横浜中華街は無数の本格中華レストランが軒を連ねています。頻繁に訪れることがない人にとっては「どこの店がうまいのか」がよく分からず、もちろん失敗だってしたくないもの。しかし、情報サイトなどを見ても、基本はどこも「うまい」と評されており、結局のところ「この店にするぞ」と一発勝負をする思いで、店をチョイスする人は多いのではないでしょうか。
他方、横浜中華街エリアには「中華料理」関連以外の業態の店も点在しています。マッサージ店、厨房器具店、たばこ店など。
当然こういった店で働く人たちもお腹が空けば、毎日地元のどこかで食事を摂っているはず。そして、毎日食べるからこそ「本当に良い店」「本当にオススメできる店」を知っているはずです。
今回は、そんな仮説を立て、横浜中華街の「中華料理」関連以外の地元の人たちにとっての「オススメの店」はどこなのかを徹底調査。「地元の人」たちに推薦してもらった店で実食し、その様子をレポートします。
■マッサージ師のお兄さん大推薦の絶品「海老チリ定食」
横浜中華街の関帝廟通りと市場通りの小さな交差点の角に、足裏マッサージ店があります。こちらの店、観光客目当てのぬるいマッサージではなく、実に本格的な足裏マッサージが楽しめる店で、多くのテレビ取材なども受けてきており、実は筆者も大ファンです。
ここで30分ほど、足裏を押してもらいつつ、中国人のマッサージ師のお兄さんに世間話的に、「普段この辺のどこで食事をしているの? どこで食事すべきか分からなくて……」とオススメ店を聞きました。お兄さんは「オススメある。帰りにその店名刺あなた渡す!」と言います。そこで渡されたのが『麺王翔記』という店のもの。
マッサージ店付近は大小の中華レストランが軒を連ねていますが、『麺王翔記』という店は、このあたりから6〜7分歩かなければいけない距離。やや遠いのに薦める理由は「身内とか友達の店だったりするんじゃないか」と思いきや、そうではなく「とにかく安くてうまい」のだとお兄さん念押し。さっそくその名刺を頼りに、『麺王翔記』を目指しました。
『麺王翔記』は「中華街東門」交差点のすぐ脇にある店で、いわゆる横浜中華街エリアからほんの少しはみ出た場所にありました。
平日のランチは748円(税込)と格安でありながらも海老のチリソースや黒酢酢豚などもいただけ、さらにライスはお替わり自由とも。そして、確かに地元の人に人気のお店のようで筆者来店時は日本人の客は筆者のみ。満席のテーブルは全て中国語が飛び交っています。
ここで「海老のチリソース定食」をオーダー。繁忙時間帯であることからサーブまでなんと30分かかったのはご愛嬌。しかし、そのビジュアルを前にとにかくテンションが高まりました。
肝心の味は少々辛めの味付けながら、10個ほど入った海老はプリプリ。ご飯がどんどん進みます。添え物のキムチやサラダ、そしてスープの酸辣湯も絶品で、シメにいただく杏仁豆腐までついてこの味・コスパは確かにかなりお得。マッサージ店のお兄さんが絶賛する理由もよくわかりました。
多少割高になりますが、休日もランチを実施しており、また四川系メニューも豊富です。横浜中華街で失敗したくない人、辛いもの好きの人はぜひ行ってみてはいかがでしょうか。
麺王翔記
住所:神奈川県横浜市中区山下町79瑞利ビル1F
営業時間:11:00~翌0:00(ランチライム11:00〜15:00)
■金物屋のおじさんが控えめに推薦する高級店顔負けの「海老そば」
後日、改めて横浜中華街へ。
例のマッサージ店の向かいに、古くから続く金物屋さんがあります。中華鍋やセイロといったプロ使用の調理器具が綺麗に並び、その奥には日用雑貨などが並んでいます。
ただし、どうもプロ御用達といった雰囲気で、店のおじさんは寡黙。筆者のような素人が店に気軽に入れる感じはありません。
そこで、この店で個人的に仕事場用のセイロを買うことにし、その会計の際にさりげなく「この辺でオススメの店はないですか」と尋ねてみることにしました。
寡黙だと思っていたおじさん、実はとても親切な方で「オススメの店? うーん……」と考えを巡らせてくれました。しかし、やはり複数のプロを相手にする店だからなのか「特定の店をオススメ」することを少々躊躇されている様子。
しかし、それでもなかなか帰らない筆者にようやく教えてくれました。「『満来亭』さん。あそこは自家製麺で麺モノは美味しいですよ」と控えめに教えてくれました。
おじさんのオススメの店をなんとか聞き出すことができ、その足で『満来亭』を目指しました。実はここ、横浜中華街のはずれにあるのに、いつも大人気。「中華街通」の間では結構名の知れた店です。店の向かいに小型の製麺工場を持っており、麺の小売などもしてくれる良い店です。
ここでは「海老入り麺」940円(税込)をオーダーしました。
程なくしてサーブされた「海老入り麺」は、透き通ったスープにデーンと乗った海老と野菜のあんかけ炒めが絶品。鶏ガラと野菜の出汁が効いていて、高級店をも凌駕する味わい。もちろん自慢の細めストレートの自家製麺との相性も抜群で、次々にすすりたくなる病みつき感も。
さすがは「中華街通」御用達の店。金物屋さんのおじさんもお勧めする理由がよくわかりました。
満来亭
住所:神奈川県横浜市中区山下町126
営業時間:11:30〜14:30(L.O.14:00)/17:00〜21:00(L.O.20:30)、 11:30〜 21:00(L.O.20:30)
休:木
■たばこ屋さん絶賛の「大家さんの店」の「豚肉と搾菜ピリ辛炒め定食」でご飯止まらず…
さらに後日、改めて横浜中華街へ行きました。
横浜中華街に行くたびに立ち寄るたばこ屋さんがあります。関帝廟通り沿いにある店で、さまざまな喫煙具と合わせて、たばこの種類を豊富にラインナップ。それだけでも喫煙者にとってとても有難い店ですが、これに加えてお店の人が超親切。たばこにまつわる質問なども親切に答えてくれる店です。
このたばこ屋さんで今日は、たばこの話ではなく、「オススメの店」を聞いてみることにしました。すると、あの金物屋のおじさんと同じような対応で「オススメの店? うーん……」としばし考えてくれている様子。「どこも美味しいとは思うんだけどねぇ」とも言います。
そして、数秒後にたばこ屋の人が「あ!」と閃いたかのように言い、「『京華楼』さん良いですよ」と言います。
「この辺の店ですか?」と尋ねると、「というよりこの建物ですよ」と言います。つまり、たばこ屋さんの建物にある中華レストランで「うちの大家さんなんですよ」とも。しかし、その味は評判で、これまでに何度もテレビ取材を受けた経験もあるとか。たばこ屋さんのすぐ脇の入り口から『京華楼』に入店しました。
平日のランチの時間帯。週替わりで、様々なメニューを提供しているようですが、その価格990円(税込)。高級店の味わいをこの価格で味わえるのなら十分お値打ちと言って良いでしょう。筆者はここで「豚肉とザーサイのピリ辛炒め定食」をオーダーすることにしました。
実は「豚肉とザーサイのピリ辛炒め定食」、『京華楼』の人気メニューのようで、地元の常連とおぼしき周辺のお客さんの大半がオーダーしていました。程なくしてサーブされた定食は、クラシカルな雰囲気を持つ格式高いビジュアルの定食です。これはシビれる!
さっそくいただくと、千切りにされた豚肉、ザーサイ、野菜類の細部まで味が圴一で、そして火加減も絶妙。野菜のシャキシャキした感じも残っており、なるほどかなりハイレベルの炒めものだと思いました。そして、このピリ辛加減がまた妙に後をひき、ついご飯をお代わりしてしまうほどでした。
たばこ屋さんの「大家さんの店」、『京華楼』もまた地元に根付いた名店だと思いました。
京華楼 本館
住所:横浜市中区山下町138
営業時間: 11:30~21:30 11:00~21:30
休:なし
■地元の人推薦の店はいずれも絶品揃いだった!
地元で働く人たちに聞いた「オススメの店」を3つ巡りましたが、いずれも確かに絶品揃いでした。『麺王翔記』のコスパと本格的な味わいに脱帽でしたし、『満来亭』の高級店を凌駕する味わいにも驚愕でした。そして、『京華楼』の細やかな調理とクセになる味わいもまた「横浜中華街でしか食べられない」もので、これもまた絶品でした。
横浜中華街で「どの店に入ろうか」と迷うことがありましたら、今回の3軒ならどこも間違いなしです。そして、それでも「やっぱり違う店も気になるんだよなぁ」と迷うようでしたら、ぜひ今回の取材のように、「地元の人」にオススメの店を聞き出して行ってみるのも楽しいかも。ぜひあなたならではの横浜中華街の食べ歩きを楽しんでください!
<取材・文/松田義人(deco)>
松田義人|編集プロダクション・deco代表。趣味は旅行、酒、料理(調理・食べる)、キャンプ、温泉、クルマ・バイクなど。クルマ・バイクはちょっと足りないような小型のものが好き。台湾に詳しく『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)をはじめ著書多数
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/604390/
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