Techableでは先日、失業者向け音声アシスタントEarlybirdについての記事を配信した。また、公営住宅のカビ問題解消に取り組むSwitcheeに関する記事も読者の皆様にお届けしている。これらはいずれも、労働者の生活水準の向上に貢献するスタートアップ及びサービスだ。
ロンドン市長のサディク・カーン氏は、自身がパキスタン移民2世という経歴を持っている。カーン氏の企画したピッチコンテストも行われ、そうした影響もあってかロンドンでは「労働者に寄り添ったテクノロジー」を開発する機運が高まっている。
移民・難民の失業者にITスキル習得の機会を提供
この記事で解説するNiyaは、移民・難民の失業者と人材募集中の企業を結び付けるプラットフォームを運営するロンドン拠点のスタートアップだ。
ただし、その「仕事」とは単発的な単純労働ではない。失業者にトレーニングの機会を提供したうえで、彼らがIT人材として就業するための支援をおこなう仕組みのプラットフォームである。一口に「ITスキル」といっても職種は多岐に及ぶが、なんにせよ一度スキルを身につければその後の職に困る可能性は大幅に減るだろう。だが、移民・難民を含めた失業者がITスキルを習得できる機会は多くはない。
Niyaはそうした失業者に向けて、1000講座以上のオンライントレーニングを無料で提供している。さらに、就業に向けたコミュニケーションプラットフォームやメンターと相談できる機能も備わっている。ちなみに、Niyaはこのメンター職の募集も行っている。その後、Niyaのプラットフォームで求人側とのマッチングを実施。これにはAIが用いられ、スキルやパーソナリティーに応じた求人の紹介が行われる。
Niyaのオンライン職業トレーニングを受けたRafka Abou Salemさんによると、プラットフォームを通じて機械学習の技能を習得し、今ではコンサルタントとして働いているという。
パートナー企業にはIBMやMicrosoftなども
2021年設立のNiyaは今年6月、プレシードラウンドで150万ポンドの資金調達を行った。NiyaはLinkedInの投稿で調達を報告し、プレスリリース全文はニュースメディアSiftedで確認してほしいと記載している。
Siftedの記事によると、現在Niyaと提携する「パートナー」は大企業・中小企業を含め200以上。求職者向けにトレーニングコースを提供するパートナー企業の中にはIBMやSalesforce、Cisco、SAP、Microsoft、BarclaysといったIT大手の名もある。
一方、Niyaのクライアントは人材プールにアクセスしたい採用企業側だ。クライアントとなる企業は、Standard(2025年開始予定)、Premium、Bespokeという3種のプランから選んでサブスクリプション費用を支払う。 Niyaのプラットフォームは、ユーザー、クライアント企業、パートナー企業の3者が関係するシステムなのだ。総選挙での労働党勝利後も失業は重要な問題
また、同社は慈善団体を通してNiyaのプラットフォームを失業者に紹介する取り組みも行っている。IT人材を求める企業にとっては、Niya自体が人手不足を解消するための一手になるのだ。
上述の通り、ここで言う「失業者」とは移民も含まれる。6月に書かれた上記Siftedの記事は、移民の抑制を掲げる保守党が7月の総選挙で勝利した場合、スタートアップ業界で人材不足が深刻になる可能性を指摘していた。
だが、総選挙では保守党が歴史的な大敗を喫する結果に。議席を大幅に伸ばした労働党のスターマー党首が首相に就任した。それでもイギリスの失業者問題は喫緊の課題である。Niyaは今後、住宅の手配やビザ取得の支援、金融へのアクセスといった方向性のプラットフォームも開発していくという。
(文・澤田 真一)
- Original:https://techable.jp/archives/243388
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:澤田真一