頻発するERP導入プロジェクトの失敗は、金銭的に大きな損失をもたらすのみならず、時には事業継続性に致命的なインパクトをもたらすことすらある。さらにクラウド環境への移行がシステムの複雑化を加速するなかで、導入から運用までのERPライフサイクル全体をとおした、運用継続性保証の問題にあらためて焦点があたっている。
こうしたなか、AI駆動型のノーコードERPテスト自動化プラットフォームを提供するOpkeyは、8月22日、4,700万ドルの資金調達を発表した。同社は2015年設立。カリフォルニア州ダブリンに本社を構え、ピッツバーグやニューヨーク、さらにインド、オーストラリアにもオフィスをもつ。
200社以上の顧客を持つOpkeyは、この投資を得てAI活用をさらに強化することで、顧客やパートナーへのさらなるベネフィットの提供をめざす。同社によれば、顧客の72%は「フォーチュン 1000(FORTUNE 1000)」の企業だという。
クラウドERP Opsの複雑化した問題の解決
クラウドERPシステムの採用がこれまでにない速度ですすむなか、運用継続性の保障問題が急速に深刻化している。「SaaSの混乱」と呼ばれる問題とは、絶えず変更されつづけるクラウドアプリケーションの組み合わせが、コントロールしかねるほどの複雑さとリスクを生み出していることを意味している。
OpkeyのパートナーであるOracleによれば、ERP導入プロジェクトの70%がスケジュール遅延もしくは予算超過を招いており、そのために2/3のプロジェクトの投資収益率がマイナスになっている。
その主要な原因は、ERP導入が企業の広範な業務プロセスに影響を与えるため、大量の開発とテストが必要なことにある。クラウド環境の複雑化の問題とあわせて、この問題を従来型の手動テストアプローチでは満足に解決できない。ここでOpkeyのプラットフォームが輝きを放つ。
Opkeyの自動化テストプラットフォームは、14以上のERPや150以上のテクノロジー、ウェブ、モバイル、カスタムシステム、データベース、CRMシステムなどの全体を横断した自動化テストが可能なのだ。
企業全体を網羅したERPライフサイクル管理の実現
Opkeyのプラットフォームは、ERPに特化した生成AIの小規模言語モデルと独自の機械学習アルゴリズムを組み合わせた自動化テストを中核としている。AI駆動によるERPシステム全体にわたる高度な監視およびログ分析機能を組み合わせることで、Opkeyは包括的なERP Ops管理プラットフォームを提供する。これによって、ERPシステムの更新や変更がビジネス運営に支障をきたさないようにすることができるのだ。OpkeyのAI搭載コパイロット”Wilfred”は、技術者でなくてもノーコードで自動化テストケースを簡単に作成、実行、維持可能だ。
OpkeyのCEOで共同創業者のPankaj Goel氏は、このように述べる。
彼らはそれまでクライアントのERP移行、実装、テストを支援してきたなかで、既存の自動化ツールが十分ではないことに気付き、Opkeyの創業に至ったという。複雑なERPテストを自動化できるほど堅牢でありながら、誰でも使用できるようなシンプルなツールを作成することを目指す。さらに今後、この高需要に応えるだけでなく、AI駆動により企業がERP変革に取り組む方法の基準を再定義していく構えだ。私たちはクラウドERPシステムの複雑さとリスクを効率的に低減し、継続的なサービス品質の維持にむけて全力を尽くしています。私たちのビジョンは、ERP管理のための共通データ基盤を構築することで、すべての企業が持続可能なERP変革を実現できるようにすることです。
(文・五条むい)
- Original:https://techable.jp/archives/243592
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:m.soh