2023年1月にインドで開催された「Auto Expo 2023」でベールを脱いたジムニー5ドア。すでにインドやヨーロッパでは発売されていて、「いったい日本ではいつ発売になるんだ!」とヤキモキしていた人も多いはず。
導入を熱望する声が多いことから、並行輸入するショップも登場。今年の東京オートサロンでは5ドアのカスタムカーも何台か出展されていました。
そんなジムニーの5ドア=ジムニー ノマドが、4月に発売されることが正式に発表されました。ボディが延長され5ドアになったことでどこが変わったのか。そしてジムニーシリーズとして変わらない部分はどこなのか。じっくり見ていきましょう。
■利便性が高められ日常で使うことを想定
2018年7月にフルモデルチェンジしたジムニーは軽自動車(JB64型)と、軽のボディをベースにオーバーフェンダーを装着してトレッド幅を広げ、1.5Lエンジンを搭載したジムニーシエラ(JB74型)が導入されました。実はこの時から「5ドアも出るのでは?」という噂がありました。
その事を開発者にぶつけると、「ジムニーの5ドア化を熱望する声はずっと以前、JB23はもちろん、1980年代からあった」と言います。ただしFRベースのジムニーはボンネットが長いため、軽自動車サイズだと物理的にリアドアを設置することができない(仮にドアを設置しても普通に乗り降りすることができない)。軽規格の枠から外れるシエラならボディサイズを拡大することはできなくはないが、新たに開発してもコストを回収できるだけの台数が売れることが見込めず、企画が通ることはなかったそうです。
しかし現行型が驚異的なヒットモデルになり、しかもプロユースや4WDマニアが乗るクルマというこれまでのジムニーと違い、広く一般の人に選ばれるようになったことから5ドア化が実現しました。そのため、現行型ジムニーの開発段階では5ドアの企画はまったくなく、フルモデルチェンジ後の状況を見て開発がスタートしたとのことでした。
ジムニー ノマドは普通車登録になるため、ジムニー シエラをベースに開発されています。そのため、全幅はシエラと同じ1645mm。ホイールベースは340mm延長され、2590mmに設定されました。全長はシエラが3550mmなのに対し、ノマドは3890mm。340mm拡大されたことになります。シエラとノマドとでは前後のボディ端とタイヤの位置関係が変わらず、ホイールベースの延長分がそのまま全長の拡大につながっていることがわかります。
だからアプローチアングル(36°)、デパーチャーアングル(47°)もシエラと同じ。最低地上高もシエラと同じ210mmになります。つまり、5ドア化されてもシエラのオフロード性能がしっかり継承されているのです。ただし、ホイールベースを延長した関係でランプブレークオーバーアングルは25°とシエラより3°小さくなっています。でもこれはトライアル競技を楽しんだりしない限り、大きな影響はないはずです。
ジムニーとシエラがプロユースを想定しているのに対し、利便性が高められたノマドは一般の人が日常で使うことを想定。それでも高いオフロード性能をキープしているのは、5ドアになってもジムニーシリーズとして、プロに選ばれるクルマであることを考えてのことでしょう。
■5ドアになってもジムニーらしさが随所に
搭載エンジンはシエラと同じ1.5L直4で、トランスミッションは4ATの他、5MTも用意されます。
ロングホイールベース化に伴いラダーフレームはセンターフレームを延長。この状態でジムニーが持つ圧倒的なオフロード性能を実現するために、センタークロスメンバーが追加されています。もちろんジムニーの伝統である3リンクリジットアクスル式サスペンションとパートタイム4WDも継承されています。
デザイン面で大きく異なるのはフロントグリル。ジムニーとシエラがブラック塗装の5スロットグリルなのに対し、ノマドはガンメタ塗装の5ドアスロットグリルになります。5スロットの中はクロームで縁取りされていて、立体感のあるデザインを採用。これはジムニーシリーズの最上級モデルとしての上級感・上質さを与えるためだと言います。
このデザインが秀逸で、遠くから見た際も普通のジムニーとは何か違う、という特別感を覚えました。発売後はシエラやジムニーにこのグリルを付ける人も増えそうです。アルミホイールもグリルとの共通性を持たせたガンメタリックになります。
5ドアになってもジムニーらしい無骨かわいい雰囲気は薄れていないのはさすが。パッと見は単にドアの数が増えただけに見えますが、5ドア化にともない、ルーフや前後のドアとリアクォーター部、そしてグリルが新設計されました。フロントドアから後部座席に乗り込む必要がなくなったこととリアドアのスペースを確保するために、フロントドアはシエラよりも短くなっています。
ボディカラーはノマド専用色として、シズリングレッドメタリック/ブラックルーフとセレスティアパールブルーメタリックを用意。さらにシエラでも人気があるジャングルグリーン、シフォンアイボリーメタリック/ブラックルーフ、アークティックホワイトパール、ブルーイッシュブラックパールの計6種類が用意されます。
インテリアのスイッチ類の配置はジムニー&シエラと変わりません。インパネ中央に配置されたフロントドアのパワーウインドウスイッチはグローブをしたままでも操作できるよう大型のものが付けられています。オートエアコンの操作スイッチも操作性に優れた大型のものを採用しています。
ジムニー&シエラと異なる部分は運転席からリアドアの窓を開閉するスイッチがパーキングブレーキレバーの右側に付いたこと。フロントドアとリアドアのスイッチが別の場所にあるため、運転席側のドアにすべてのスイッチが配置される一般的なクルマからの乗り換えだと最初は違和感を覚えそうですが、これはすぐに慣れるはずです。
ジムニー&シエラは人気モデルのため、ドリンクホルダーやスマホホルダーなどのアフターパーツがたくさん販売されています。ノマドのインテリア構成はジムニー&シエラと共通なので、それらを使うことが可能。発売後すぐに納車された人でも豊富なアフターパーツを選ぶことができるのがいいですね。
ジムニー&シエラは4人乗り。ノマドはシエラをベースにしているので、5ドアになっても4人乗りになります。3ドアモデルはリアのスペースは最低限しか取られていなかったため、大人が乗れなくはないですが、長距離移動はつらいものがありました。乗り降りも、最低地上高が高いのにフロントシートの背もたれを倒して座面を前にスライドさせることで現れるわずかなスペースから行うのでかなり大変。
ノマドのリアシートは広大とは言わないまでも、身長188cmの筆者が座って窮屈さを感じることはありませんでした。そしてリアシートの快適性を高めるために、シエラよりも厚みのあるシートが採用されています。リアスペースでシエラと異なるのがシートベルトの構造。シエラはバックルを脱着してシートベルトを収納し、リアシートを倒した際に荷室をすっきり使える設計になっています。
後席に人が乗る機会が多いノマドではシートベルトの収納機能が排除された一般的なシートベルトが採用されています。そして後席への乗降性を高めるためにリアシートの角がカットされ、ホイールハウスの開口部が直線化されています。
5ドア化された分、積載性もアップ。荷室の床面長がシエラより長くなり、荷室床にはカーペットが敷かれています。リアシートの背もたれを倒せば荷室スペースを拡大できます。ただ、シエラはリアシートを格納した際に荷室床面がフラットになりましたが、ノマドは厚みのあるシートを装着したことでフラットにはなりません。車中泊を楽しむ人だとここがフラットにならないのはきついかもしれませんが、きっとノマド用の車中泊用キットを製作するショップが出てくるはず。また、純正アクセサリーでリアシートを格納した際に荷室をフラットにできるラゲッジボックスが用意されます。
多くの人が熱望していたジムニー ノマド。発表と同時にディーラーに問い合わせが殺到しているのは間違いありません。インドで生産したものを日本に輸入するため、目標月間販売台数も1200台と少なめ。ジムニーとシエラが今なお納車待ちが続いているので、ノマドも長期の納車待ちになるのは確実です。シエラがピーク時に1年半以上待つことになったので、ノマドは果たしてどれくらいになるのか想像もつきません。
ノマドがほしいと思ったら、迷わずすぐにディーラーに足を運ぶことをおすすめします。実は筆者は現在JB64に乗っているのですが、決めました。私もノマドに乗り換えます!
【Specifications】
ジムニー ノマド
全長×全幅×全高:3890×1645×1725mm
ホイールベース:2590mm
エンジン:水冷4サイクル直列4気筒
駆動:パートタイム4WD
最高出力:75〈102PS〉
最大トルク:130〈13.3kgf・m〉
乗車定員:4名
燃費:14.9km/L(4WD・5MT)、13.6km/L(4WD・4AT)(WLTC)
価格:265万1000円〜(4WD・5MT)/275万〜(4WD・4AT)
<取材・文/高橋 満(ブリッジマン)>
高橋 満|求人誌、中古車雑誌の編集部を経て、1999年からフリーの編集者/ライターとして活動。自動車、音楽、アウトドアなどジャンルを問わず執筆。人物インタビューも得意としている。コンテンツ制作会社「ブリッジマン」の代表として、さまざまな企業のPRも担当。
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/656342/
- Source:&GP
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