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新薬で“犬の寿命延長”に挑戦|米国バイオテック企業Loyal、来年初頭の発売を目指す

世界のペットケア市場は拡大を続けている。2022年に2800億ドルだった市場規模は、2032年には約2倍の5500億ドルに達する見込みだ(参考)。市場の拡大は、所得の拡大のほか、ペットが家族同然の存在になった結果でもある。質の高いケアをペットに提供するため、オーナーたちは多大な努力を払っているのだ。

そんな中、「犬が健康に長生きできるように支援する」をミッションに掲げるスタートアップがある。2020年に設立されたアメリカのバイオテック企業Loyalだ。同社は犬の寿命を延ばす新薬を開発中。FDA(アメリカ食品医薬品局)の条件付き承認も申請中で、早ければ2025年初頭に、新薬が市場に投入されるという。

FDA承認申請までの長い道のり

Loyalを創設者でCEOを務めるCeline Halioua氏は、ウプサラ大学でナノバイオテクノロジー、テキサス大学で神経科学、オックスフォード大学の博士課程で遺伝子治療の健康経済学を研究していた人物だ(オックスフォード大学は起業のために中退)。同氏の公式サイトでは、愛犬と思しき犬との写真が見られる。

Celine氏はLoyal設立後、大型犬の寿命が短いという問題に注目し、新薬開発をスタートした。ブリティッシュコロンビア大学の名誉教授であるStanley Coren氏も指摘するとおり、大型犬は細胞分裂が活発で成長が早く、その分がんのリスクが高いという。

Loyal設立当初は、犬の寿命を延ばす新薬について、FDAの承認を得るためのステップは確立されていなかった。そのため、同社は新薬の効果を証明する方法をゼロから設計する必要に迫られる。その一環で、新薬を使った研究の結果などをまとめた資料は2300ページ以上にも及び、4年の歳月を費やした。このようなプロセスを経て、2023年11月にようやく承認申請にまでたどり着いたのだ。

画期的な新薬に高まる期待

Image Credit: Loyal

Loyalの新薬であるLOY-001は、犬の成長を促進するホルモン「IGF-1」に働きかけるというもの。大型犬はIGF-1のレベルが非常に高い。若い犬の場合、IGF-1は成長に寄与するが、成犬の場合は老化を加速させ、健康寿命を短くすると考えられている。

そこでLOY-001は、IGF-1を小型犬のレベルまで低下させることで、大型犬の寿命を延ばすという。この薬は、3~6か月ごとに医師が投与する注射薬だが、現在Loyalは飲み薬であるLOY-003の開発も進めている。すでに、さまざまなケースを視野に入れているわけだ。

Loyalは、大型犬用の新薬であるLOY-001とLOY-003を2026年にローンチする計画だ。これらの新薬に先駆けて、2025年にLOY-002という体重14ポンド(約6.3kg)のシニア犬向け新薬の提供を目指している。

今年3月にシリーズBラウンドで4500万ドルを調達

Loyalの取り組みは各方面から注目を集めており、過去にThe New York Times紙Forbes誌のほか、マサチューセッツ工科大学発のテクノロジー誌MIT Technology Reviewでも取り上げられた。

なおCEOのCeline氏は、Forbes誌が選ぶ「世界を変える30歳未満 2022」に選出されている。

Loyalは今年3月に、シリーズBラウンドで4500万ドルの調達に成功。これにより、同社が創業以来調達した資金総額は1億2500万ドルを超えた。

公式サイトで「FDAの承認が得られる保証はない」という旨を明記している中での資金調達に、投資家の期待の高さがうかがえる。

人間の寿命を延ばすことも視野に

Loyalは、犬の寿命を延ばすことに成功した次のステップもすでに思い描いている。将来的には人間の寿命延長を目的とした医薬品の開発を視野に入れているのだ。成長を促進するIGF-1は人間にも見られ、100歳以上の人の中には、生まれつきIGF-1の値が低い人がいることも分かっているという。 同社の挑戦は、始まったばかりだ。

参考・引用元:
Loyal
Celine Halioua

(文・里しんご

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