【アウトドア銘品図鑑】
トレッキングやカヌー旅、自転車ツーリングなど、人力旅のための道具開発に余念がないパーゴワークス。人力旅の道具は“軽さ=正義”なんですが、パーゴワークスでは「実践的かつ実験的」を開発コンセプトに掲げていて、軽さ一辺倒ではない“癖”がいいアクセントとなってファンを魅了しています。
2022年に発売された同社初のクッカー「トレイルポット S1200P」(9350円)もそう。レトルトの湯煎にちょうどいい深さとインスタントラーメンやパックごはんがピッタリ入る大きさのアルミ鍋は、コンテナボックスとしても優秀で大いに話題となりました。
ただ、ソロにはちょっと大きい。もう少し小さければ…という声がちらほら。
今年登場した「トレイルポット S900」(7370円)は、そんなユーザーの声を拾い上げたひと回り小さなアルミクッカー。はたしてソロ旅はこれひとつで十分? 試してみました。
■広口の深鍋はやっぱりイイ
「トレイルポット S900」は「トレイルポット S1200P」の形を踏襲し、丸みのある長方形の深鍋です。
角の曲線はゆるやかで汚れが残りにくくなっています。それでいてレトルト食品(レトルトカレーは130×20×H165mm)を曲げずに立てて湯煎できる幅が便利。
もっとも「トレイルポット S900」はパックご飯が収まりませんでした。
ちなみに「トレイルポット S900」は、「トレイルポット S1200P」の中にすっぽり入ります。気持ちいい組み合わせ。
長方形の小型クッカーといえばメスティンを思い浮かべる人も多いでしょう。スタンダードなメスティンのサイズは17×9.5×6.2cm。「トレイルポット S900」よりも細長く、浅いデザインで容量750ml。
「トレイルポット S900」は名前の通り、容量900mlで150ml大きくなっています。この差が効く!
というのも湯沸かしや調理に使えるのは鍋の容量のおおよそ7分目まで。
メスティンなら約500ml、「トレイルポット S900」は約600mlが実用的な最大容量なんです。
たとえば王道のキャンプ飯、袋麺では500mlほどの湯を使います。「トレイルポット S900」であれば100ml分のゆとりがあり、その分、野菜や卵を盛れるというわけ。
鍋ひとつで完結するスープパスタに必要な水は300〜400mlで、「トレイルポット S900」はゴロゴロの具を受け止めてくれます。米とサバ缶で炊き込みごはんにするなんてときも、キノコやネギを足す余裕があります。
「トレイルポット S900」は鍋ひとつですが、一度でおかずいらずの主食を作れるので余計なモノは不要。
おかずをもう一品作りたい気分なら、「トレイルポット S1200P」のフライパンや手持ちのシェラカップを組み合わせればいいわけで、なんでもかんでもセットである必要はない。そう気づかされます。
■フッ素樹脂加工で食後の手入れが簡単
「トレイルポット」シリーズは1mm厚のアルミにフッ素樹脂加工を施していて、使用後にサッと汚れを落とせるようになっています。
米粒がこびりつかないし、汚れが残りがちな立ち上がり部分だってシリコンスプーンを使えばきれいになる! ただ、ハンドルを取り付けたリベット周辺だけは汚れが残るのでペーパー必携。
ふたはフッ素樹脂加工ではないのでお皿に。つまみが見えるように置いたので斜めになっていますが、つまみを畳めばへこみにきれいに収まり、フラットになります。安心を。
鍋のフチは外側に巻いていて、汁物を注いだ後に外側に垂れにくくなっています。コレ、重要。
■調理小物を入れてみた
「トレイルポット」シリーズはバックパックへの収まりが良く、ギアコンテナとしても優秀だとされています。
ソロ向きの「トレイルポット S900」ではどんなモノが入るでしょうか?
110サイズのOD缶と小型バーナーを入れても余裕あり。箸やスプーン類も収まります。CB缶のショートサイズも収まりますが、バーナー本体を入れる余裕はありませんでした。
残念ながら高さが合わなかったチタンカップですが、ふたを載せて手持ちのバンドで留めちゃえばふたと鍋本体との隙間はほぼなくなります。よほどの小物でなければ隙間から飛び出すことはなさそう。ここらへんはユーザーの考え方次第で、アリといえばアリ。
ちなみについ最近、「トレイルポット S900」にぴったりおさまる「トレイルカップ300」(5280円)、「トレイルポット S1200P」にフィットする「トレイルカップ500」(5830円)が発売されました。
丸形のチタンカップ、丸型と豆型の樹脂製カップの3点セットでチタンカップは火にかけてOK。
「トレイルカップ300」を入れてから小物を詰めれば鍋内側に施したフッ素樹脂加工のダメージも低減できそう。スマートです。
次は食品の収納。棒ラーメン(長さ約18cm)や2/3サイズのスパゲティ(約17cm)は微妙に入りきらない…。どうしたものかと思いましたが、フリーズドライ食品との相性が抜群。奥行きをそろえられるのが気持ちいい。
大体のサイズ感がわかったので、手持ちの調理道具を詰めてみました。
燃料缶と生鮮食品は別になりますが、これだけのものが入りました。フッ素樹脂加工が傷みにくいよう、金属製品をペーパーでくるんでぴったり収まります。
ミニメスティン用まな板が入るかもですが、付属の収納袋に余裕があるのでまな板と皿にできる葉書大の板をいっしょにイン。ピッタピタの収納袋ではない“遊び”があるとパッキングの夢が広がります。
* * *
「トレイルポット」シリーズは、何が入るか、どう入れるかを考えるだけでワクワクします。「トレイルポット S900」にはフライパンがないため心許なく感じるかもしれませんが、“先に作ったおかずをつまみ、〆のご飯を炊く”、“具だくさんスープを作って、最後に麺をいれる”など工夫次第で何品でも作れます。
出発前はスタッキング、旅の途中では調理計画に知恵をしぼる。そんな初心者からベテランまでずーっと楽しめる道具です。
>> パーゴワークス
<取材・文/大森弘恵 撮影協力/パーゴワークス>
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/632309/
- Source:&GP
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