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米Astreas、“脳を活性化するチョコレートトリュフ”をISSに届ける

米国発のスタートアップAstreasが、宇宙飛行士や外科医、トップアスリート向けの“脳を活性化するチョコレートトリュフ”を、国際宇宙ステーション(ISS)に納入したことを5月に発表した。

同製品はNASAの有人宇宙飛行ミッション「SpaceX Crew-8」の打ち上げで無事ISSに届けられ、ISS Expedition 71(第71次長期滞在)の乗組員に配布された。

今後Astreasは高い身体能力・認知能力が求められる宇宙活動に対応すべく、宇宙飛行士と協力しながら製品の風味や栄養価を微調整していく方針だ。

食とテクノロジーに情熱を燃やすCEO

Astreasは2019年設立。共同設立者でCEOのShahreen Reza氏は、食とテクノロジーに対して情熱を燃やしてきた。

バングラデシュ出身の同氏は、母校であるパリ政治学院とのインタビューで起業のきっかけについて語っている。Shahreen氏が同学院で金融と企業戦略について学び始めたのは、2009年。フランス大使館から奨学金を得るほど優秀だったという。パリで学びたいと思った理由として豊かな「食」を挙げているのも印象的だ。

そして在学中、Boston Consulting Group主催のコンクールに参加したことがきっかけでLeigh Cassidy氏に出会う。同氏は、ウイスキーの副産物で水を浄化する方法を発見した人物である。一方、Shahreen氏の祖国であるバングラデシュでは、70万人もの人がヒ素で汚染された水を飲んでいた。

Leigh氏のテクノロジーでヒ素の90%を除去できることを知ったShahreen氏はパリ政治学院を中退し、PurifAidを設立。水を浄化するテクノロジーを祖国にもたらした。

その後、Shahreen氏はソフトウェア開発会社でIPOの経験を経て、Astreasを設立し、栄養豊富な高級チョコレートの製造へと漕ぎ出したのだ。2023年11月、Astreasは国際宇宙科学研究所の研究員Kellie Gerardi氏とともに、宇宙旅行会社Virgin Galacticの研究飛行に参加し、宇宙の果てへと旅立った。

同社は将来、月面ミッションをサポートし、最終的な火星ミッションのための栄養対策を提供することを目指している。

機能にも味にも見せるこだわり

Astreasのチョコレートは、機能にも味にもこだわっている。

元NASAの宇宙飛行士であり、医師でもあるAstreasのCOO、Scott Parazynski氏は同社のチョコレートを食べた感想として「ダブルエスプレッソを飲んだ後のように頭が冴えわたるものの、神経過敏には至らない。心拍数は40台前半をキープしていて、カフェインを大量に含んだエナジードリンクとは一線を画すものだ」と述べている。

さらに、味についても妥協は一切ない。NASAに納入した製品は、チョコレート職人であるMichael Recchiuti氏によるものだからだ。同氏は幼い頃からお菓子作りに親しみ、1997年に自身の店「Recchiuti Confections」を持つまでになる。2006年には国際料理専門家協会の年次会議で高い評価を得ている。

ちなみにRecchiuti Confectionsは現在も営業中。TripAdvisorの評価は5段階中4.5で、Instagramのフォロワーは1万人近くと人気の高さがうかがえる。

元NASAの宇宙飛行士であるGreg氏は、Astreasのチョコレートについて「贅沢な味わいでクリーミーかつサクサクした食感も楽しめる」と評している。

なお、このチョコレートは一般向けにも予約販売を行っている。価格は40ドルだが、NASAに認められたチョコレートを試せるということで、魅力を感じる人もいるかもしれない。ただし、配送先は米国とカナダのみだ。

今回のISSへの納入に伴い、Shahreen氏は「今後は寄せられたフィードバックをもとに改善を続ける」という意向を示している。

宇宙食市場が2023年から2029年にかけて年平均11%以上で成長し、約12億ドルにまで到達すると見込まれている中、Astreasが今後どこまで成長するのか、目が離せない。

参考・引用元:
Astreas
NewsWire
MAXIMIZE MARKET RESEARCH
パリ政治学院
NutraIngredients

(文・里しんご

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