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チリのスタートアップが超小型衛星「Lemu Nge」打ち上げ|高解像度カメラ搭載で、地球全体の生物多様性を分析

生息地の消失、過剰な捕獲、気候変動、汚染、外来種の持ち込みなどさまざまな原因によって生物多様性が失われつつある近年。

生物多様性が損失すると生態系のバランスが崩れ、動植物が絶滅の危機に立たされるだけでなく、人間側が水や空気、海鮮類や農作物などの食料といった“自然の恵み”を得られなくなる可能性がある。

こうした背景のなか、今年8月にチリのスタートアップ企業Lemu社は、地球の生物多様性を観測するために設計した超小型衛星「Lemu Nge」を米国カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げたと発表。これにより、現在の20倍の解像度で地球全体の生物多様性を分析することが可能になる。

なおLemu Ngeの設計はLemu社が担当。リトアニアのNanoAvionics社が組み立て、南アフリカのSimera Sense社とオーストリアのEnpulsion社が主要コンポーネントを提供し、米国のSpaceX社が再利用可能なロケット「ファルコン9」を用いてLemu Ngeを軌道に打ち上げた。

高解像度カメラを搭載した超小型衛星「Lemu Nge」

Lemu Ngeは、マプドゥンガン語(チリやアルゼンチンの一部で話されている言語)で「森の目」を意味する。高解像度ハイパースペクトルカメラで、生態系の構成、傾向、経年変化を詳細に観察できることから、この名前が付けられたという。

同カメラは450~900ナノメートルの32のスペクトルバンドを測定し、人間の目には見えない細かい部分を見ることができる。地上での解像度は高度500km(Low Earth Orbit:LEO、地球低軌道)から最大4.75mだ。

またLemu Ngeは、無毒減圧材料(FEEP)を使用した先進的な液体金属イオン電気推進システムを搭載しており、軌道を調整し、ミッション終了時には安全に軌道を外れ、スペースデブリを残すことなく分解することが可能。90分ごとに地球を1周し、1日14回の軌道(太陽同期軌道またはSSO)を回る。

湿地帯の特性評価、海中大藻林の観察などを実施

チリと南半球全般の地理空間データのギャップが大きいため、Lemu Ngeの初期ミッションは打ち上げと初期運用段階(LEOP)の後にチリを中心に行われる予定だ。

初期観測分野にはアンデスの湿地帯の特性評価、チリ沿岸の海中大藻林のモニタリング、土地利用の変化の分類、主要植物種(特に樹木)の識別、外来種の特定などが含まれる。

収集したこれらの情報は効果的な保全活動の立案や、チリの自然機能を持続的に管理するのに役立つ。今後、Lemu社らはミッションを地球南部に拡大し、最終的には全世界に拡大する計画だ。

自然データプラットフォームやアプリを提供するLemu社

Image Credits:Lemu

Lemu社は、自然をオンライン化し、自然に関するデータのギャップを埋めて環境危機の抑制に貢献するという使命を継続的に推進しているチリ拠点の企業。

同社は衛星画像、ハイパースペクトルデータ分析、独自の環境指標、その他の先進技術を使用した自然データプラットフォーム「Lemu Atlas」を通じて、企業が自然への影響を理解し、改善できるよう支援している。

Image Credits:App Store

そのほか、環境保護プロジェクトと資金提供者を結びつけるアプリも提供。アプリでは、ユーザーが場所やカテゴリ(気候変動、生態系の修復、自然・野生動物の保護など)別にプロジェクトを検索することが可能。クレジットカードやデビットカードを使用してプロジェクトを支援できる。

今後もLemu社は、2033年までに地球の陸地表面1%を保護するための資金を提供することを目指す方針だ。

参考・引用元:
Lemu
GlobeNewswire

(文・Haruka Isobe)

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