SUVが世界的に定番化する中で、多くの人から注目されるようになったのがコンパクトSUV。
スズキは世界戦略モデルで、インド、中南米、中近東、アフリカで販売するフロンクスを今秋に日本導入。現在、スズキの公式HPでティザーサイトが公開されています。
今回、そんなフロンクスのプロトタイプに試乗。使い勝手や乗り味についてリポートします。
コンパクトSUVは、たくさんの荷物を積んで出かけられるのはもちろん、街なかでの取り回しの良さも優れていることから多くの人に選ばれています。
SUVのクラス分けには明確な定義はありませんが、概ね以下のサイズで分けられます。
・コンパクトSUV:全長が4300mm以内
・ミドルコンパクトSUV:全長が4500mm以内
・ミドルSUV:全長が4800mm以内
・ラージSUV:全長が4800mm以上
下の表は2024年1〜6月の登録車新車販売台数ベスト10です。上位はコンパクトSUVになり、またノートとフリードにもSUVテイストを盛り込んだグレードが設定されています。このことからもコンパクトSUVの人気がわかるでしょう。
順位 | ブランド通称名 | ブランド名 | 2024年上半期 |
1 | カローラ(※) | トヨタ | 85,201 |
2 | ヤリス(※) | トヨタ | 81,715 |
3 | シエンタ | トヨタ | 55,649 |
4 | ノート(※) | 日産 | 52,857 |
5 | ヴェゼル | ホンダ | 44,164 |
6 | セレナ | 日産 | 40,169 |
7 | フリード | ホンダ | 38,429 |
8 | アルファード | トヨタ | 37,385 |
9 | プリウス | トヨタ | 36,790 |
10 | ハリアー | トヨタ | 35,294 |
※はSUVを含むシリーズ累計台数
そんな激戦区にスズキが新たに送り込むのが、世界戦略車であるクーペタイプのクロスオーバーSUV「フロンクス」です。
■シャープな顔つきが印象的な都市型コンパクトSUV
試乗したのはプロトタイプだったのでまだ正式なスペックは発表されていませんが、インドのMARUTI SUZUKIのWEBサイトを見ると、全長3995×全幅1765×全高1550mm、ホイールベースは2520mmとなっています。日本仕様のサイズはここから多少変わる可能性があるものの、かなりコンパクトなSUVであることがわかります。
スズキといえば軽クロカンのジムニー、軽クロスオーバーのハスラー、登録車のクロスオーバーであるクロスビー、ジムニーの登録車版であるジムニーシエラと、さまざまなSUVを日本市場に導入しています。それらの特徴はどれもヘッドライトが丸型であること。現在のスズキのSUVは、丸目でユルいイメージを打ち出しています。
一方、フロンクスは細く切れ長のライトが印象的。現在のスズキのSUVラインナップとは異なる方向性を打ち出した、シャープなスタイルのSUVです。フロントフェイスですが、ヘッドライトに見える上部の細長い3連ライトはデイタイムライトで、ヘッドライトはバンパー内にある3つのライトになります。
構成は下2つがロービーム、上のライトがハイビームです。
リアコンビランプも印象的で、ブラックアウトした中にデイタイムライトとデザインの共通性をもたせた3連の赤いランプが光ります。そして左右のテールランプをつなぐ一文字のテールランプを採用。現在流行しているこのデザイン処理は、日本に導入されるスズキ車では初採用になります。
サイドシルエットは全高が低めに設定されていて、ルーフがリアに向かってなだらかに傾斜していくクーペスタイルを採用。スズキのSUVシリーズの中ではもっとも都市型のイメージを打ち出したモデルと言えるでしょう。
インテリアはシャープなイメージを出しながらも大人っぽい雰囲気に仕上げられています。シートは革とファブリックのコンビネーションで高級感を持たせています。ブラックとボルドーのインテリアカラーは日本専用の仕様です。
シートに座って感心したのは、コンパクトなSUVでありながら、座ったときの窮屈さを感じさせないことです。筆者は身長が188cmもあるため全高が低めのSUVだと頭上やシートの肩周りに圧迫感があったりするのですが、それを感じさせないパッケージングになっています。このあたりはスペースユーティリティをとことん研究している軽自動車メーカーのなせる技です。同じコンパクトSUVであるトヨタ ライズ(開発・製造はダイハツが担当)に乗ったときにも感じた驚きをあらためて感じました。
■リアシートの乗り心地が抜群!小さくても4人でドライブしたくなる
今回、短い時間ではありましたが、フロンクスのプロトタイプを運転する機会に恵まれました。停止状態から軽くアクセルを踏んだだけでフロンクスは気持ちよく加速。
試乗コースはアップダウンがかなりありましたが、急な登り坂も加速に不満を感じる場面はほとんどありませんでした。1.5Lエンジンならではの余裕があることに加え、6ATのセッティングの良さを感じます。
驚いたのは後席の居心地の良さ。まずコンパクトSUVということで「車検証上は5人乗りだけれど、リアシートは荷物置き場になるだろう」と感じていたのですが、座ってみると足元がとても広く、身長188cmの筆者でも首を曲げて座るのではなく、自然な姿勢で移動することができます。座面も硬すぎたり柔らかすぎたりすることがなく、自然におしりが沈み、楽な姿勢で過ごせます。これならコンパクトでも大人4人でロングドライブを楽しめそうだ。そう感じました。
走行中、クルマの中にはさまざまなノイズが入ってきます。ステアリングを握っていると聞こえてくる音もインフォメーションのひとつになりますが、同乗者にとってはただうるさいだけ。
急な登り坂でアクセルを踏み込んだ時、前席ではそれなりにエンジン音を感じましたが、リアシートに座っているときはほとんど気になりませんでした。SUVをはじめ、キャビンと荷室の間に仕切りがないクルマはリアのタイヤハウスなどからのノイズも気になるのですが、フロンクスはそれも耳障りという感じがしない。後席のNVH性能の高さはかなりのものです。
フロンクスに搭載されるエンジンは1.5L NA。ここにマイルドハイブリッドが組み合わされます。スズキの現行車で1.5Lエンジンを搭載するのはジムニーシエラがあります。シエラのトランスミッションは4ATと5MTが用意され、どちらもセッティングはオフロードを意識したものになります。一方、フロンクスのトランスミッションは6ATを搭載。駆動方式はFFと4WDが用意され、セッティングはもちろんオンロード志向になります。
タイトコーナーが続くコースでもロールは少なめ。さらにステアリングをセンターに戻したときも自然に揺れが収束してくれます。ロールの収まりがいいとリアシートに座る人も安心感がありますし、ドライバーも余裕を持って運転できます。免許を取って日が浅い人や街なか中心でクルマを使っている人も、自信を持ってロングドライブを楽しめるだろうと感じました。
もちろんコンパクトなSUVで全高も低いから、街乗り中心の使い方をする人が多く選ぶモデルになるはずです。でもたまには家族や仲間と遠くまで遊びにも行きたい。そんな要望にもしっかり応えてくれそうです。クローズドのコースでごく短時間の試乗でしたが、フロンクスは小さいのに懐の深さを感じさせるモデルでした。
<取材・文/高橋満(ブリッジマン)>
【関連記事】
◆SUVから軽バンまで多様なラインナップで普及が進む注目EVモデル【GP2024上半期AWARD】
◆SUV人気が続いた2022年、新型プリウスが登場する2023年【クルマゆく年くる年】
◆ロールス・ロイスが手掛ける最高級SUV「カリナン」シリーズⅡは魔法のじゅうたんのような乗り心地!
- Original:https://www.goodspress.jp/reports/616880/
- Source:&GP
- Author:&GP