Appleが9月に発売した「アクティブノイズキャンセリング搭載AirPods 4」(以下、AirPods 4(ANC))は、カナル型イヤホンを長時間装着するのが苦手な私にとって、普段使いに最適な一台。これまでに上位の「AirPods Pro」シリーズや、競合他社のワイヤレスイヤホンも多く購入してきて使ってきたものの、インイヤータイプのまま高性能なANCに対応した今回のAirPods 4はまさに待望の製品でした。
でも、旧世代モデル持ってるからなぁ…どうしようかな…と思いながら早3ヶ月が経過。年末年始に迎えて、そろそろ真剣に検討してみなくては、と改めてレビューしています。
ということで、本稿では、旧世代のAirPods 3や上位のAirPods Pro 2と比べつつ、その実力をあらためてじっくりチェックしてみたいと思います。
■外観と装着感
まずは外観と装着感について。AirPods 4(ANC)のデザインは、前モデルから結構変わっています。充電ケースに注目しただけでも、
(1)サイズがひとまわりコンパクトになり
(2)充電端子がUSB Type-Cへ刷新され
(3)捜索時に音を出せるスピーカーが備わり
(4)LEDインジケーターが光っていないときに見えなくなり
(5)背面のボタンが廃止され、タッチセンサーに変わった。
という5つの変化があります。
一方、上位モデルのAirPods Pro 2と比べた場合、ケースサイズは少々コンパクトに感じます。また、ケースにストラップホールが付いているのは「AirPods Pro 2」だけ。紛失や落下を予防する意味では、AirPods Pro 2の方が良いですね。
イヤホン本体については、AirPods 3と並べてみても、サイズ自体に変化は感じません。一方で、耳に装着する部分の形状が、若干シャープになっているような気がします。また、配置されたセンサーや充電端子の位置が結構違うので、両者を並べてみても、意外と視覚的に区別はつきます。
装着感に関しても、より多くの耳の形状に合いやすくなっているそうです。筆者の正直な体感としては、旧モデルもしっくり装着できていたので、新モデルの方が「ほんのちょっと安定するかな?」くらいの差でした。個人差が大きい部分だと思うので、もし旧モデルは装着できたけど、外れやすかったり、歩きながらのズレが気になったという方には、今回のモデルを試してみる価値はあるかもしれません。
ただし、もし耳の穴が小さくて従来のAirPods 3が入らなかったという人は、従来同様フィットしないでしょう。結局イヤーピースでサイズ調整できるAirPods Pro 2を選らんだ方が無難だと思います。
■音質をチェック
続いて、音質をチェックします。まず、AirPods 4(ANC)とAirPods 3を交互に付け替えながら、楽曲を聴いてみます。一応、旧モデルは、2021年から3年以上使い込んだものなので、経年劣化はあるかもしれまんせんが、こうした場合の買い替え需要も想定して、どのくらいの差が出るものなのかを確かめました。
結果としては、AirPods 4の圧勝。全体的にサウンドがリッチになっており、特に低音域の解像度が高まって、迫力あるサウンドが楽しめるようになった印象です。
例えば、クラシックのピアノ曲を再生してみると、AirPods 3では「アップライトピアノを弾いている人を、部屋の入り口から眺めているような音」だったのが、AirPods 4では「グランドピアノを弾いている人を、ピアノのすぐ近くで聴いているような音」に変わります。最近はクラシックをよく聴くので、この差は臨場感がかなり変わるなぁ、と食指が動きました。
続いて、上位モデルの「AirPods Pro 2」との比較。 先述のピアノ曲で比べてみると、意外に音質の差はあまり感じません。密閉されているかどうかの差があるので、外部の音の聞こえ方には差が出るでしょうが、静かなところでじっとピアノの音を聴き比べる分には、差はわからないレベルです。ただし、これはピアノ曲のような限定的なジャンルでのお話…。
楽曲によっては、サウンドはAirPods Pro 2の圧勝です。例えば、EDMを交えたポップスのような楽曲になってくると明確に音圧の差が出ます。設定音量が変わらない状態でも、AirPods Pro 2の方が全体の解像感が高い印象です。
もし、ボーカルの歌詞だけでなく、楽器やSEも楽しむような音楽リテラシーの高い方ならば、AirPods Pro 2を選んだ方が、視聴体験は確実に向上するでしょう。カナル型ゆえのイヤーチップが嫌でなければですが…。
逆に言うと、AirPods Pro 2だと解像感や音圧が高すぎて、日常のBGMとして楽曲を楽しむには、サウンドが細かく聞こえすぎてしまうのが弊害かもしれません。家事をしながらBGMとして解像度を少しさげながら楽曲を楽しみたかったりすると、意外とAirPods 4(ANC)のバランスの方が好きという人もいるかも。
■アクティブノイズキャンセリング(ANC)と外部音取り込み
AirPods 4(ANC)は、インイヤータイプのAirPodsとしては、初めてアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能を搭載しました。その使用感としては、低〜中音域のノイズをメインに環境音を低減してくれる印象です。
具体的には、室内で作業しているときには換気扇の駆動音などがほぼ気にならなくなくなりますし、水を出しながら皿洗いをしていたり、掃除機をかけていたり、ドライヤーで髪を乾かしていたりしても、しっかり音楽や音声コンテンツを楽しめます。カナル型ではない製品としては、ANCの精度はかなり良好でしょう。
一方で、高音域に近い音はあまり低減されずにそのまま聞こえるので、ANCをオンにしてもPCのキーボードをタイプするような音はそのまま聞こえます。例えるならば、親指の腹で机を軽くトントンッ叩く音はANCでカットされるので聞こえ方が変わるのですが、爪の先で机をカンカンっと叩く音はそのまま聞こえてしまうわけです。また低〜中音域も完全に消えるわけではないので、ANC越しでも、小さめの音で電子ピアノを弾いても、その音は結構聞こえました。
このあたりのANCの体験については、上位モデルのAirPods Pro 2の方が優秀。キーボードのタイピング音などが聞こえるのはこちらも共通ですが、AirPods 4(ANC)のそれよりも、より強力に環境音が低減されています。例えば、小さめの音で電子ピアノを弾くと、ほぼ聞こえないレベルまで低減されます。もし通勤・通学電車のなかで、ポッドキャストを楽しんだり、外国語のリスニングを行なったりしたい場合には、AirPods Pro 2があった方が、耳の負担も少なくなることでしょう。
そんな事情もあって、AirPods 4(ANC)について期待すべきは、ANCの精度ではありません。むしろ筆者が良いなと思ったのは、「外部音取り込み」機能の方でした。これはAirPods 4(ANC)が元々インイヤー型のイヤホンなので、外部音を取り込みやすいうえで、さらにマイクを使って自然に環境音を取り込めるから。
まさに「耳に何も付けてないのでは…」と錯覚するくらい自然に環境音を取り込みつつ、そのうえでBGMや音声コンテンツを楽しめるわけです。要するに、仕事場の同僚や家族との会話に気づかないような状況を作らずに、作業BGMを楽しめます。屋外に散歩に出かけるときには、BGMを楽しみながら、鳥のさえずりや風で葉のこすれる音、接近する車の走行音などに気付けるわけです。
なお、ANCと外部音取り込みモードを組み合わせて、周囲の雑音状況の変化に応じてANCのレベルを自動的にコントロールする「適応型」モードや、会話の開始を検知してANCを抑える「会話検知」機能などもあり、細々と手動コントロールをしなくて済むことも魅力でしょう。
* * *
イヤーチップが苦手で、日常使いに適したモデルを求めているなら、AirPods 4(ANC)が最適です。外部音取り込みを利用すれば、さらに軽やかな使いごこちが実現しますし、ANCをオンにすれば、皿洗いや掃除機などの家事をしながらでもBGMを楽しめます。
一方、楽曲の音質にこだわる方や、ANCの精度を求める方には、AirPods Pro 2がおすすめ。また、iOS 18で追加されたゲームアプリでは、AirPods Pro 2だと遅延が若干低減されます。筆者も実際に音ゲーをプレイしてみましたが、AirPods 4(ANC)よりも、AirPods Pro 2の方が若干高得点が出やすかった印象です(それでも遅延がないわけではないですが…)。
一般的にワイヤレスイヤホンの耐用年数は、バッテリーの寿命から約2〜3年と言われていますが、実際にはAirPodsシリーズを3年以上使っているけど全然大丈夫という方も多いはず。旧世代の製品をお使いの方は、まだ製品が使えるうちは買い替えの決断が悩ましいところではありますが、新製品での体験も意外と充実していますので、年末年始の自分へのご褒美など、何か理由を付けて買い替えを検討してみても良いかもしれませんね。
<取材・文/井上 晃>
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/647381/
- Source:&GP
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