【趣味カメラの世界 #5】
写真の底力を探るべく始まった連載「趣味カメラの世界」。前回に引き続き、「LUMIX S9(ルミックス S9)」をフォトグラファーの田中さんと深堀りしていきます。
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明確なコンセプトの元に、ファインダーレスなどの割り切った設計の、コンパクトで軽量なミラーレス一眼カメラ「ルミックス S9」(実勢価格:20万7900円前後/ボディのみ)。今回は本機を通して、“カメラの未来”についても考えてみたいと思います。
■スムーズなスマホ連携&直感的に使えるアプリ
スマホで撮影をして、その場ですぐに写真を共有…というスピード感が当たり前になった現代。カメラではどうしても“即時性”という点で、スマホに遅れを取っています。
各カメラメーカーが軒並みスマホアプリを用意してくれてはいますが、どこか中途半端なアプリが多い印象。そんな中、パナソニックの「LUMIX Lab」は写真の転送・加工、LUT(ラット)の管理など、使い勝手が良く、接続も安定しており、優秀なアプリでした。
スマホアプリでフィルターを適用するように、撮影した写真に(アプリ内での調整はjpegのみ)好みのLUTを適用すれば簡単に写真の雰囲気を変えられます。
さらに調整したい場合には、トーンカーブをはじめとするさまざまな項目をかなり細かく調整できます。なお、調整した値を書き出すことで、自分だけのLUTとしてアプリだけではなく、カメラ内でも使用可能です。
■「かんたんクリエイティブ」の名はダテじゃない!“リアルタイムLUT”で手軽に自分好みのスタイルに
カメラ背面のLUT(ラット)ボタンで、設定画面にアクセス。モニター上でLUT適用時の見た目を確認しながら設定できるので、撮影シーンに合わせて好みの雰囲気を確認しながらLUT選択が可能です。
ボタンひとつで変更できるので、撮影中も状況に応じて色々なLUTを試したくなります。
ちなみに、2つのLUTを重ね合わせることもできます。やり方は、カメラ内のLUTを2つ選んでそれぞれの濃度を調整して重ね合わせるだけ。設定の幅がかなり広く、それぞれのユーザーの好みを反映できます。
ただし、このLUT重ね合わせは、“MY PHOTO STYLE(マイフォトスタイル)”でのみ可能。LUTボタンで呼び出せるリアルタイムLUTの設定からは使用できず、ここはやや複雑な仕組みになっています。
とはいえ、LUTの重ね合わせ機能は可能性の広がりを感じたので、リアルタイムLUT設定画面上でも重ねられるようになると、もっと便利だと思いました。
カメラに最初から入っている中では「SampleLUT-3」というLUTがおもしろいなと思いました。
コントラストが高く、少しベタっとした感じになるので使い所を選びますが、見慣れた風景がどこか異国情緒ある雰囲気になります。
同じLUTでもハイキー気味に撮ると比較的スッキリとした感じに。LUTを変えるだけでなく、露出を変えることでも雰囲気作りができます。
LUTの重ね合わせの中では、この「Retrostyle709」と「Filmlike-V2」の組み合わせが気に入ったので多用しました。どちらもフィルムのようなレトロな質感のLUTです。
それぞれだと個人的には少し物足りなかったのですが、2つを掛け合わせた質感が自分の好みにドンズバ。
さきほどの写真と同じようなシチュエーションでLUTを変更して撮影。LUTを変更するだけでRAW現像などの必要がなく、手軽に良い感じの雰囲気に仕上げられます。
LUTによっては肌の色味が微妙になるものもありましたが、この組み合わせは人物でも良い感じです。
「ルミックス S9」はAFも優秀なため、歩きながら振り返った瞬間でもしっかりと顔にピントが来ています。
「Clear-S」というLUTは、水面やガラスなどを撮影すると透明感が際立つという説明だったので、安直にガラス越しに撮影してみました。
コントラストが高めで青みがかった色合いは、少し都会的でクールな印象を与えてくれます。
、Filmlike-V2
マニュアルフォーカスのパンケーキレンズで撮影。ピーキング機能を使えばピントは合わせやすいのですが、あえて適当にしたピント合わせとレトロな雰囲気の「Filmlike-V2」のLUTが絶妙にマッチします。
軽量なカメラボディとレンズを活かして、腕を目一杯伸ばして、ハイアングルから撮影しました。手軽にこういう撮影ができるのもコンパクトな「ルミックス S9」だからこそ。
26mmの焦点距離は、一般的なスマホのカメラの画角と似ています。スマホからのステップアップの場合、違和感なく使いこなせる画角だと思います。
とっさに撮影したのでピントが甘いですが、ゆるい描写とレトロな雰囲気のLUTがマッチして、フィルムカメラで撮影したような風合いに。
▼LUTだけじゃなく「フォトスタイル」も良い感じ
LUTとは違いますが、“フォトスタイル”の中でも特に気になった「LEICAモノクローム」での作例を紹介します。フォトスタイルのモノクロ表現は5種類と多く、その中でも最もコントラストが高く、硬調でダイナミックな印象のスタイルです。
高いコントラストと締まりのある黒。写真の本質が光と影だということを改めて意識します。粒状感をプラスしているので、古いフィルム作品のような味わいに。
階調性豊かなモノクロ表現は銀塩写真を想起させます。被写体に近づくことで、ドキュメント感が出るのも良いですね。
LUTはアプリ内でダウンロードし、カメラにセットして使います。カメラ内だけでも39個のLUTを保存でき、アプリを使ってのLUTの入れ替えも簡単なので色々と試してみたくなります。
重ね合わせや調整、フォトスタイルを変えてみたりと、できることが多いので時間がいくら合っても足りませんが、自分好みの表現を探る楽しみがあります。
■“コンパクト&手軽さ”をクリアした「ルミックス S9」は、まさにカメラの未来だ
スマホのカメラで撮影して、その場ですぐにSNSに共有という流れが当たり前になった現代。スマホのカメラの高画質化によって、カメラそのものの存在意義が薄れて久しいです。そんな中、今回試用してみて、「ルミックス S9」はある種“現代のカメラの在り方”というものを示しているように感じました。
その理由は大きく3つ。ひとつ目は、軽くコンパクトで、スマホから違和感なくステップアップできること。2つ目は、簡単かつ高速でスマホに写真を転送できるアプリがあること。3つ目は、リアルタイムLUTのような、PCでのRAW現像作業などを必要とせずに、撮ったその場でクリエイティブな個性を表現できること。それらを全て兼ね備えるのが「ルミックス S9」ということです。
スマホのカメラには出せない写真表現を手軽に体験できて、持ち運びたくなるサイズ感と軽さを持ち合わせていることが、これからのカメラ業界全体のキーワードになるのかもしれません。
>> 趣味カメラの世界
<取材・文/田中利幸 モデル/海生(IN/OUT MANAGEMENT) 取材協力/Panasonic>
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- Original:https://www.goodspress.jp/columns/624374/
- Source:&GP
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