【とりあえずユニクロで。のその先〈PART.3〉】
■そもそも、「オーバーサイズ」が定着したのはなぜだろう?
今や定番となった感のある「オーバーサイズ」コーデ。ビッグシルエットとも言うが、近年のそれは2012年頃、某メンズ誌が誌面を大幅リニューアルした際に、「シティボーイ」という概念とともに広めたものだ。質実剛健なチノパンツや、トラディショナルなボタンダウンシャツといった、“普通”のアイテムも、サイズアップすることで新鮮な着こなしができる。この事実を我々に教えてくれたのである。
また、このオーバーシルエットには、「肩幅が狭い」「胸板が薄い」「足が貧相」といった身体的な悩みをカバーする効果もあり、着るだけでファッション巧者に見せてくれる点が普及の要因となった。
しかし、あれから10年以上が経ち、シティボーイもすっかり“おじさん世代”に突入。あの頃は“あえて”のオーバーサイズだったはずが、加齢とともに変化した体型を隠す“マストアイテム”になってしまった人も少なくないだろう。
一方で、少しでも間違えるとだらしなく子どもっぽく見えてしまう恐れもある。要するに、大人がオーバーサイズを着こなすには、適切なバランスが非常に難しいのだ。では、大人が上手に取り入れるにはどうすれば良いのだろうか?
■“だらしない”と“オシャレ”の境界線を探るための5つのポイント
そこで、知りたいのは“だらしない”と“オシャレ”の境界線。スタイリストの井上さんもこう話す。
「やみくもにサイズアップすれば良いというワケではありません。最も重要なポイントは“やりすぎないこと”。これは、主役となるアイテムのサイズ選びやシルエットだけでなく、合わせる他アイテムとのバランス感も含まれます」(井上さん)
先述した、いわゆる“普通”のアイテムも、サイズアップすることで新鮮な着こなしができるというオーバーサイズのメリットを意識しつつ、“やりすぎないこと”という現代的なポイントも考慮したアイテム選びが大切だ。とはいえ、難しく考えなくて大丈夫。我々にはユニクロという強い味方がいる。
実際、ユニクロのラインアップには、最初からオーバーサイズでの着こなしを前提としたアイテムが多く揃い、根強い人気を博している。たとえばTシャツは、肩幅と身幅を広げ、着丈は短めのスクエアシルエットで、袖丈を長めに設計。これにより、体のラインをナチュラルに隠しつつ、バランス良く見せてくれるのだ。
となれば、取り入れない手はない。そこで、ここからはユニクロのアイテムのみを活用し、大人のためのオーバーサイズコーデを提案する。だらしなさとオシャレの境界線を見極めるための5つのポイントを挙げていくので、ぜひ参考にしてほしい。
■ポイント1:「アウターのサイズ選びに迷ったら、大きすぎない“ワンサイズUP”くらいで」
主役の「ダブルフェイスシャツジャケット」は、軽く柔らかで体のラインに馴染みやすい。サイズアップした際の肩の落ち具合も絶妙だ。オンブレチェック柄の落ち着いた雰囲気も、大人の装いに最適と言える。
「実は柄ものを選ぶのもコツです。特にオンブレチェック柄のように、体のラインをうまく隠せる柄を選ぶことで、オーバーサイズの難点である“着せられている感”も軽減できます」(井上さん)
色柄の視覚効果を活かしつつも、肩幅と身幅のバランスを意識することが肝要。肩幅は上腕二頭筋にかかるくらいがベストだ。身幅は大きすぎると着用時にシルエットが膨らむため、こちらもほどほどに。
■ポイント2:「パンツの裾は引きずりNG。長くともワンクッションまで」
パンツをオーバーサイズにした際に悩むのが、裾のあしらい。最近の若い世代はあえて長めにする傾向があるが、大人がズルズルと引きずるのは、少々見栄えが良くない。裾丈はワンクッションかノークッションを守るのが無難だ。
ウエストにワンタックが入ったワイドシルエットが特徴の「タックワイドパンツ」。ジャストで穿いても程よいオーバーサイズシルエットが楽しめる1本だ。短丈やジャスト丈のトップスとの相性の良さは、まさに特筆すべきポイントである。
「着用したパンツがほどよくワイドだったので、シルエットを崩さないようノークッションにしています。もちろん、パンツの素材や合わせるシューズ次第で変わるため、その辺は臨機応変に楽しんでください」(井上さん)
ウールなど素材が厚めの場合は、ワンクッションさせて足元にボリュームを持たせるのもアリだ。また、今回のコーデのようにトップスをコンパクトにすることでAラインシルエットが生まれ、スタイルアップ効果も見込める。ちなみに、ユニクロには「通常丈」と「丈長め」が用意されたモデルもあり、積極的に活用したい。
■ポイント3:「トップスはジャスト×パンツはワイドが好バランス」
次に、全体のシルエットについて考えてみよう。オーバーサイズを取り入れる際の最近のトレンドは、「トップスはジャスト×パンツはワイド」だ。ポイント2でも言及したAラインシルエットが簡単に作れるため、初心者にもうってつけ。
上品で柔らかな風合いの「スフレヤーンハーフジップセーター」はジャストサイズで着用し、定番の「ワイドフィットチノ」はオーバーサイズを選択。
上下のシルエットの違いが生み出す視覚効果により、小顔かつスタイル良く見せている。
「サイドから見ると上下のバランス感も顕著です。オーバーサイズながら非常に収まりが良いですよね。写真のようにパンツが裾に向かって細くなるテーパードシルエットだと、さらに効果的です」(井上さん)
裾丈はワンクッションに設定。パンツにボリュームがあるので、生地が裾に溜まってもだらしなく見える心配はない。アウターを羽織る際も、トップス同様にコンパクトなデザインのものをジャストサイズで着るのがおすすめだ。
■ポイント4:「凝ったデザインはなるべく避けて、シンプルに徹する」
オーバーサイズが上手に取り入れられない。その要因のひとつに“デザイン”がある。凝ったデザインのアイテムは難易度が高く、着こなす際にもセンスと技が求められる。シンプルで定番的なアイテムを選ぶことで、ハードルはグッと下がるのだ。
そこで、定番のナイロンブルゾン×ジーンズはいかがだろう。機能性に優れた「ウィンドプルーフスタンドブルゾン」と軽やかな「ワイドストレートジーンズ」。
色数を抑えることで、オーバーサイズでもすっきりとしたモダンな佇まいに。
「ただそれだけでは洒脱さが足りないので、インナーにジーンズと同色のタートルネックを合わせて品良く仕上げました。上下を同色でつなげることで、腰位置を誤魔化し、スタイル良く見せることもできます」(井上さん)
ポイントは色選び。真っ白だとアクティブ感が際立ってしまうが、今回はこなれた雰囲気のオフホワイトを採用。余計なロゴがなく、シンプルなデザインで使いやすく好印象だ。カラーに迷ったら中間色を選ぶと良いだろう。
■ポイント5:「クリーンさを意識して、キレイめアイテムをどこかに入れる」
オーバーサイズのトップスはカジュアルな印象になりがちで、言い換えれば子どもっぽく見えてしまう場合もある。そこで、大人っぽくキレイめなパンツを合わせてカジュアルさを中和してみよう。シンプルな方法だが、効果は絶大だ。
「ダブルフェイスシャツジャケット」と「スウェットオーバーサイズプルパーカ」を重ねて防寒性を高めるも、装い自体はカジュアルだ。ここに、「タックワイドパンツ/チドリ」を合わせるだけで、シックな雰囲気に向かう。
「気付きづらいですが、実は細かな千鳥格子柄です。ワンタック入りのワイドシルエットがリラックスした穿き心地を実現し、上品な柄使いがカジュアルなオーバーサイズコーデを大人っぽくクリーンに見せてくれます」(井上さん)
異なるテイスト同士を組み合わせることで、シンプルな着こなしもワンランク上のものに仕上がる。これはぜひ覚えて実践したいテクニックだ。千鳥格子柄のほか、無骨な雰囲気を持つヘリンボーン柄もあるため、どちらも確実に押さえておきたい。
* * *
さて、大人がオーバーサイズコーデを制するために必要な“だらしないとオシャレの境界線”を、5つのポイントとともに探ってみたが、参考になっただろうか。
本稿の冒頭でも述べたように、オーバーサイズは体型隠しにも便利で、今さらスタイルを変えるのは中々難しい話だ。しかし、逆に考えれば、大人ならではの着こなし方を身につけてしまえば差を付けられるということ。この5つのポイントを意識するだけで、コーデの完成度も確実にアップするはずだ。
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<取材・文/TOMMY スタイリング/井上裕介 写真/田中利幸 取材協力/UNIQLO>
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- Original:https://www.goodspress.jp/features/640803/
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- Author:&GP