去る9月中、世界的に大規模なユーザー層を持つ動画サイトやSNS各種で新機能発表が相次いだ。なかでもAI活用や動画生成(あるいはその両方)の機能が目立ったので、先月リリースされた新機能を振り返ってまとめた。
販売やパーソナライゼーションがAI活用で進化
TikTokが9月24日に発表したのは「Search Ads Campaign」。TikTok上での検索結果画面に広告を表示できる機能だ。TikTokはリリースで「検索」周りの環境の変化を指摘、半数以上の人が従来のブラウザよりも動画やソーシャルプラットフォームで商品を調べているとした。実際、TikTokユーザーの57%がアプリ内検索機能を利用し、23%がアプリを開いて30秒以内に検索を行うという。その検索結果画面に広告を表示することで、広告主は意欲の高いオーディエンスが「知りたい」と思った瞬間にリーチ可能となる。
また、同じく19日にAmazon Adsが新機能として生成AI技術を用いた広告動画ジェネレーターを発表。商品画像1枚からでも、Amazonが蓄積してきた知見を活かして商品の機能や訴求ポイントに特化した目を引く動画が数分で生成するという。
さらに、Amazonが所有するオーディオブックサービスAudibleでAIを活用したおすすめ機能をテスト中であることが9月末に複数のメディアによって報道されている。
同様に、音楽配信のSpotifyもプレミアムユーザー向けのAIプレイリスト機能について、対象市場を米国、カナダ、アイルランド、ニュージーランドなどに拡大したと9月24日に発表。同機能は4月にイギリスとオーストラリアでリリースされて以来、好評を博しているという。
クリエイターとファンの絆を強化、AIとブレストも
YouTubeは9月18日に複数の新機能を発表。チャンネルの成長と拡大に貢献したいファン心理に着想を得た「Hype」や「Gift」のほか、チャンネル登録者同士やファンとクリエイターが自由にチャット可能なスペース「Communities」などを展開するとした。
さらに、今年後半にはショート動画にGoogle DeepMindの動画生成モデル「Veo」を統合予定。これにより昨年導入された背景生成機能(日本未導入)が充実するほか、独立した6秒尺の動画を生成して撮影済みのコンテンツに追加できるようになるという。
これらの動画にはAI生成コンテンツを識別するツール「SynthID」を使って電子透かしが埋め込まれるため、AIによって生成されたものであることが視聴者に明示される。
AI活用機能としてはほかにも、YouTube Studioの「Inspiration」タブ刷新により生成AIを搭載した「ブレスト相手」が登場する。動画の企画やキャッチ―なタイトル、目を引くサムネイルなど、プロジェクトを成功に導くための案を相談することができるそうだ。言語の壁を解消する翻訳・吹き替え機能
YouTubeはさらに、かねてよりテスト中の自動吹き替え機能についても情報を更新。今後数か月で新たに数十万人にこの吹き替え機能を提供、スペイン語・ポルトガル語からフランス語やイタリア語へ変換など、対応言語を拡大するという。一部のクリエイターに対して試験的に導入している新機能では、本人の声のトーンやイントネーション、撮影環境などを吹き替え音声に反映できる。
言語の壁解消を目指すのはRedditも同様だ。今年初めに導入したAI駆動による自動翻訳機能を35か国以上に拡大する旨を、9月25日に発表している。ユーザーが自分の第一言語で書いた投稿やコメントが、自動的にコミュニティの主要言語に翻訳される。SnapchatとPinterestもユーザー同士の交流促進
Snapchatも9月17日に複数のAI活用新機能を発表。チャットボット「My AI」アップデートのほか、自分の見た目を将来の姿に変換するAI Lensなどが含まれている。いずれも、同プラットフォームでのコミュニケーションとクリエイティビティの促進を目指したものだ。
同様に、Pinterestも人気のコラージュツールにリミックス機能と共有機能を追加、9月24日に発表している。既存のコラージュ作品をリミックスしたり、別なSNSで動画形式のコラージュを簡単にダウンロード・共有したりできるようになった。クリエイター同士のコラボが促進され、新しいスタイルやアイデアの創出が期待されるという。6月にAIツール導入を発表していたPinterestだが、10月1日に広告主向けにAIおよびキャンペーン自動化機能を新たに追加したばかり。AIと自動化機能が、ターゲティング最適化や予算管理などを支援、ローワーファネルのパフォーマンス改善につなげるほか、キャンペーン企画時間を大幅に短縮し、必要なインプットを50%削減するとのことだ。
以上のような各社の動向からも、AIがテックサービスに深く組み込まれ、ユーザー体験を革新しつつあることは明白だ。言語の壁を越えたコミュニケーションやパーソナライズされたコンテンツ提供など、AI活用はユーザーである消費者のデジタルライフに多大な影響を与えている。
参考・引用元:
TikTok for Business
Amazon
Spotify
YouTube Blog
Reddit
Snapchat
Pinterest
(文・Techable編集部)
- Original:https://techable.jp/archives/246725
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:芥田かほる