後、胴体と組み合わせて最後に主翼上面を接着という、正直なんでこうなった?という構成になっています。
工作自体は問題ないのですが、エンジンや主脚を先に主翼に取り付けてしまうと、主翼接着後の合わせ目処理や、胴体との接合時に作業がやりにくいし、私のような粗忽者は、主脚柱を折ってしまうといったリスクも発生します。
■作業効率を優先して手順を変更する
そこで、組み上げたエンジンや隔壁を仮組みしてみて、何か所か組み立て手順を変更しました。
まずエンジン隔壁は指定どおり主翼下面に取り付けます。この際に主脚も同時に取り付けるよう指定されていますが、ここでは取り付けません。
また脚柱を取り付ける主桁は、エンジン隔壁と一体となっているのですが、力がかかる部分にしては接着面積が少ないので、強度に一抹の不安があります。そこで裏側からエポキシ接着剤で補強しておきます。
さて、エンジン自体の取り付けは問題ないのですが、ビニールパイプで再現されているエンジン配管の取り付けが、狭い隙間を通して曲げながら繋がなくてはならないので、なかなか厄介です。
しかしながら、苦労しながらもパイピングを完成させると、アルファロメオ社製RA1000 RC.41エンジンがリアルに仕上がってくれます。
■機首上面機銃の取り付け
エンジンのパイピングが完了したら、インストの手順に従って2丁の12.7mm機銃を取り付けます。MC.202の武装は、前身のサエッタと同じ機首上面の12.7mm機関銃2挺に加え、主翼に7.7mmが2挺と、同時代の戦闘機に比べるといかんせん貧弱でした。
■主翼上面の取り付け
ここまで組み上げたら、この時点で主翼上面と下面を接着合体させます。インストでは胴体と主翼下面の接着後の工程で上面を取り付けるように指示されていますが、後々の作業効率を考えての変更です。もちろん胴体パーツとの仮組みをして問題ないことを確認してからの作業となります。主翼上面は接着前に翼内7.7mm機銃のための穴を開けておく事を忘れずに。
機銃口の外側にはエッチングパーツで補強板が再現されていますが、筆の軸やプラ丸棒を治具にして主翼の曲面に合わせて曲げる作業が必要となります。
また主翼を仮組みしたところ、脚収納部の隔壁が0.3mm程度高く接着面に僅かに隙間を生じたので、隔壁の上部分を削って合わせ目がピタリと合うように修正しています。
■次回、コクピットの製作
今回はここまで。組み立て自体に大きな問題はありませんが、エンジンの配管の取り付けなど、なかなか苦労する部分もあります。また後の作業しやすさを考えて、インストの指示とは組み立て手順を変更しました。もちろん問題はありませんが、これは自己責任となります。
次回は3Dデカール等で計器盤が再現された計器盤などコクピットの製作をおこないます。お楽しみに!
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/606810/
- Source:&GP
- Author:&GP