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フォルゴーレのスモークリング迷彩をデカールで再現!【達人のプラモ術<マッキ MC.202フォルゴーレ>】

【達人のプラモ術】
イタレリ
「1/32 イタリア空軍 マッキ MC.202フォルゴーレ」
05/06

さてMC.202フォルゴーレの完成も見えてきた第5回になります。今回は、イタリア機の特有の迷彩を仕上げます。このキットは、イタリア機に多くみられる特徴的なスモークリング迷彩をデカールで再現できることで話題を集めました。砂漠迷彩ともいえる明るいライトヘーゼルナッツ4塗装の上からリング状のダークグリーンの迷彩が入るのですが、リング状の不定形迷彩は位置と形が決まっているので、エアブラシ塗装で再現するにしても、それなりに高いスキルが要求されます。

故に、この塗装はある意味上級者向けの感もあるのですが、それがデカールで誰でも再現できちゃう! いやイタレリの英断に拍手を送りたいですね。

が、しかしですよ。100枚近くあるスモークリングの迷彩デカールを見て「これ本当に貼れるんだろうか…」と不安になるも事実。平らなプラ板に貼るならともかく、複雑な形状の胴体や翼に貼っていくワケですから、不安にもなります。しかし悩んでいたらカッコ良いフォルゴーレが完成しないので、デカール貼り頑張りましょう!(全6回の5回目/1回目2回目3回目4回目

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
モデルアート公式チャンネル」
などでもレビューを配信中。

 

■デカール貼る段取りを考える

先にも書きましたが、機体上面全体に施されたスモークリング迷彩のデカールは100枚近くあります。これを何も考えずに適当に貼っていくのはNGです。まずはどこから貼りはじめて、どういう順番でデカールを貼っていくかを脳内でシミュレートしましょう。

今回は胴体左側→左主翼→1日乾燥→右胴体→右主翼といった順番で貼っています。

左側と右側で1日間空けているのは、一度に貼ろうとすると、機体の持つところがなくなるため。うっかり触って乾いていないデカールが剥がれる、破れるといったトラブルを防ぐためです。左側を貼り1日乾燥させることで、右側にデカール貼る際にも安心して、機体の左側を持てるということです。

▲機体の塗装を終えて胴体白帯を塗装、スモークリング迷彩のデカールを貼る前に、リアルタッチマーカを使ってパネルラインへのスミ入れを済ませておく

▲デカールを貼る際に機体のどこを持てばよいか、どこから貼っていくのが効率的か、」といった点を考慮しつつ、90枚以上あるスモークリングデカールを貼る順番を考える

▲まずはデカール特性を知るため、位置決めしやすい垂直尾翼からスタート。3~4枚を一組にして貼ってみることに

▲デカールを貼った垂直尾翼左側。ここですでに7枚のデカールを貼っている(作業時間約1時間)。色や貼った後の質感は悪くないのだが、デカールを台紙から持ち上げると、いとも簡単に丸まってしまうのには参った

 

■デカール貼りの便利ツールにも注目

デカール(水転写シート)は水に漬けることで水溶性の糊が溶けて、台紙からデカールフィルムが浮きます。水を入れる容器は特に決まりはないのですが、最近は良いサポートツールが出ています。

ありがちなトラブルが「水から引き上げたデカールをついうっかり放置してしまい、台紙上で乾いて剥がれなくなり泣く」というヤツです。

そこでデカールの乾燥を防ぐために ウエーブの「デカールトレイ」や模型向上委員会から発売されている「デカーリングQuickトレイ」を使うことで、トラブルが防げます。

Wave(ウエーブ)
「デカールトレイ」(638円)

二重構造式のトレイにより、複数枚のデカールを同時に水から引き上げられ、トレイ上に置いておくとこで乾燥も防げる。小サイズのデカールを貼る際に役立つヘラも付属する。

 

プラモ向上委員会
「デカーリングQuickトレイ」(1760円)

複数枚のデカールを一度に扱うことに特化。水を含んだPVAスポンジ上にデカールを置いておけるので、デカールが水の中に流れ出したりせず、台紙が乾燥してしまうこともない。小サイズのコーションデカールなどを貼る作業にも便利。また使用後の台紙を収納できのもありがたい。デカール用ABS製ピンセットデカーエウを切り出しに便利な曲線ハサミも付属。

 

■これは想定外!デカールの扱いが超シビア!

ということで準備万端、さっそくデカールを貼っていきましょう。

キット付属のデカールはイタリアのデカール専門メーカー、カルトグラフ社製。過去の経験から言わせてもらえば、カルトグラフのデカールは高品質なので、問題なくサクサク作業を進められるはず…。

いや、それは甘い考えでした。

デカールはフィルムも薄く、機体塗装の上に貼ることでちゃんとダークグリーンに発色します。その点は文句ないのですが、台紙上からちょっとでもデカ―ルフィルムを持ち上げると、いとも簡単に糊の面側に丸まってしまうことが発覚。扱いに細心の注意が要求されるデカールでした。

丸まってしまったデカールは、ピンセットで無理にほぐそうとすると破けてしまうため、一旦水に漬けて水中で慎重にほぐして、台紙上に移してリセットしなくてはいけません。そうなると糊の成分も失われてしまうのでデカールのりやマークセッターなどを使う必要が生じるなど、リカバリーにかなりの手間を要します。

▲垂直尾翼に続いて胴体左が後部からスモークリングパターンを貼り込んでいく

 

■一枚ずつ台紙からスライドさせて貼っていく

というワケでスモークリングのデカールは台紙上から剥がして貼るのはNG。台紙ごと貼る位置にもっていき、デカールフィルムを機体上にスライドさせて貼っていきます。位置修正はたっぷりの水を含ませて慎重におこないます。

機体上のスモークリングの位置は決まっているので、今回はデカール3枚をワンセットにしてスモークリングの位置がずれないよう、皴が入らぬように位置調整しながら貼っています。これがなかなかに手間のかかる作業でした。

当初でデカールを貼り込む作業は乾燥を含めて2日で終わらせる予定だったのですが、予定を大幅に超えた4日もかかってしました。しかしプラモ製作、そしてデカール貼りに焦りは禁物、焦らず騒がず平常心で作業進めます。

▲デカールが丸まってしまうのを防ぐため、台紙ごと貼る位置まで持っていき、慎重に台紙を引き抜いて、水で濡らした綿棒を使い貼る位置に密着させる

▲インストの指示に沿って位置を決めて、左主翼付け根のデカールを貼り終えた状態

▲位置修正の際はデカール表面にたっぷりと水を含ませておこなうこと。位置が決まったら濡らした綿棒で内側から外に空気を押し出して密着させる

▲インストを参照しながらブロック単位でデカールを3~4枚ずつ貼っていくと位置決めがしやすい

▲機体左側を貼り終えた状態。この状態で1日乾燥させることで、機体右側にデカールを貼る際に、機体左を持つことができるようになり、先に貼った左側のデカールが剥がれる、位置がずれるといったトラブルを防げる

▲1日乾燥させたのち、機体右側もスモークリングパターンのデカールを貼っていく

 ▲画像ではデカールのファイムが光って不自然な感じだが、乾燥後にクリアーでオーバーコート。塗装のデカールのツヤを統一することで、自然な仕上がりとなる

▲今回チョイスした『第154群第396飛行隊1943年夏ガドゥラ』の機体はスピンナー(プロペラの根元にある覆い)にも迷彩パターンが入っている

▲機体と機首のエンジンパネル、胴体下面のラジエターなど迷彩デカールを貼り終えた状態

 

■丸まってしまったデカールのリカバリー

先にも書きましたが、デカールが丸まってしまった、あるいはフチが折れ曲がってしまった場合、ピンセットでひき剥がそうとすると、高確率で破けてしまいます。国内メーカーの発売中のプラモデルであれば、最悪アフターサービスでスペアデカールを取り寄せ(有償)てリカバリーという手もありますが、輸入キットの場合、ほとんどは対応していません。イタレリに直接注文という手もなくはないですが、可能なのかは不明ですし、時間かかるのであまり現実的とは言えません。

そんなワケで今回は丸まったデカールをリカバリーします。

丸まってしまったデカールを、水を貼った容器に漬け込んでおきます。しばらく(約1~3分)すると水中でデカールがほぐれて、元の状態に戻ります。5分以上たってもほぐれない場合、ピンセットで慎重にデカールを広げます。

大抵の場合これで解決できますが、おぉ!ラッキー!と慌てて水からデカールを引き上げると、再びクルリと丸まって振り出しに戻ってしまうので気を付けましょう。

ここは慌てず使用済みのデカールの台紙を水に入れ、その台紙の上に広がったデカールを慎重に乗せて水から台紙ごと引きあげます。この時点デカールの糊成分は水に溶け出してしまっているので、再貼り込みの際にデカール糊やマークセッターで糊成分を補完します。

▲丸まって折れ曲がってしまったデカールは水(ぬるま湯だとなお効果的)に1~3分程度漬けておくことで広がって元に戻る

▲広がったデカールをそのまま引き上げるのはNG。再度丸まってしまうのを防ぐため、必ず水の中で使用済みの台紙の上に引き上げる

 

■国籍マーク等を貼ってデカール貼りを完結させる

丸3日かけてスモークリング迷彩を苦労して貼り込んだのち、1日乾燥させ、国籍マークや部隊マーク、コーションマーク等のデカールを迷彩パターンの上から貼っていきます。

こちらはフィルムが違うのか、扱いやすく色透けもなくサクサク貼れます。

機体のマーキングが全て入ると、いやカッコいいですフォルゴーレ。ドイツ機とも英国機ともまたひと味違う個性的なマーキングがいい味出してます。

▲機体のスモークリング迷彩の上から部隊マーク、国籍マークやコーションマーク(注意書き)のデカールを貼っていく

▲主翼上下面に入るイタリア空軍の国籍マーク

▲エンジンカバー類を仮止めして、デカールを貼った状態

 

■デカール乾燥の合間に…

デカールを乾燥させている合間に、脚や排気管といったパーツの製作を進めておきます。

1/32スケールでエンジンも搭載されているキットなので、エンジンの排気管は12気筒それぞれに分割再現されているのですが、パーツをみたら表面に目立つヒケがガッツリ入っているので、ここはパテで修正します。

▲12本ある排気管全てにヒケが生じているので、パテでの修正が必要

▲排気管のシュラウドはエッチングパーツで再現されている

 

■デカール完全乾燥に時間を取る

苦労したデカール貼りも何とか完了。ようやく完成が見えてきたマッキMC.202フォルゴーレ。先を急ぎたいところではあるのですが、ここでも焦りは禁物です。

作業行程としては、デカールの上からクリアーのオーバーコート塗装、セミグロスクリアーによる機体のツヤの調整(今回は半光沢仕上げとする予定)、細部パーツ取り付けとなるのですが、オーバーコ―ト塗装でのトラブルを避けるためにデカールの乾燥時間(最低でも3日)をしっかりと取ることにしました。

▲デカールの印刷面は、どうやらクリアー層で保護されていないようで、たまたまラッカー薄め液の雫が付着した際に、簡単にインクが溶けて流れてしまった。機体全体へのラッカー系クリアーを使ってのオーバーコート塗装もデカールを溶かす可能性があるやもしれないので、乾燥後にパッチテストをおこなう必要がありそうだ

 

■次回、マッキMC.202フォルゴーレ完成!

いやしかし、まだキャノピーは手つかずだし、スモークリング迷彩の細かい修正もしなくちゃいけません、あっ、アンテナ線も貼らなきゃいけません…。やることは山積みです。でもプラモはオデコにバッテン出して作るモンではなく、楽しんで作ってナンボですよね。なので頑張ります。

次回完成!…できるんだろうかと不安を残しつつ、MC.202フォルゴーレの製作、乞うご期待です!

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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